なぜスペースコロニーはそこに浮かぶ? ラグランジュポイントL4・L5の秘密

ラグランジュポイントのうち、L1とL2は、便利な場所ですが、常にジェット噴射でバランスを取らないと落ちてしまう「不安定な場所」でした。

しかし、残る「L4」と「L5」は別格です。 ここは、宇宙空間にぽっかりと空いた「重力の水たまり」のような場所。 燃料なんて一滴も使わなくても、一度そこに置けば、非常に長い期間そこに留まり続けることができるのです。

ラグランジェ点
Image Credit: NASA

あの有名なSFアニメ『機動戦士ガンダム』で、スペースコロニー(宇宙植民地)が置かれているのも、まさにこの場所。 なぜここだけ特別なのか? そして「L3」には何があるのか? 宇宙のミステリーゾーンを覗いてみましょう。


目次

L3:隠された場所の伝説

まずは、少し影の薄いL3から。 場所は、太陽を挟んで「地球の真裏」です。

地球から見ると、常に太陽の向こう側に隠れていて、永遠に見ることができません。 この「絶対に見えない」という性質から、昔のSF小説や映画では、 「実は太陽の裏側には、地球そっくりの『反地球(カウンター・アース)』があり、宇宙人が住んでいる」 なんていう設定がよく使われました。

しかし残念ながら、現実の物理学では、L3もL1やL2と同じく「不安定」です。 もしそこに惑星があったとしても、他の惑星(金星や木星)の重力に少しずつ引っ張られて、すぐに位置がズレて、地球から観測可能な状態になってしまうはずです。 現代の観測では、L3には何もいないことがわかっています。また、実用的にはほぼ使われない点です。ちょっと残念ですね。


L4・L5:宇宙のセーフティーゾーン

さて、主役のL4L5です。 場所は、太陽と地球を結ぶ線を底辺とした、正三角形の頂点にあたる位置です。 (地球の前方を走るのがL4、後方を追うのがL5)

ここの最大の特徴は、「安定していること」。 L1やL2が「山の頂上(ボールが落ちる)」なら、L4とL5は「お椀の底(ボールが戻ってくる)」のような形をしています。

もしここにある物体が少しズレても、また元の場所へふらふらと戻ってきてしまうのです。 エネルギーを使わずに位置をキープできる。 これこそが、ここが「宇宙の特等席」と呼ばれる理由です。


実例1:ガンダムとオニール・コロニー

この「安定性」に目をつけたのが、1970年代の物理学者ジェラルド・オニール博士です。 彼は、巨大な宇宙ステーション(スペースコロニー)を作るなら、勝手に位置が安定するL4やL5が最適だと提唱しました。

この理論を忠実に設定に取り入れたのが、アニメ『機動戦士ガンダム』です。 作中に登場するコロニー群「サイド」は、地球と月のラグランジュポイント(L4やL5など)に配置されています。 「あのアニメの設定は、実は物理学に基づいていた」と知ると、見方が変わりますよね。


実例2:木星のトロヤ群

SFだけではありません。現実の宇宙でも、この現象は起きています。 特に重力が強い木星のL4とL5には、太古の昔に捕まった小惑星が数千個以上も溜まっています。 これを「トロヤ群小惑星」と呼びます。

いわば、宇宙の「吹き溜まり」。 ここにある小惑星は、太陽系が生まれた頃の姿をそのまま残している「化石」だと考えられています。 現在、2021年に打ち上げられたNASAの探査機「ルーシー(Lucy)」が、この化石たちを調べるために長い旅を続けています。

また、日本のすばる望遠鏡も、このトロヤ群の観測で大きな成果を上げています。


5つあるラグランジュポイントはそれぞれ、性質が異なります。

  • L1: 太陽を見張る監視塔
  • L2: 宇宙を覗く天文台
  • L3: 幻の惑星の隠れ場所
  • L4/L5: 未来の居住地と、過去の化石置き場

250年前にラグランジュが計算したこの「5つの点」は、今や人類にとってなくてはならない「宇宙の住所」になりました。 夜空を見上げる時、「あの日傘の下(L2)にジェームズ・ウェッブがいるんだな」「あの何もない空間(L4)に、いつか人が住むのかな」と想像してみてください。 きっと、宇宙が少し身近に感じられるはずです。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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