夜空を見上げると、無数の星が輝いています。
青白くするどく光る星、オレンジ色に柔らかく灯る星、赤みがかってほんのり揺らぐ星。色も明るさもさまざまですが、私たちはそれらをまとめて「星」と呼んでいます。
では、あの星たちはいつまでも同じ姿で輝き続けているのでしょうか?
答えはノーです。星にも人間と同じように、誕生があり、成長があり、老いがあり、最期があります。そしてもっと興味深いことに、「星の一生」は星ごとに大きく異なります。どんな最期を迎えるかは、生まれたときの「質量(重さ)」によってほぼ決まってしまうのです。
このページでは、星の一生を「質量による5つの道」として整理し、誕生から最期まで順を追って解説します。それぞれの天体の詳細は、各リンク先の記事で掘り下げています。
星の一生は複雑に見えますが、大きく分けると次のような流れになります。

まず全員共通:星はどこで、どうやって生まれるのか
どんな質量の星であっても、出発点は同じです。それは宇宙を漂う「星間分子雲」と呼ばれるガスと塵の集まりです。

星間分子雲は、マイナス260度近い極低温の暗闇に広がる、薄くて巨大なガスの雲です。この雲の中では、ガスが少しずつ重力によって集まり始めます。集まるほど重力は強まり、さらに周囲のガスを引き寄せる——この連鎖が続くと、やがてガスの塊は中心ほど高密度・高温になっていきます。
こうして生まれた「星の卵」を原始星と呼びます。

原始星の段階では、まだ中心温度が核融合を起こすほど高くありません。周囲のガスを取り込みながら収縮を続け、中心温度が約1000万度に達したとき、水素の核融合が始まります。この瞬間、星は「恒星」として独り立ちします。
核融合とは、水素原子が融合してヘリウムになる反応で、このとき莫大なエネルギーが放出されます。これが星の「光」の正体です。核融合が生み出す外向きの圧力と、星自身の重さによる重力が釣り合うことで、星は安定した丸い形を保ちながら長く輝き続けます。
ここからが、質量による「分岐」の始まりです。

質量で決まる5つの道
星の一生を分ける最大の要因は、生まれたときの質量です。重い星ほど燃料を激しく消費するため寿命が短く、最期の爆発も派手になります。軽い星ほど燃料を節約し、静かに長い時間を生き抜きます。
ここでは「太陽の質量」を基準に、5つのパターンに整理します。
道①:太陽の0.08〜0.8倍|赤色矮星として生き、静かに燃え尽きる
太陽より軽い恒星は、赤色矮星になります。

赤色矮星は表面温度が3500度以下と低く、赤みがかった弱い光を放ちます。地球から肉眼では見えませんが、天の川銀河の恒星の約4分の3を占めるとされており、宇宙で最も数の多い種類の星です。
寿命は数兆年。現在の宇宙の年齢(約138億年)をはるかに超えるため、これまでに生まれた赤色矮星はまだ1つも「老年期」に入っていません。
燃料を使い果たした赤色矮星はどうなるのか、理論上、赤色矮星は非常に長い時間をかけて青色矮星へ変化し、その後白色矮星になると考えられています。ただし宇宙の年齢が若いため、実際に観測された例はありません。
道②:太陽の0.8〜8倍|赤色巨星になり、惑星状星雲と白色矮星を残す
太陽と同じくらいの質量の星がたどる道です。
誕生後、星は長い「主系列期」に入ります。主系列期とは、核融合が安定して続く時代のことで、太陽の場合は約100億年続きます。

中心の水素が底をついてくると、核融合の場所が中心から外側にずれ始め、星の外層部が大きく膨らんでいきます。これが赤色巨星です。

赤色巨星になった太陽は、現在の100倍以上の大きさにまで膨張すると考えられています。太陽から地球の距離(1億5000万km)に迫るか、場合によっては地球の軌道あたりまで外層が広がる可能性があります。これは約50億年後の話です。
赤色巨星の段階では、中心でヘリウムの核融合も起き始めます。しかし最終的に燃料が尽きると、外層のガスは宇宙空間へゆっくりと放出されます。残ったガスは星の周囲に広がり、中心の熱いコアによって照らされた光の輪——惑星状星雲を作ります。

「惑星状」という名前ですが、惑星とは無関係です。望遠鏡で見ると惑星のような円形に見えたため、この名がついています。
外層が失われた後に残るのは、炭素とヘリウムを主体とした小さくて高密度のコア——白色矮星です。

白色矮星はもはや核融合を起こしておらず、過去に蓄えた熱をゆっくりと放出しながら冷えていきます。最終的には「黒色矮星」と呼ばれる冷え切った天体になると予想されていますが、宇宙の年齢ではまだそこに至った白色矮星は存在しないと考えられています。
道③:太陽の8〜20倍|赤色超巨星になり、超新星爆発で中性子星を残す
太陽の8倍以上の質量を持つ星は、より激しい道をたどります。
主系列期に青白く輝く大質量星は(青色巨星と呼ばれます)、燃料の消費が激しく、寿命は数百万〜数千万年程度しかありません。

