XRISMとは?|宇宙の「熱」を聴き分ける、虹色の耳をもつ望遠鏡

「XRISM(クリズム)」という名前、なんだか響きがかっこいいですよね。これは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とNASAが協力して開発した、最新のX線天文衛星です。

XRISM外観
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab

でも、「X線」と聞くと、病院でのレントゲン撮影を思い浮かべる方が多いかもしれません。骨を透かして見る、あの不思議な光です。実は、宇宙からやってくるX線を調べることは、宇宙の「健康診断」をするのと少し似ているんですよ。

目次

目には見えない「激しい宇宙」を映し出す

私たちが夜空に見る星たちは、穏やかに瞬いているように見えます。でも、X線の目で見ると、その景色は一変します。

数千万度という、想像もつかないような超高温のガスが渦巻いていたり、巨大なブラックホールが猛烈な勢いで物質を飲み込んでいたりと、そこには「静寂」とは真逆の、ダイナミックで激しい世界が広がっているのです。

XRISMは、そんな目には見えない「宇宙の叫び」を、誰よりも精密に聞き取るために生まれました。


宇宙専用の「究極の温度計」Resolveの凄さ

XRISM/resolveに搭載されているカロリー計。装置に統合される前の格納容器に写っている写真
Image Credit: NASA/GSFC

XRISMがこれまでの望遠鏡と決定的に違うのは、その心臓部に積まれた「Resolve(リゾルブ)」という観測装置にあります。

私はこの装置のことを、ひそかに「宇宙一わがままな温度計」と呼んでいます。なぜなら、この温度計は、自分自身が「絶対零度(マイナス273.15度)」に近い極限の冷たさの中にいないと、ちゃんと働いてくれないからです。

蝶の羽の重さの変化すら見逃さない

Resolveの仕組みを例えるなら、「10メートル先の焚き火に、小さな雪の粒がひとつ飛び込んだ時の温度変化」さえも見逃さないほど、究極に繊細です。

宇宙から飛んでくるX線の粒(光子)が装置に当たったとき、ほんの、ほんのわずかだけ温度が上がります。その「熱の波」を、これまでの望遠鏡の何十倍という細かさで分析するのです。

これによって、宇宙に漂うガスが「どれくらいの温度か」だけでなく、「どんな成分でできているか」「どのくらいの速さで動いているか」まで、まるで虹の七色を分けるように、細かく聴き分けることができるようになりました。


XRISMが解き明かす、星たちの「輪廻転生」

Image Credit: NASA

では、この究極の温度計を使って、私たちは何を知ろうとしているのでしょうか。 それは、私たち自身の「ルーツ」にも関わる、壮大な物語です。

宇宙の「風」を観る

宇宙には、かつて大きな星が爆発して飛び散った「星の欠片(かす)」が漂っています。この欠片こそが、巡り巡って次の星の材料になり、巡り巡って私たちの体を作るカルシウムや鉄になります。

XRISMは、その「星の欠片」が宇宙の中をどのように流れているのか、その「風」の動きを捉えることができます。

ブラックホールの周りで熱せられたガスが、どのように宇宙へ吹き出しているのか。 銀河と銀河がぶつかったとき、その隙間にあるガスはどれほど熱せられるのか。

これらは、普通の望遠鏡では「ぼんやりとした光の塊」にしか見えませんでしたが、XRISMの手にかかれば、そのガスの「流れ」が手に取るようにわかるのです。


まとめ:今夜、熱い宇宙に想いを馳せて

XRISMが見つめているのは、私たちの目には届かない、激しくも美しい「熱い宇宙」の姿です。

私たちが住むこの穏やかな地球も、かつてはXRISMが捉えるような激しいドラマの中で生まれた「星の欠片」からできています。そう思うと、遠く離れた数千万度のガスさえも、なんだか少しだけ愛おしく感じられませんか?

今夜、もし空が晴れていたら、温かい飲み物を片手に少しだけ外へ出てみてください。 そして、暗闇の向こう側で、目には見えない光が激しく踊り、新しい宇宙の歴史が刻まれている様子を想像してみてください。

XRISMが届けてくれる新しい「宇宙の音」に、これからも耳を澄ませていきたいですね。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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