【神話と物語】冬の夜空に「いない」あいつの話。オリオンを追いかける暗殺者、さそり座

さそり座

冬の空は、1等星も多く、華やかですね。そのなかでオリオン座は、冬の南の空で堂々と輝いています。なぜ堂々としていられるか、それは彼の唯一の天敵が、今の時期だけは絶対に姿を現さないからです。今日は、冬の空には決して現れない、夏の星座の王様「さそり座」のお話です。

目次

神が放った刺客

物語は、狩人オリオンが『俺に倒せない獲物はいない』と豪語したことから始まります。この言葉に怒った大地の女神ガイア(またはアポロン)が、一匹のサソリを放ちました。

巨人のオリオンに比べれば、あまりに小さな毒虫です。しかし、油断していたオリオンのかかとに、その毒針がチクリ。あの大男が、たった一撃で倒されてしまったのです。

『驕れる者は久しからず』。さそり座は、そんな教訓を背負った、静かなる処刑人なのかもしれません。

天文学的な「追いかけっこ」

この二人は星座になっても仲が悪く、天球上の正反対の位置に配置されました。オリオン(冬)が東から昇ってくると、さそり(夏)は西へ逃げるように沈んでいきます。逆に、さそりが東から顔を出すと、オリオンは慌てて西へ沈んで逃げていきます。

だから12月の今、さそり座は地平線の遥か下、地球の裏側にいます。オリオンが安心して夜空を独り占めできるのは、サソリが深い眠りについている冬の間だけなのです。

もう一つの赤:アンタレス

さそり座の心臓には、不気味に赤く光る一等星『アンタレス』があります。アンチ・アレス(火星の敵、または対抗するもの)。火星と同じくらい赤いため、そう名付けられました。

実は、オリオン座のベテルギウスも『赤色超巨星』。さそりのアンタレスも『赤色超巨星』。 二つの星座は、姿形だけでなく、その心臓(中心星)までもがライバルのように似ているのです。

まとめ

今の時期、オリオン座を見上げるときは、少し思い出してあげてください。『今頃、地球の裏側ではあのサソリが、出番を待って爪を研いでいるのかもしれない』と。次に彼らが交代するのは初夏。それまでは、束の間の平和な夜空を楽しみましょう。

Image Credit:
NASA, ESA, CSA, STScI, VISTA

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とコーヒーが好き。飯もちゃんと好き。

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