ラグランジュが見つけた「宇宙の地図(5つのポイント)」の歴史を、以前お話ししました。

今回は、その中でも現代の科学者たちがこぞって探査機を送り込む、「L1」と「L2」について深掘りします。

この2つは、地球を挟んでちょうど反対側に位置する、まるで「双子」のような関係です。 しかし、そこから見える景色は真逆です。 L1は、眩しい太陽を見つめる場所であり、 L2は、暗い宇宙を見つめる場所です。どちらも地球から約150万km離れています。
なぜ人類はこの2箇所を使い分けるのか? そして、なぜここが「危険な場所」とも言われるのか? その秘密を紐解いていきましょう。
L1:太陽を見張る「最前線の監視塔」
まずはL1ポイントから。 場所は、太陽と地球の「間」です。
ここに立つと、どう見えるでしょう? 目の前には巨大な太陽があり、後ろを振り返れば地球があります。 常に「人工的な日食」が起きているような場所ですね。
ここは「太陽観測」の聖地です。 太陽から吹き付ける電気を帯びた嵐(太陽風)は、地球の通信機器や発電所にダメージを与えることがあります。GPS障害や大規模停電の原因になることも。 L1は地球より太陽側にあるため、この嵐が地球に届く前に「あ、嵐が来るぞ!」といち早く察知できるのです。
現在もSOHOなどの観測衛星が、地球を守るための「早期警報ブイ」として、ここで24時間太陽を睨み続けています。

L2:永遠の夜に包まれた「天文台」
次はL2ポイント。 場所は、太陽とは反対側、地球の「裏側」です。
ここは**「深宇宙観測」の聖地です。 以前ご紹介したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)もここにいます。
天文学者にとって、太陽や地球の「熱」や「光」は、遠くの星を見る邪魔になります。 L2にいれば、太陽・地球・月がすべて同じ方向(背中側)に固まって見えます。 だから、そちら側に「日傘(サンシールド)」を広げてしまえば、視界は真っ暗。 極低温の環境で、クリアな宇宙観測ができるのです。
「L1は太陽を見るため、L2は太陽を避けるため」 この使い分けこそが、ラグランジュポイントの真骨頂です。
弱点:実は「不安定」な場所?
さて、ここからが少しディープな話です。 「ラグランジュポイントは重力が釣り合う安定した場所」と説明されますが、実はL1とL2には致命的な弱点があります。
それは、「バランスが悪くて落ちやすい(準安定)」ということです。
イメージしてください。 「尖った山の頂上」にボールを置くようなものです。 てっぺんに置けば、理論上は止まります(釣り合います)。 でも、少しでも指で突けば、ボールはコロコロと谷底へ転がり落ちてしまいますよね?
L1とL2も同じです。 重力的に「山の頂上」のような形をしているため、何もしないと探査機はバランスを崩して、宇宙の彼方へ落ちていってしまうのです。
対策:エネルギーで維持する
では、どうしているのでしょうか? 実は、定期的に**「スラスター(エンジン)」を噴射して、位置を微調整しています。
「おっと、右に落ちそうだ」と思ったら左に噴射。 「左に落ちそうだ」と思ったら右に噴射。
JWSTなどの探査機は、まるでサーカスのようにバランスを取りながら、エネルギーを使ってその場所に留まり続けているのです。 だから、「燃料が尽きた時」が「寿命」になります。 L1とL2は、そこに居座るだけでもコスト(燃料)がかかる、意外と手のかかる場所なんですね。




参考文献
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