夕方、西の空に一番星として輝く「宵の明星」。 あるいは、明け方の東の空に輝く「明けの明星」。
その正体は、地球のすぐ内側を回るお隣の惑星、金星です。 美の女神「ヴィーナス」の名を持ち、その美しい輝きから古くから愛されてきた星ですが、実は太陽系で最も「常識はずれ」な惑星であることをご存知でしょうか。
地球とは真逆の回転、そして1日が1年より長い不思議な時間……。 今回は、美しさの裏に隠された金星の意外な素顔に迫ります。
太陽が「西」から昇る世界
地球を含め、太陽系のほとんどの惑星は「反時計回り」に自転しています。 しかし、金星だけはなぜか「時計回り」に自転しています。
もし私たちが金星の地表に降り立って空を見上げたら、太陽は西から昇り、東へ沈んでいくことになります。 なぜ金星だけが逆向きに回っているのか、その理由はまだ完全には解明されていませんが、過去に巨大な天体が衝突して、回転の向きがひっくり返ってしまったのではないか、という説が有力です。
「1日」が「1年」より長い?
金星のもう一つの不思議は、その「回るスピード」の遅さです。 自転のスピードがあまりにも遅いため、金星では奇妙な逆転現象が起きています。
- 金星の1年(公転): 約225日(地球の日数)
- 金星の1日(自転): 約243日(地球の日数)
なんと、太陽の周りを一周して「新年」を迎えるほうが、自分が一回転して「明日」になるよりも早いのです。 一日とか、一年の概念がなくなってしまいますね。
美しいのは「外見」だけ
「ヴィーナス(美の女神)」という名前や、きらびやかな輝きとは裏腹に、金星の地表は太陽系で最も過酷な地獄です。
金星が明るく輝いて見えるのは、分厚い雲が太陽の光を反射しているからですが、この雲の正体は「濃硫酸」です。 さらに、大気の96%以上が二酸化炭素でできているため、強烈な温室効果が起きています。
その結果、気温は水星よりも高い約460℃。鉛(なまり)さえ溶けてしまう灼熱の世界です。 キラキラと輝く美しい見た目の下は、猛烈な熱と酸の嵐が吹き荒れているのです。

まとめ
- 金星は自転が逆向き。そのため「太陽は西から昇る」。
- 自転が非常に遅く、「1日」が「1年」よりも長い。
- 美しい輝きの正体は硫酸の雲。地表は460℃の灼熱地獄。
地球とよく似た大きさで「地球の双子星」とも呼ばれる金星ですが、その性格はあまりにも個性的です。 美しい夕空に輝く金星を見つけたら、「あの中身はすごいことになっているんだな」と思い出してみてください。
Image Credit: NASA

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