月面探査の最新技術とは?|月が秘めた「過去の記憶」を解き明かす新しい冒険

ふと空を見上げると、いつもそこに当たり前のように浮かんでいる月。私たちはその表面を「うさぎの餅つき」なんて呼んで親しんできましたが、実はあの静かな銀色の世界には、まだ誰も知らない「過去の記憶」が眠っているんです。

月面探査イメージ図
Image Credit: NASA

NASAが先日発表したニュースによると、アルテミス計画を支える科学探査の一環として、月へ送り込まれる新しい探査機器が選ばれたそうです。

今日は、月が隠し持っている秘密を暴くための、ちょっとワクワクする最新技術のお話をご紹介します。

目次

EMILIA-3D:月表面の「熱」を立体的に描き出す

月の表面は、どこがどれほど熱く、どこがどれほど冷えているのか。私たちはまだ、その全体像を正確には知りません。

EMILIA-3D(Emission Imager for Lunar Infrared Analysis in 3D)は、月面を広い視点から見渡し、温度の分布を「地図」として描き出そうとする観測装置です。

「熱」で描く、もうひとつの月面マップ

月には地球のような厚い大気がないため、太陽の光が当たる場所はとても熱く、影に入ると一気に冷え込んでしまいます。その温度差は、なんと200度以上!

EMILIA-3Dは、赤外線カメラ(熱を見るカメラ)と、立体的に形を捉えるステレオカメラを組み合わせて、月面の温度を「3Dの熱マップ」として描き出します。

例えるなら、「月面のサーモグラフィ地図」を作るようなものですね。 どこが熱を持ちやすく、どこが冷めやすいのか。月を覆う砂「レゴリス」がどんなふうに熱を溜め込んでいるのかを立体的に把握することで、宇宙飛行士が歩くルートを決めたり、月面基地を建てるのに最適な場所(熱的に安定した場所)を探したりするのに役立つのです。


LISTER:月の「内面」はまだ温かい?

月の内部がどれほど冷え切っているのか――

それを初めて直接確かめようとしているのが、LISTERです。

月に刺す「お料理用温度計」

みなさんは、焼きたてのパイやケーキを作るとき、中まで熱が通っているか竹串を刺して確かめたことはありませんか?

LISTERは、まさにその「月専用の大きな温度計」です。 ガスの力を精密に制御しながら、月の地面にゆっくりと穴を開け、地下数メートルまで潜り込みます。そして、月の内部からどれくらいの熱が伝わってきているのかを測るのです。

月はもう冷え切ってしまった「死んだ星」だと思われがちですが、実はまだ、内側にはかすかな熱が残っているかもしれません。この「内面の温度」を知ることで、月がどうやって生まれ、どうやって今の姿になったのかという、数十億年前の物語を読み解くことができるのです。

降り注ぐ「宇宙の雨」を読み解く:SELINE

月の地表には、大気も磁場もほとんどありません。そのため、宇宙から降り注ぐ放射線は、ほぼ直接、月面に届いています。

SELINE(Site-agnostic Energetic Lunar Ion and Neutron Environment)は、月の表面で実際にどれほどの放射線が降り注いでいるのかを測定し、将来、人が月に滞在するための安全性を評価する装置です。

見えない粒子との「追いかけっこ」

月面には、遠い銀河の彼方からやってくる「銀河宇宙線」という、とてもエネルギーの強い粒子が降り注いでいます。これは地球では大気がバリアとなって守ってくれているのですが、月ではダイレクトに地面に届いてしまいます。

SELINEの役割は、この「宇宙からの雨」が月面にぶつかったとき、どんな反応が起きるのかを詳しく調べることです。

宇宙線が月の砂(レゴリス)に当たると、まるで水たまりに石を投げたときのように、砂の中から新しい粒子(中性子など)がパシャリと跳ね返ってきます。SELINEは、この「跳ね返りのしぶき」まで含めて、月面の放射線環境を丸ごとキャッチする、いわば「超高性能な月面お天気検測所」なんです。

どこでも働ける「頼れる助っ人」

この装置の面白いところは、名前に「Site-agnostic(場所に依存しない)」とある通り、月のどこへ行っても正しく測定ができるという点です。

「ここなら安全に暮らせるかな?」「建物の壁はどれくらいの厚さが必要かな?」 そんな未来の月面基地づくりに向けた、大切な「安全基準」をSELINEが作ってくれることになります。


私たちが再び月を目指す理由

「どうして今、また月なの?」と思われるかもしれません。 アポロ計画から半世紀。私たちが再び月を目指すのは、そこが単なる「通過点」ではなく、人類が宇宙へ踏み出すための「故郷の玄関」だからです。

今回ご紹介した技術は、NASAの「CLPS(民間月面輸送サービス)」という仕組みを使って月へ運ばれます。かつては国を挙げた大プロジェクトだった月探査が、今では民間のロケットに乗って、まるでお取り寄せ便のように届けられる時代になったのです。

月の成り立ちを知ることは、私たちの地球がどうやって生まれたのかを知るヒントになります。 そして、月の過酷な環境を克服することは、いつか火星やその先へと続く長い旅の「予行練習」になるのです。


まとめ

いかがでしたか? 「最新技術」と聞くと、なんだか自分たちの生活とは遠い世界の話に聞こえるかもしれません。でも、それらはすべて「もっと遠くへ行きたい」「もっと深く知りたい」という、私たちが子供の頃から持っている素朴な好奇心の結晶なんです。

今夜、もし空に月が見えていたら、少しだけ時間を忘れて眺めてみてください。 あの静かな光の影に、性質の違うドームのような岩が隠れていて、そこに向かう新しい「探偵たち」が旅立ちの準備を進めている……。そう思うと、なんだかワクワクしてきませんか?

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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