「奇跡」はいらない。完璧すぎた探査機「はやぶさ2」がリュウグウで見せた実力

満身創痍で帰還した「初代はやぶさ」のお話には、日本中がその姿に涙しましたが、技術者たちは泣いてばかりではありませんでした。

「次は、奇跡になんて頼らない」

そうして2014年に打ち上げられた後継機、「はやぶさ2」。 その旅路は、ある意味で「退屈」なものでした。 エンジンは止まらず、通信も切れず、行方不明にもならない。 あまりにもスケジュール通りに進みすぎて、一般ニュースではあまり騒がれなかったほどです。

しかし、その「退屈さ」こそが、日本の技術が「まぐれ」から「実力」へ進化した証明でした。 今日は、そんな優等生が見せた、「かなり過激なミッション」についてお話しします。

探査機はやぶさ2の外観
Image Credit: JAXA

目次

宇宙で爆発させて、銅の弾丸を発射

はやぶさ2の最大の見せ場。それは小惑星リュウグウに「人工クレーター」を作ったことでしょう。

小惑星の表面は、長い年月で宇宙線に晒され、変質(日焼け)しています。 「太古のままの新鮮なサンプルが欲しい」 そこで技術者たちは考えました。 「表面を吹っ飛ばして、地下の土を掘り返せばいいじゃない

搭載されたのは「衝突装置(SCI)」。 中には高性能な「爆薬(HMXなど)」が詰まっています。 はやぶさ2は、この装置を切り離して物陰に退避。その後、宇宙空間でドカン!と爆発させ、その勢いで「銅の円盤(弾丸)」をリュウグウに撃ち込みました。

結果は見事命中。 人類は初めて、宇宙空間での制御発破と、小惑星内部のサンプルの採取に成功したのです。


進化したイオンエンジン

初代はやぶさで故障した「イオンエンジン」も、別物に進化していました。 推力向上に加え、耐久性と運用の柔軟性が大きく改善されました。初代を救ったあの「クロス運転」の機能が、最初から標準装備されていたのです。

「もし壊れても、すぐに回路を繋ぎ変えればいい」 この冗長性(バックアップ体制)があったからこそ、はやぶさ2は一度も立ち止まることなく、往復52億キロを走り抜けることができました。 まさに、失敗から学んだ執念の改良です。


動く探査ロボットたち

初代にはなかった新兵器として、「MINERVA-II(ミネルバ2)」という小型ローバーたちも活躍しました。 小惑星の重力は地球の数万分の一。車輪で走ると浮いてしまいます。 そこで彼らは、モーターの反動を使って「ホップ(ジャンプ)」して移動しました。

自律的に判断して、リュウグウの表面をピョンピョンと跳ね回り、至近距離からカラー写真を送ってきました。 その写真は、荒涼とした岩場に立つ「自分たちの影」を写した、息を呑むほどリアルなものでした。


玉手箱の中身

2020年12月、はやぶさ2は地球にカプセルを届けました。 初代のときは「スプーン一杯あれば大成功」と言われていましたが、はやぶさ2が持ち帰ったのは「約5.4グラム」。 目標の50倍以上、小石がゴロゴロと入っているほどの大量サンプルでした。

そして分析の結果、そこからは「水」「アミノ酸(有機物)」が見つかりました。 つまり、「地球の生命の材料は、宇宙から来たかもしれない」という仮説が、現実味を帯びてきたのです。 彼が持ち帰ったのは、単なる砂ではなく、私たちの「ルーツ」そのものでした。


カプセルを地球に落とした後、はやぶさ2本体はどうなったと思いますか? 初代は大気圏で燃え尽きましたが、はやぶさ2は「推進剤(主にイオンエンジン用キセノン)が半分も余っていた」のです。

「まだ飛べる」 彼はそのまま地球を離れ、次の目的地である小惑星「1998 KY26」へ向かう新たな旅に出ました。 到着予定は2031年。 あまりに優秀すぎて、定年退職させてもらえなかったのです。

奇跡の帰還から、確実なミッションへ。そして終わらない拡張ミッションへ。 はやぶさ2は今も、日本の宇宙技術の結晶として、暗闇の中を元気に飛び回っています。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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