月にコンビニ1軒分の灯りを。凍える夜を温める「小さな発電所」の話

今日の月は、どんな表情をしているでしょうか?

静かに輝くその月で今、「人類が生活するための、小さな発電所を作る」という計画が動き出しています。

「月に発電所? なんだかお話が大きすぎて……」

そう思った方もいるかもしれません。でも、これは決して遠い未来のSFの話ではありません。NASA(アメリカ航空宇宙局)が、NASAは2030年代初頭の実証を目標に、この技術開発を進めています(計画段階であり、実際の運用開始は今後の進展次第です)。

今日は、冷たくて静かな月の世界に灯るかもしれない、「新しい心臓」のお話をしましょう。

目次

なぜ、月に「原子力発電所」が必要なの?

月面の将来図
Image Credit: NASA

今回話題になっているのは、NASAとアメリカエネルギー省(DOE)が進めている「月面用核分裂炉(Fission Surface Power)」のプロジェクトです。

簡単に言うと、「超小型の原子力発電所を月に持って行こう」という計画です。

でも、どうしてわざわざ原子力を? 太陽の光なら、宇宙にはたくさんあるはずですよね。 実はそこには、月ならではの「切実な事情」があるのです。

14日間続く、凍えるような長い夜

私たち地球の生活リズムは、だいたい24時間で朝と夜が入れ替わりますよね。 でも、月のリズムはもっとゆったりしています。

月では、昼が約14日間続き、そのあと夜が約14日間続きます。

想像してみてください。2週間ずっと太陽が出ない、真っ暗なキャンプ場を。 気温はマイナス100度を優に超え、太陽光パネルはただの板になってしまいます。

リチウムイオン電池も、電気を「貯める」ことはできますが、2週間分の生活エネルギーを全て貯め込もうとしたら、とんでもなく巨大で重たい電池が必要になってしまいます。

ロケットで運べる荷物の重さには限りがあります。 そこで選ばれたのが、小さくても長く動き続ける「原子力」という選択肢でした。

太陽の届かない場所にある「水」を探して

さらに、今人類が目指している月の「南極」付近には、深いクレーターの底に「永久影(えいきゅうかげ)」と呼ばれる場所があります。

そこは文字通り、永遠に太陽の光が届かない場所。 けれど、そこには人間が生きていくために不可欠な「氷(水)」が眠っていると言われています。

光の届かない場所で氷を掘り出し、生活の水に変える。 そのためには、太陽に頼らない、自立したエネルギー源が必要不可欠なのです。

宇宙に運ぶ、小さな「魔法瓶」

「発電所」と聞くと、巨大な建物を想像するかもしれません。 でも、今回計画されている炉は、とても慎ましいサイズです。

コンビニ1軒分のエネルギーを、10年間ずっと

NASAが求めている性能は、重さが6トン以下(ロケットに乗るサイズ)。 そして、40キロワットの電力を生み出せること。

40キロワットというと、だいたい「コンビニエンスストア1軒分」、あるいは「一般家庭30軒分」くらいのエネルギーです。 都市を丸ごと動かすようなパワーはありませんが、月面基地で数人の宇宙飛行士が生活し、実験装置を動かすには十分な力です。

そして何よりすごいのは、それが「10年間、休まず動き続ける」ということ。

薪(まき)をくべ続けなければ消えてしまう焚き火とは違い、一度設置すれば、10年の間、冷たい月の夜を温め続けてくれる「魔法のストーブ」のような存在なのです。

その光は、さらに遠くの「赤い星」へ

実は、このプロジェクトが見据えているのは、月だけではありません。 月の向こうにある、あの「赤い惑星」です。

月はゴールではなく、港町

NASAは、この月面での実験を、将来の「火星探査」のためのリハーサルだと位置づけています。

火星は地球よりも遠く、太陽の光はさらに弱くなります。 そして時折、惑星全体を覆い尽くすような巨大な砂嵐が発生し、数ヶ月も太陽が遮られることがあります。

そんな過酷な環境で、人類が長期滞在するには、天候に左右されないエネルギー源がどうしても必要になります。

月で技術を確立し、それを火星へ。 月は、人類がさらに遠くへ旅立つための、最初の大切な「港町」になろうとしているのです。

まとめ:今夜、月の心臓を想う

2030年代。あと数年後には、あの静かな月面に、人類が作った「熱い心臓」がトクトクと鼓動を始めるかもしれません。

それは、かつてプロメテウスが人類に火を与えたように、私たちが宇宙で暮らすための「聖なる火」になるのでしょうか。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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