夜空で一番明るく輝く星、「金星」。 「宵の明星」として親しまれているこの美しい惑星ですが、実は地球と違って、自分を守る「磁場(バリア)」を持っていないことをご存知でしょうか?
太陽からの激しい風にさらされ続けている金星。 しかし、最近の研究では、そんな彼女が「将来、再び磁場を取り戻すかもしれない」という、ロマンあふれる可能性が語られています。

今日は、40億年の眠りについている「金星の心臓」のお話をしましょう。
磁場がない? 金星が「無防備」な理由
地球は巨大な磁石のようなものです。 方位磁針が北を向くのも、オーロラが輝くのも、地球が強い「磁場」というバリアを張って、太陽からの有害な粒子(太陽風)を弾き飛ばしてくれているおかげです。
しかし、地球の双子とも呼ばれる金星には、このバリアがほとんどありません。 なぜなのでしょうか?
理由:コアが対流していないから
惑星が磁場を作るには、星の中心にある「コア(核)」が、鍋のスープのようにグツグツと対流している必要があります。 これを「ダイナモ作用」と呼びます。
- 地球のコア:グツグツと対流して、電気と磁力を生み出している(元気な発電所)。
- 金星のコア:対流が弱く、シーンと静まり返っている(お休み中の発電所)。
同じような大きさ、同じような材料でできているのに、なぜ金星のコアは冷めて(あるいは対流しないで)しまったのでしょうか。

厚着をしすぎた「暑がり」な惑星
金星のコアが対流しない理由。それは、金星が「厚着をしすぎているから」だと言われています。
プレートテクトニクスという「汗」
地球は「プレートテクトニクス」といって、地面(プレート)が動いたり、火山が噴火したりして、惑星内部の熱を効率よく宇宙へ逃がしています。 人間で言えば、運動して汗をかき、体温調節をしているようなものです。 表面が冷えるからこそ、中心との温度差が生まれ、コアのスープがかき混ぜられるのです。
一方、金星にはプレートテクトニクスがないと考えられています。 分厚い岩石の地殻が、まるで「ダウンジャケット」のように星全体を覆ってしまっているのです。
熱がこもりすぎて、対流が止まる
ダウンジャケットを着込んだ金星は、内部の熱を外に逃がせません。 すると、コアの外側も内側も同じように熱々のままになってしまいます。 温度差がないと、空気も水も、そして鉄のスープも動きません。
こうして金星の発電所は、熱がこもりすぎたせいで、皮肉にもストップしてしまったのです。

「心臓が凍る」とき、彼女は目覚める
ここからが、今日の本題です。 そんな「磁場なし」の金星ですが、遥か未来、再び磁場を持つようになるという説があります。
その鍵を握るのが、「コアの結晶化(凍結)」です。
地球はすでに凍り始めている
実は、地球のコアの中心部は、少しずつ冷えて固まり始めています(インナーコアの成長)。 液体が固体になるとき、膨大な「熱」と「軽い成分」が放出されます。これが強烈なエネルギーとなって、スープをかき混ぜ、強力な磁場を維持しているのです。
金星は「まだ冷えきっていない」?
金星は厚着をして保温されているため、コアがまだ十分に冷えておらず、この「結晶化(凍結)」が始まっていない可能性があります。
しかし、さらに時間が経ち、金星内部がゆっくりと冷えていけば、いつか金星のコアも固まり始める日が来るかもしれません。 その時、中心から放出される熱が再びスープを激しくかき混ぜ、死んだと思われていた磁場が復活する可能性があるのです。
眠れる森の美女
もしそうだとすれば、金星は死んでしまった「不毛な惑星」ではありません。 ただ、布団にくるまって、心臓が動き出す(凍り始める)その時を待っている、「眠れる森の美女」なのかもしれません。
それが数億年先なのか、もっと先なのかは誰にもわかりませんが、彼女にはまだ「未来」が残されているのです。
まとめ:今夜、西の空を見上げて
金星に磁場が戻ったとしても、すぐに人間が住めるようになるわけではありません。 でも、「あの輝きの向こうで、惑星がまだ生きようとしている」と想像するだけで、いつもの一番星が少し違って見えてきませんか?
今日の帰り道、もし西の空に明るい星を見つけたら、心の中でそっと声をかけてみてください。 「おやすみ、ゆっくり休んでね」と。

参考文献
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