テレビのニュースや、科学番組で、 「太陽の表面で爆発が起きました!」 という映像を見たことはありませんか?
金色に輝く表面から、炎の龍(プロミネンス)が噴き出し、時には紫色や緑色に美しく発光している……あの息を呑むような高画質映像。 あれを撮影しているのが、NASAの「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」です。

前回紹介したSOHOは30年前の「レジェンド」ですが、SDOは2010年に打ち上げられた「現代っ子」。 その最大の特徴は、「圧倒的な画質」と「カラフルな写真」です。
特徴1:ハイビジョンの10倍!
SOHOも偉大ですが、やはり30年前のカメラなので、画質には限界があります。 しかしSDOに積まれているカメラは高性能化しています。
- 画質: ハイビジョンテレビの約10倍の解像度。
- 頻度: SOHOが十数分に1枚なのに対し、SDOは「0.75秒に1枚」という猛烈なスピードでシャッターを切ります。
これにより、太陽表面の液体のような動きや、磁力線が複雑に絡み合う様子を、まるで「映画(ムービー)」のように滑らかに見ることができるのです。 私たちが「太陽は生きている」と実感できるのは、SDOのおかげなんですね。
特徴2:なぜ太陽が「紫色」に?

NASAのサイトに行くと、SDOが撮った太陽には、赤、青、金、紫、緑……といろいろな色があります。 「NASAが映えを狙って加工したの?」 いいえ、違います。これは「温度」を見ているのです。
SDOは、人間の目には見えない「紫外線」の様々な波長を使い分けています。
- 黄色(可視光に近い波長): 約6,000℃。私たちが知っている太陽の表面。
- 金色(17.1ナノメートル): 約60万℃。穏やかなコロナや磁力線が見えます。(一番よく見る画像)
- 紫色(21.1ナノメートル): 約200万℃以上。もっと熱い、活発な場所が見えます。
- 緑色(9.4ナノメートル): 約600万℃。フレア爆発の瞬間だけ輝く超高温の世界。
つまり、SDOは「サーモグラフィー」のように、見たい温度に合わせてメガネ(フィルター)を掛け替えているのです。 「今日は紫色の気分だな」ではなく、「今日は200万℃のガスを重点的に見よう」としているわけですね。
場所:L1にはいない?
ここで一つ、SOHOやACEとの大きな違いがあります。 SOHOたちは、地球から150万km離れた「L1ポイント」にいましたよね。
しかし、SDOがいるのは「地球の周回軌道(静止軌道)」です。 気象衛星ひまわりや、BS放送の衛星と同じくらいの高さ(高度約3万6000km)にいます。
なぜL1に行かなかったのか? 理由はシンプル。「データ量が多すぎるから」です。 超高画質の4K動画を24時間送り続けるには、L1のような遠くからでは通信速度が足りません。 大容量のデータをスムーズに送るために、あえて地球の近くを選んだのです。
役割:予報の「目」
宇宙天気予報において、SDOは「発生源の特定」を担っています。
- SOHO: 「広い範囲」を見て、ガスが飛んできたかを確認する。(広角カメラ)
- SDO: 「太陽の表面」をアップで見て、どの黒点が爆発しそうか、磁力線がどう歪んでいるかを精密検査する。(顕微鏡・望遠レンズ)
この2つの目が揃うことで、精度の高い予報が可能になっています。
SDOの画像は、科学データでありながら、現代アートのような美しさを持っています。 NASAの特設サイト「The Sun Now」では、SDOが撮りたての「今の太陽」を誰でも見ることができます。
今、太陽は何色に輝いているでしょうか? ぜひ一度、その目で確かめてみてください。

参考文献
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