ナノフレアとは?|太陽コロナを100万度に温める「秘密の焚き火」の正体

私たちが寒さを感じるとき、一番に恋しくなるのはやっぱり「お日様」の光ではないでしょうか。 冬の晴れた日に、陽だまりにいるだけで感じるあの優しさ。

でも、もしみなさんに「太陽って、どこが一番熱いと思いますか?」と聞いたら、どう答えますか? 「そりゃあ、燃えている表面でしょう?」 そう思いますよね。

実は、太陽には「外側に行くと、なぜか異常に熱くなる」という、とんでもないミステリーがあるんです。 そして最近、その謎を解く鍵が、「無数の小さな焚き火」である可能性が高まってきました。

今日は、太陽がそっと隠し持っていた、心温まる(どころか熱すぎる)秘密のお話をしましょう。 読み終わる頃には、昼間の太陽がいつもより少しだけ、賑やかに見えてくるかもしれません。

目次

太陽最大のミステリー「コロナ加熱問題」

みなさんは、焚き火やストーブから離れれば離れるほど、暖かさが弱まっていくことを知っていますよね。 これは宇宙でも変わらないはずの「常識」です。

太陽の中心では核融合が起き、そのエネルギーが何段階もの過程を経て、表面まで運ばれてきます。 私たちが普段見ている太陽の表面(光球)の温度は、およそ6,000℃。 これだけでも十分熱いのですが、不思議なのはここからです。

表面からもっと上、宇宙空間に向かって広がっている薄い大気の層を「コロナ」と呼ぶのですが、なんとこのコロナの温度は100万℃以上にもなるのです。

表面が6,000℃なのに、上空に行くと100万℃。 これは例えるなら、「ストーブから離れて寒い外に出たはずなのに、なぜかそこが灼熱のサウナだった」というくらい、ありえない現象なんです。

なぜ熱源から離れるほど熱くなるのか? これは「コロナ加熱問題」と呼ばれ、半世紀以上も天文学者を悩ませてきた、太陽最大の謎のひとつでした。

太陽表面で発生した、超高温で帯電したガスの流れ込み
Image Credit: JAXA/NASA/Hinode

犯人は「小さな焚き火」? ナノフレア説

この不思議な逆転現象を説明するために、昔からあるひとつの説がささやかれていました。 それが「ナノフレア説」です。

太陽では時々、「フレア」と呼ばれる巨大な爆発が起きます。 これはニュースでも「通信障害に注意」などと報じられることがあるので、聞いたことがある方もいるかもしれません。 いわば、太陽の「大きなくしゃみ」のようなものです。

ナノフレアは、その名前の通り、通常のフレアの10億分の1という、ごくごく小さな爆発現象のこと。 あまりに小さすぎて、地球から望遠鏡で見ても確認することができませんでした。

1回のビッグバンより、無数のパチパチを

科学者たちはこう考えました。 「たまに起きる巨大な爆発(フレア)だけでは、常に100万度のコロナを維持するには足りない。 でも、もし目に見えないくらいの小さな爆発(ナノフレア)が、太陽の表面のあちこちで、常に『パチパチ』と無数に起きていたとしたら?

キャンプファイヤーを思い浮かべてみてください。 大きな薪が「ボッ!」と音を立てて爆ぜるのは、たまにしかありません。 でも、炭火からは常に小さな「パチッ、パチッ」という火花が散っていますよね。

一つ一つの火花は小さくても、それが何億、何兆個と集まれば、その熱はとてつもないものになります。 太陽の空を100万度に温めているのは、この「絶え間ない小さなおしゃべり」なのかもしれないのです。

探査機が見つけた「キャンプファイヤー」

「ナノフレアは小さすぎて見えない」。 長い間そう言われてきましたが、ついにその姿を捉えたかもしれない探査機が現れました。 欧州宇宙機関(ESA)とNASAが共同で打ち上げた太陽探査機「ソーラー・オービター(Solar Orbiter)」です。

2020年、太陽に接近したこの探査機が撮影した画像には、世界中の天文学者が息を呑みました。 そこには、太陽の表面の至るところで、チロチロと燃える小さな明るい輝きが無数に写っていたのです。

Solar Orbiter's first images reveal 'campfires' on the Sun
Image Credits: Solar Orbiter/EUI Team (ESA & NASA); CSL, IAS, MPS, PMOD/WRC, ROB, UCL/MSSL

研究チームはこの現象を、親しみを込めて「キャンプファイヤー(Campfires)」と名付けました。 なんて素敵なネーミングなんでしょう。

このキャンプファイヤーたちは、私たちが知っている巨大なフレアの百万分の一から十億分の一のサイズ。 まさに、理論上の「ナノフレア」の候補そのものです。

太陽は、ただの燃えるガス玉ではありませんでした。 その表面では、無数の小さな灯火が、まるで誰かをもてなすように、休むことなく踊り続けていたのです。 私たちが「ぽかぽかして暖かいな」と感じる陽だまりの向こう側には、こんなに賑やかな風景が広がっていたんですね。

まとめ

今度、晴れた日に太陽の光を浴びるとき(直視はしないでくださいね!)、ちょっとだけ想像してみてください。

あの眩しい光の向こう側で、数えきれないほどの「小さなキャンプファイヤー」が、パチパチと音を立てて燃えている様子を。 そう思うと、ただの「熱い星」が、なんだか一生懸命に私たちを温めてくれている、健気なストーブのように思えてきませんか?

100万度の空を作るのは、たった一つの大きな力ではなく、数えきれないほどの小さな輝きの積み重ね。 宇宙の秘密はいつだって、意外と私たちの身近な感覚と似ているのかもしれません。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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