地獄の火山と氷の海。木星を回る「ガリレオ衛星」のキャラが濃すぎる件

1610年、イタリアの天才ガリレオ・ガリレイは、自作の望遠鏡を夜空に向けました。 彼が木星を見たとき、その周りに「4つの小さな星」が一列に並んでいることに気づきました。 翌日見ると、その星たちの位置が変わっていました。

「これは、星が木星の周りを回っているんだ!」

この発見は、当時の常識だった「すべての天体は地球を中心に回っている(天動説)」という教えを、根底から覆す大事件でした。 今日は、歴史を変え、そして今も私たちをワクワクさせ続ける「4つのガリレオ衛星」の旅へご案内します。

木星の衛星
Image Credits: NASA/JPL/DLR

目次

第1の月:イオ(Io) 〜ピザ色の地獄〜

木星に一番近い場所を回っているのが、「イオ」です。 NASAのボイジャーが初めてこの衛星を撮影した時、科学者たちは目を疑いました。 その表面は黄色やオレンジ色で、まるで「焼きすぎたピザ」のようだったからです。

この色の正体は、硫黄(いおう)です。 イオは、太陽系で最も火山活動が激しい「火山の星」。 いたるところで巨大な噴火が起き、数百キロの高さまでマグマやガスを吹き上げることがあります。

なぜ、こんなに熱いのでしょうか? それは、巨大な木星の重力と、外側にある他の衛星の重力に挟まれ、イオ自体がゴムボールのように伸び縮みさせられているからです(潮汐加熱といいます)。 星全体が常にグニグニと揉みしだかれているため、その摩擦熱で中身がドロドロに溶けているのです。 まさに、重力が生んだ地獄のような世界です。


第2の月:エウロパ(Europa) 〜生命がいるかもしれない海〜

イオの外側を回るのが、白く輝く美しい衛星「エウロパ」です。 地獄のようなイオとは対照的に、エウロパの表面は厚さ数十キロの「氷」で覆われています。

そして今、NASAが「地球外生命がいる可能性が最も高い場所」として大注目しているのが、この星です。 なぜなら、氷の表面に見られる無数のひび割れから、氷の下には「広大な液体の海」が存在することが確実視されているからです。

その海の深さは地球の海の10倍以上。 木星の重力による熱があるため、深海には地球の熱水噴出孔のような場所があり、そこには太陽の光を必要としない生命(バクテリアや魚のような生物?)がいるのではないか? そう考えられています。 近いうちに、氷の下へ探査機を送る計画も進んでいます。ワクワクしませんか?


第3の月:ガニメデ(Ganymede) 〜太陽系最大のボス〜

3番目は、「ガニメデ」。 この衛星の最大の特徴は、惑星である「水星」よりも大きい、「太陽系最大の衛星」だということです。

ガニメデは、衛星としては唯一、自分自身の「磁場」を持っています。 地球と同じように、方位磁針を持っていけば北を指しますし、なんと極地には「オーロラ」が発生していることもハッブル宇宙望遠鏡によって確認されています。 衛星なのに、まるで一人前の惑星のように振る舞う、生意気でカッコいい星なのです。

表面は岩と氷が混ざった複雑な地形ですが、地下にはエウロパと同じく「海」があると考えられています。 しかも、ただの海ではありません。 「氷の層」→「海」→「氷の層」→「海」……というように、特殊な氷と水が何層にも重なった「クラブハウスサンド」のような構造になっているという説もあります。 地球の海よりもはるかに大量の水が、この巨大な身体の中に眠っているのです。

ちなみに、この「ガニメデ」という名前。 以前紹介した「みずがめ座」の美少年ガニュメデスと同じ名前です。 ゼウス(木星=ジュピター)が彼をあまりにも気に入りすぎて、自分のすぐそばを回る一番大きな衛星にその名を付けた…と考えると、神話の愛の深さが伝わってきますね。


第4の月:カリスト(Callisto) 〜傷だらけの最長老〜

一番外側を回るのが、「カリスト」です。 この星は、表面がとてつもない数のクレーターで埋め尽くされており、「太陽系で最もボコボコな天体」として有名です。

イオやエウロパは、火山や地殻変動で表面が更新されていますが、カリストにはそれがありません。 40億年前にできたクレーターが、誰にも消されずにそのまま残っています。 中でも最大の見どころは、「ヴァルハラ盆地」。 巨大な隕石が衝突した跡で、まるで池に石を投げ込んだ時の波紋のように、何重ものリング状の地形が数千キロにわたって広がっています。 太陽系初期の激動の歴史を今に伝える、静かなる証言者です。

「地味な星だな」と思いましたか? でも、将来人類が木星に行くとしたら、最初の基地はカリストに作られると言われています。

木星の周りは「放射線帯」という、人間が即死するレベルの危険地帯なのですが、一番外側を回るカリストだけは、その放射線量が極めて低いのです。 さらに、氷(水)も豊富にあります。 火山地獄のイオや、放射線が強いエウロパに比べ、カリストは「木星圏のオアシス」として、未来の宇宙飛行士たちの拠点になるかもしれません。


火山だらけのイオ、氷の海のエウロパ、巨大なガニメデ、最古のカリスト。 木星という一つの惑星の周りに、これほどバラエティ豊かな世界が広がっている様子は、まるでここだけで一つの「ミニチュア太陽系」を作っているかのようです。

ガリレオが小さな望遠鏡で見た4つの光の点は、400年後の今、生命の可能性を秘めたフロンティアに変わりました。 次に木星を見上げるときは、その周りを回る個性豊かな4兄弟のことも思い出してください。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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