惑星のストーカー? 木星と同じ軌道を回る「トロヤ群」小惑星の謎

みなさんは、道路を走っていて、ずっと前の車が一緒だったことはありませんか? 渋滞中によくありますが、ちょっと気まずいですよね。

実は宇宙にも、惑星と全く同じ軌道(車線)を、全く同じスピードで走っている不思議な天体たちがいます。 それが「トロヤ群小惑星」や「ギリシャ群小惑星」です。

普通なら、同じ軌道にいればいつか衝突したり、重力で弾き飛ばされたりします。 しかし彼らは何十億年もの間、惑星と一定の距離を保ちながら、仲良くランデブーを続けています。 なぜぶつからないのか? そこには、重力が作り出す「見えない安定地帯」の秘密がありました。


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仕組み:宇宙のポケット「ラグランジュ点」

この不思議な現象を解く鍵は、「ラグランジュ点」という場所にあります。 太陽と惑星(木星など)の重力が、絶妙なバランスで釣り合うポイントのことです。

ラグランジェ点
Image Credit: NASA

特に、惑星から見て「60度前方(L4)」と「60度後方(L5)」の2箇所は、重力の「窪み(ポケット)」のような場所になっています。 一度ここにハマった小惑星は、そこから抜け出せなくなり、惑星と一緒に太陽の周りを回ることになるのです。

このL4にいる集団を通称ギリシャ群と呼び、L5にいる集団を通称トロヤ群と呼びます。

木星のトロヤ群には、なんと100万個以上もの小惑星が囚われていると言われています。 まさに、木星の前と後ろには、目に見えない「小惑星の大群」が護衛のように付き従っているのです。


ミッション:タイムカプセルを探す旅

なぜ今、このトロヤ群が注目されているのでしょうか? それは、ここが「太陽系のタイムカプセル」だからです。

トロヤ群の小惑星たちは、惑星が生まれた頃(46億年前)の「材料」が、そのまま冷凍保存されていると考えられています。 火星と木星の間にある普通の小惑星帯(メインベルト)は、太陽に近くて熱で変成していますが、遠い木星トロヤ群は、より原始的な状態を保っているのです。

そこに挑んでいるのが、2021年に打ち上げられたNASAの探査機「ルーシー(Lucy)」です。 ミッションは過酷で、 なんと12年間で8つの小惑星を次々とフライバイ(通過観測)するという、前代未聞の旅を行います。 その中には、史上初めて発見された「衛星を持つトロヤ群小惑星」も含まれています。


探査機ルーシーが目指す小惑星
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab

科学:惑星は動いていた?

ルーシーがトロヤ群を調べる最大の目的。 それは、「昔、木星や土星は今とは違う場所にいたのではないか?」という「ニース・モデル(惑星移動説)」を証明することです。

もし、トロヤ群の成分がバラバラ(遠くで作られたものと、近くで作られたものが混ざっている)なら、それは昔、巨大惑星たちがダイナミックに移動して、太陽系全体をひっかき回した証拠になります。 私たちの太陽系が、最初から今の形だったのか、それともビリヤードのように激しく動いて今の形になったのか。 その答えが、あの小惑星の群れの中に眠っているのです。


探査機「ルーシー」の名前は、エチオピアで発見された有名な化石人骨「ルーシー(アウストラロピテクス)」から取られました。 化石のルーシーが「人類の起源」を教えてくれたように、探査機のルーシーは「太陽系の起源」を教えてくれるはずだ、という願いが込められています。

ルーシーが木星トロヤ群に到着するのは、2027年頃。 私たちが見上げる夜空の、何もないように見える暗闇の中に、太陽系の歴史を解く鍵がふわふわと浮かんでいるのです。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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