太陽には、まだ解き明かされていない謎がたくさんあります。その中でも最大の謎のひとつと言われているのが「コロナ加熱問題」です。

通常、熱源(ストーブなど)から離れれば離れるほど、温度は下がりますよね? しかし、太陽では真逆のことが起きています。
- 熱源(太陽表面): 6,000℃
- 上空(コロナ大気): 100万℃以上
表面から離れると、なぜか温度が跳ね上がるのです。 「焚き火から離れたら、いきなり火傷した」ようなものです。 長年、科学者たちは頭を抱えてきました。
今日は、この世紀の難問に対し、「ようこう」「ひので」「パーカー」という衛星たちが、どのように連携して答えを出そうとしているのか。その集合知の物語をお届けします。
ようこう:「気づかせた」
1990年代まで、多くの学者はこう思っていました。 「コロナが熱いのは不思議だけど、まあ、穏やかに温まっているんだろう」
その常識をぶち壊したのが、日本の「ようこう」です。 彼がX線で見たコロナは、穏やかどころか、爆発と激動の嵐でした。
- 発見: 太陽は磁力線で満ちており、そこで磁気リコネクション(爆発)が頻発している。
- 功績: 「犯人は『磁場』だ!」と発見したこと
ようこうは言いました。 「これは単なる熱放射じゃない。磁気エネルギーが何らかの形で熱に変換されているぞ!」 彼が警鐘を鳴らさなければ、私たちはまだ検討違いな場所を探していたかもしれません。
ひので:「覗き込んだ」
犯人が「磁場」だと分かっても、手口が分かりません。 「磁場のエネルギーが、どうやって熱(温度)に変わるんだ?」 そのトリックを見破るために投入されたのが、日本の「ひので」です。
彼は、世界最高峰の視力(可視光磁場望遠鏡)で、現場を顕微鏡のように覗き込みました。 そして、2つの有力な証拠を見つけます。
- 波動説(アルベン波): 磁力線がギターの弦のように震え、その振動がエネルギーを上空へ運んでいる。
- マイクロフレア説: 観測できないほど小さな爆発(ショート)が無数に起きて、全体を温めている。
ひのでの功績は、「エネルギーを運ぶパイプ(波動)を見つけたこと」です。 しかし、まだ謎は残りました。 「パイプがあるのは分かった。でも、そのパイプの『出口』で、どうやってエネルギーが熱として放出されるんだ?」
※これらは「マイクロフレア」と呼ばれますが、さらに小さく観測できないレベルの爆発は「ナノフレア」と呼ばれ、現在も議論が続いています。
パーカー・ソーラー・プローブ:「突っ込んだ」
遠くから見るだけでは、これ以上は分からない。 「なら、俺が行く」 そう言って飛び出したのが、NASAのパーカー・ソーラー・プローブです。
彼は、断熱シールドを構えて、100万度のコロナの中に突っ込みました。 そして、その場のプラズマを直接触って、衝撃的なデータを送ってきました。
- 発見: 磁場が突然「くの字」に折れ曲がる現象(スイッチバック)が頻発している。
- 解決への糸口: 「ひので」が見た波が、現場では激しく砕け散り、その摩擦(乱流)でプラズマを急激に加熱している証拠をつかみつつあります。
パーカーは今まさに、「エネルギーが熱に変わる瞬間」を現場検証しているのです。
- ようこうが、「異常事態」に気づかせた。
- ひのでが、エネルギーの「通り道」を特定した。
- パーカーが、その「出口」に触れた。
たった一機の衛星では、この謎は解けませんでした。 国を超え、時代を超えた「科学衛星たちのリレー」が、ついに太陽最大の矛盾を解き明かそうとしています。
ただし、2026年現在、太陽は全てを教えてくれていません。
もし今後、「コロナ加熱の謎が解明された!」というニュースが流れたら。 それは最新の衛星の手柄だけではありません。 30年前に常識を覆した、日本の「ようこう」から始まった物語のゴールインなのです。



参考文献
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