月は人類が唯一降り立ったことのある天体であり、ウサギがお餅をついているとも、美しいお姫様(かぐや姫)が帰っていった場所とも言われる神秘的な星です。
でも、科学の目で見ると、月はもっとドラマチックな出生の秘密を持っています。 実は、月は赤の他人ではなく、かつて「地球の一部」だったかもしれないのです。

衝撃のジャイアント・インパクト
月の誕生には、いくつかの説がありますが、現在最も有力なのが「ジャイアント・インパクト(巨大衝突)説」です。
45億年前、生まれたばかりの地球は、今のように青くなく、ドロドロに溶けたマグマの塊でした。 そこに、火星くらいの大きさの惑星「テイア」が、猛スピードで衝突しました。
その衝撃で、地球の一部とテイアの残骸が宇宙空間にバラバラに飛び散りました。 その飛び散った破片たちが、長い時間をかけて土星のリングのように地球を取り巻き、やがて重力で一つにまとまって固まったもの。 それが「月」なのです。
つまり、月は地球の「兄弟」であり、「子供」であり、あるいは「分身」とも言える存在。 アポロ計画で持ち帰られた「月の石」の成分を分析した結果、地球の石と成分がそっくりであることが分かり、この説はほぼ間違いないと言われています。
なぜ「裏側」を見せないのか?
月を眺めていて、不思議に思ったことはありませんか? 「いつ見ても、ウサギの餅つき(模様)の向きが同じだな」と。
そう、月は「常に同じ顔(表側)」を地球に向けていて、決して裏側を見せてくれません。 「恥ずかしがり屋だから?」 いいえ、これは「潮汐ロック(ちょうせきロック)」という物理現象のせいです。
月が生まれた当初は、もっとクルクルと自転していました。 しかし、地球の強力な重力に何億年も引っ張られ続けた結果、月の重い部分が地球側に固定されてしまったのです。 その結果、「月が1回自転する時間」と「地球の周りを1回公転する時間」がぴったり同じ(約27.3日)になってしまいました。
まるで、ダンスのパートナーの手を離さず、常に見つめ合いながら回っているかのように。 月は、片時も地球から目を逸らさずに、私たちを見守り続けているのです。 (※ちなみに、裏側はクレーターだらけで、表のような海(黒い部分)がほとんどない、全く違う顔をしています)
月がいなければ、人類はいなかった?
もし、あの「巨大衝突」が起きず、月が生まれていなかったら? 私たちは今、ここに存在していなかった可能性が高いです。 月は、美しいだけでなく、地球生命にとっての「守護神」なのです。
① 地球の「ブレーキ役」になってくれた
実は、月が生まれる前の地球は、フィギュアスケーターのように猛スピードで回転していました。 当時の1日は、なんとたったの「4時間〜6時間」。 目まぐるしく太陽が昇って沈み、その遠心力で地上には常に風速100メートルを超える暴風が吹き荒れていたと考えられています。
月は誕生以来、重力で地球の海を引っ張り(潮汐摩擦)、その抵抗で地球の回転にゆっくりとブレーキをかけ続けてくれました。 おかげで自転スピードが落ち、暴風は止み、1日が「24時間」という、私たちが暮らしやすい長さになったのです。
② 生命を海から陸へ誘い出した
さらに、月は生命の進化にも決定的な役割を果たしました。 太古の昔、月は今よりずっと地球の近くにありました。そのため、潮の満ち引きの力も凄まじく、巨大な津波のような干満が繰り返されていました。
「さっきまで海だった場所が、数時間後には陸になる」 この激しい環境変化に取り残された海の生物たちは、生き延びるために必死で「乾燥に耐える体」や「空気呼吸の能力」を身につけました。 月が作るリズムが、生命を海から陸へと誘い出し、進化の背中を押したのです。
③ 季節を守るアンカー(碇)
そして今も、月は地球の自転軸がグラグラしないように、しっかりと支えてくれています。 もし月がいなくなれば、地球の軸は不安定になり(火星のように大きく傾いたり戻ったりして)、灼熱と極寒がデタラメに訪れる過酷な星になっていたでしょう。
私たちが今日、穏やかな風を感じ、四季の移ろいを楽しみ、24時間のサイクルで生活できること。 それはすべて、月が45億年間、そばにいてくれたおかげなのです。
夜空を見上げてください。 そこに浮かぶ白い月は、ただの石塊ではありません。
45億年前に地球から分かれ、傷つきながら固まり、今は静かに地球の自転を支えてくれている「最高のパートナー」です。 そう思うと、いつものお月見が、少しだけ温かい気持ちになりませんか?
参考文献
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