老年期に入ると、星は巨大に膨張して赤色超巨星になります。その大きさは太陽の数百〜1000倍以上に達することもあり、もし太陽系の中心に置いたとすれば、木星の軌道あたりまで覆い尽くすほどです。

赤色超巨星の内部では、水素→ヘリウム→炭素→酸素→ネオン……という核融合の「多段階反応」が進み、最終的に鉄の芯が形成されます。鉄は核融合してもエネルギーを生み出せないため、内側からの圧力が失われます。するとコアは一瞬で自重によって崩壊し、外層部が中心に落ち込む衝撃波で吹き飛びます。これが超新星爆発です。

超新星爆発の明るさは、一瞬で銀河全体に匹敵するほどになります。また、爆発の際に鉄より重い元素(金・銀・ウランなど)が合成され、宇宙に散布されます。私たちの体を構成する鉄やカルシウムも、かつての超新星爆発によって宇宙に撒かれたものです。
爆発後に残るのは、直径20kmほどの超高密度な芯——中性子星です。

中性子星の密度は桁外れで、スプーン1杯分の重さが数億〜10億トンに達します。猛烈な速さで自転しながら電波を規則正しく放射するものは「パルサー」と呼ばれ、宇宙の精密な時計のように観測されます。
道④:太陽の20倍以上|超新星爆発を経て、ブラックホールになる
さらに重い星が超新星爆発を起こすと、爆発後に残る中心核が中性子星としても支えきれないほどの質量を持つ場合があります。この場合、中心核はさらに収縮を続け、ブラックホールが誕生します。

ブラックホールは、重力が極端に強くなりすぎて光さえも脱出できなくなった天体です。外からは直接「見る」ことができませんが、周囲のガスや光の挙動から存在を観測できます。
質量の境界線(何倍以上でブラックホールになるか)は一概に決まっておらず、星の化学組成や自転速度によっても変わります。また、非常に重い星の中には超新星爆発すら起こさず、そのままブラックホールへ崩壊するものがある可能性も指摘されています。
道⑤:太陽の0.08倍未満|核融合に至らず、褐色矮星で終わる
ガス雲が収縮してもあまりに軽すぎた場合、中心温度が核融合を起こすのに必要な約1000万度に達しません。この場合、「星」にはなれず、褐色矮星として一生を過ごします。
褐色矮星は「星になりそこねた天体」で、わずかな核反応の熱とその後の冷却だけで赤外線を放ちながら、ゆっくりと冷えていきます。恒星と惑星の間に位置する存在として、「失敗した星」とも呼ばれることがあります。ただし、褐色矮星自体の詳細は別カテゴリーでの解説になるため、ここでは「恒星になれなかった道」として紹介するにとどめます。
星の一生をまとめる
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
| 質量(太陽との比較) | 主系列期の姿 | 老年期 | 最期 |
|---|---|---|---|
| 0.08倍未満 | — | 褐色矮星 | 冷えて暗くなる |
| 0.08〜0.8倍 | 赤色矮星 | 収縮(未観測) | 白色矮星(理論上) |
| 0.8〜8倍 | 黄色〜橙色の矮星 | 赤色巨星・惑星状星雲 | 白色矮星 |
| 8〜20倍程度 | 青色巨星 | 赤色超巨星・超新星爆発 | 中性子星 |
| 20〜30倍以上 | 大質量青色星 | 赤色超巨星・超新星爆発 | ブラックホール |
この表はあくまで大まかな目安です。質量の境界は星の組成や環境によって変わりますし、天文学の研究が進むにつれて理解が更新されてきた分野でもあります。

夜空の星はいま、どの「時代」にいるのか
こうして星の一生を知ると、夜空の見え方が少し変わります。
たとえばオリオン座の右肩に輝く赤い星・ベテルギウスは、太陽の約700倍の大きさを持つ赤色超巨星です。内部ではすでに核融合の多段階反応が進んでいると考えられており、いつ超新星爆発を起こしてもおかしくない「末期」の状態にあります。
一方、太陽はいまちょうど主系列期の中盤にいます。生まれてから約46億年が経ち、あと約50億年は同じように輝き続けると考えられています。

夜空のどの星も、今この瞬間、自分の「一生のどこか」にいます。静かに安定した主系列期を過ごす星、膨らみ始めた老年期の星、遥か彼方で爆発した後の残骸——その違いが、星の色や明るさに現れています。
今夜、夜空を見上げたとき、その光がどのステージにある星から届いているのかを少し意識してみてください。見慣れた夜空が、少しだけ違って見えるはずです。
参考文献