木星には、ガリレオ・ガリレイが見つけた4つの大きな衛星があります。その中でも、真珠のように白く、表面に無数のひび割れが走っている神秘的な星が「エウロパ」です。
エウロパは、私たちの地球と同じように「海」を持つ星として知られています。ただし、その海は太陽の光が届く場所にはありません。表面がカチコチに凍りついた、巨大な「氷の殻」の下に隠されているのです。

これまで天文学者たちの間では、この氷が「薄いのか、それとも厚いのか」という議論が長く続いてきました。もし氷が薄ければ、表面の物質が海に届きやすく、生命が育まれやすいと考えられていたからです。
探査機ジュノーが測った「氷の重み」
今回、木星を周回しているNASAの探査機「ジュノー」が、エウロパをかすめるように飛行(フライバイ)した際、非常に精密なデータを持ち帰りました。
ジュノーは、重力や潮汐によるわずかな変形を精密に測定することで、中身がどうなっているかを「透視」したのです。それはまるで、箱を振った時の音や重さで、中に何が入っているかを当てる名探偵のようですね。
その結果、エウロパを覆う氷の殻の厚さは、少なくとも約20キロメートルもあることがわかりました。
20キロメートル。 数字で聞くとピンとこないかもしれませんが、世界最高峰のエベレストを2つ積み上げても、まだ足りないくらいの厚さです。私たちの住む街を縦にすっぽりと覆ってしまうほどの、とてつもなく分厚い「氷の蓋」が、エウロパの海を閉じ込めているのです。

20kmの氷は「壁」ではなく「対流する生き物」
「そんなに厚い氷に覆われていたら、下の海は窒息してしまうんじゃない?」 そう心配される方もいるかもしれません。
でも、今回の発見で面白いのは、この20キロもの厚い氷が、ただの動かない壁ではない可能性が見えてきたことです。
ゆっくりと動く「氷のコンベア」
最新の解析によると、この分厚い氷の殻は、上下でゆっくりと「入れ替わっている」可能性があるというのです。
温かいお味噌汁を器に入れたとき、中身がふわふわと動く「対流」を見たことはありませんか? エウロパの氷の殻でも、同じようなことが起きているかもしれません。
深い場所にある比較的温かい氷がゆっくりと上昇し、表面にある冷たい氷が沈んでいく。この「氷の循環」が、表面にある酸素や栄養分を、深い海の底へと運ぶ「コンベア」の役割を果たしているかもしれないのです。
生命への希望を繋ぐ「厚さ」
これまでは「氷は薄いほうが生命にとって有利だ」と考えられてきました。しかし、もしこの「厚い氷」がダイナミックに動いているのだとしたら、話は別です。
厚い氷は、宇宙から降り注ぐ有害な放射線を遮る「頑丈なシェルター」になりつつ、同時に海の底へ必要なものを届ける「運び屋」にもなっている。そう考えると、20キロという厚さは、エウロパの海に住む(かもしれない)生命を守るための、慈悲深い毛布のようにも思えてきませんか?
未来の探査機が見つめる、冷たい氷の下の温かい夢
ジュノーがもたらしたこの成果は、次の大きな冒険へのバトンとなります。
現在、NASAの「エウロパ・クリッパー」という新しい探査機が、この氷の月を目指して旅を続けています。彼がエウロパに到着したとき、今回の「20キロの氷」というデータをもとに、さらに詳しく海の状態を調べてくれるはずです。
リチウムイオン電池の技術と宇宙探査
こうした探査機を動かすのも、実は高度な蓄電技術の賜物です。極寒の木星圏で、太陽の光が弱くても、あるいは影に入っても、探査機の心臓を動かし続ける。宇宙探査の進化は、こうした「エネルギーを支える技術」の進化でもあるんですね。
まとめ:今夜、木星の輝きの向こう側を想って
いかがでしたか? エウロパの「20キロの氷」というニュース。それは単なる数字ではなく、冷たい宇宙の中で生命を守り、育もうとする「星の営み」の証なのかもしれません。
今夜、もし空が晴れていたら、南から西の空でひときわ明るく輝いている「木星」を探してみてください。 望遠鏡がなくても大丈夫。その輝きの中に、小さな、でも力強い氷の月たちが寄り添っています。

参考文献
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