冬の夜、南の空を見上げると、誰もが一度は目にしたことのある形が浮かび上がります。砂時計のような輪郭と、まっすぐ並んだ3つの星。冬の星座の代表格、オリオン座です。
今夜は、このオリオン座にまつわる神話と、星座を形づくる星々の素顔について、一緒に見ていきましょう。

オリオン座を構成する星たち|ベテルギウス・リゲル・三ツ星
オリオン座は88ある星座の中でも特に有名な星座のひとつです。明るい一等星が多く、冬の夜空ではひと目で見つけられるため、古代から世界各地でさまざまな物語が語り継がれてきました。
オリオン座のシンボルは、左上の赤い一等星「ベテルギウス」と、右下の青白い一等星「リゲル」です。
ベテルギウス:いつ爆発するかわからない巨星
ベテルギウスは、太陽の数百倍以上の大きさを持つ「赤色超巨星」です。すでに星の一生の終盤に差しかかっており、将来的に超新星爆発を起こすと考えられています。ただし「将来的」がいつなのかは、現在の観測技術でも正確にはわかっていません。天文学でいう「将来的」は数万年以上先である可能性もあり、人類の生涯のうちに起こるとは限りません。

リゲル:オリオン座で最も明るい星
実はベテルギウスより明るいのは、対角線上にあるリゲルです。表面温度が高い青白い星で、太陽の数万倍ものエネルギーを放っています。地球からの距離は約860光年で、ベテルギウスよりもさらに遠い場所にあります。

三ツ星とその先に広がる星雲

中央に等間隔で並ぶ3つの星「三ツ星」も、オリオン座を特徴づける部分です。その下にもう少し小さな3つの星が縦に並んでおり、これは「オリオンの剣」と呼ばれる部分。中央の星をよく見ると、実は星ではなく「オリオン大星雲(M42)」というガスの雲です。新しい星が生まれている現場で、星の”誕生”が今もここで起きています。地球から約1300光年の距離にあり、肉眼でも見える数少ない星形成領域として知られています。

オリオン座の神話|狩人オリオンとアルテミスの物語
オリオン座のモデルは、ギリシャ神話に登場する狩人オリオンです。
月の女神アルテミスとの恋
オリオンは海神ポセイドンの子で、誰にも負けない力を持つ巨人の狩人でした。彼が恋をしたのは、狩猟と月を司る女神アルテミス。二人は互角の腕を持つ者同士、惹かれ合っていきます。
しかし、アルテミスの兄である太陽神アポロンは、この関係を快く思いませんでした。ある日、海に浮かぶオリオンの姿を遠くの的のように見せかけ、アルテミスに弓を引かせます。狩りの腕を試されたアルテミスは、それが恋人だとは知らずに矢を放ち、オリオンは命を落としてしまいます。
深く悲しんだアルテミスの願いにより、オリオンは天に上げられ、星座になったと伝えられています。

オリオン座とさそり座の関係|夜空に残された神話
別の神話では、オリオンは自らの強さを誇り過ぎたために神々の怒りを買い、放たれたサソリに刺されて命を落としたとされています。
この物語は、星座の動きとも結びついています。夏の星座「さそり座」が東の空に昇ってくる頃、オリオン座は西の空へ姿を消していきます。まるで、オリオンがサソリを避けて逃げているように見えることから、この神話が生まれたと考えられています。
季節によって見える星座が入れ替わるのは、地球が太陽の周りを公転しているために起こる現象ですが、古代の人々はその動きに、こうした物語を当てはめていたのです。

星座の物語と、現代の天文学
オリオン座の神話には「死」のイメージが繰り返し登場します。アルテミスに射抜かれた死、サソリに刺された死。一方で、オリオンの剣の部分にあるオリオン大星雲は、新しい星が生まれ続けている場所です。
神話が描いた「死」の物語と、現代の天文学が示す「誕生」の現場が、同じ星座の中に重なっている。これは偶然ですが、星座を見るときの視点を少し変えてくれる事実です。
オリオン座の見つけ方|冬の夜空で探してみよう
オリオン座は、冬の南の空、比較的低い位置からでも見つけやすい星座です。
- 赤い星(ベテルギウス)と青白い星(リゲル)、明るい一等星2つを探す
- その中間あたりに、等間隔で並ぶ3つの星「三ツ星」を探す
- 三ツ星の少し下に、縦に並ぶ小さな3つの星があれば、それが「オリオンの剣」
剣の中央の星をよく見ると、点ではなく少しぼやけているように見えることがあります。それがオリオン大星雲です。
※神話には地域や時代によって複数の伝承があります。本記事では、代表的な物語を紹介しています。
参考文献