今夜は「冥王星(めいおうせい)」のお話をしましょう。 かつては「水金地火木土天海……冥!」と、太陽系の最後を締めくくっていたあの星です。 2006年に惑星のリストから外されてしまったとき、「どうして仲間外れにするんだ」と、ちょっとセンチメンタルな気持ちになった方も多いのではないでしょうか。
実はあの日、冥王星は「降格」させられたというより、むしろ**「新しい世界の王様」**になったとも言えるんです。
きっかけは「弟分」たちの発見

冥王星が惑星でいられなくなった最大の理由。 それは、冥王星が変わってしまったからではありません。 **「冥王星に似た友達が、あまりにもたくさん見つかりすぎたから」**なんです。
科学技術の進歩とは残酷なもので、冥王星の外側に、同じような大きさの天体(エリスなど)が次々と見つかってしまいました。
もし、冥王星をそのまま「惑星」と呼ぶのなら、新しく見つかった彼らも全員「惑星」と呼ばなければならなくなります。 そうなると、学校の理科の授業はどうなると思いますか?
「水金地火木土天海冥……エリス、マケマケ、ハウメア……えっと、あと20個くらい覚えないと!」
……なんてことになりかねません。テスト前の学生たちが暴動を起こしてしまいます。 だから天文学者たちは、涙を呑んで「惑星」の定義をしっかり決め直すことにしたのです。
惑星になれなかった「たったひとつの理由」

Sun: 太陽 / Mercury: 水星 / Venus: 金星 / Earth: 地球 / Mars: 火星 / Jupiter: 木星 / Saturn: 土星 / Uranus: 天王星 / Neptune: 海王星 / Pluto: 冥王星
国際天文学連合が決めた「惑星の条件」は3つありました。
- 太陽の周りを回っていること(これはOK)
- 十分な重さがあって、丸いこと(これもギリギリOK)
- 自分の軌道の近くに、他の天体がいないこと(……これがダメでした)
地球や木星といった主要な惑星は、その圧倒的な重力で、自分の通り道にある他の岩石やチリを弾き飛ばしたり、取り込んだりして「掃除」を完了させています。 いわば、惑星とは「自分の部屋(軌道)をきれいに片付けられる優等生」なんです。
しかし、冥王星の周りはまだ、氷や岩石がたくさん散らばっています。 冥王星は、まだ自分の通り道を独り占めできていなかったんですね。
彼は「準惑星」の王として
こうして冥王星は「惑星」の座を降りました。 でも、私は思うんです。 大きな惑星たちの末席で「一番小さな惑星」として肩身の狭い思いをするよりも、新しく作られた**「準惑星(ドワーフ・プラネット)」**というグループの筆頭、つまりリーダーとして君臨するほうが、彼らしいのではないかと。
太陽から遥か彼方、暗く冷たい場所で、無数の氷の天体たちを従える王様。 「冥王(Pluto)」という名前に、よりふさわしい貫禄が出たと思いませんか?
冥王星が何と呼ばれようと、夜空の向こうで彼が輝いていることに変わりはありません。 人間が勝手につけた肩書きなんて気にせず、今日もマイペースに回っていることでしょう。
それでは、また気が向いたらいらしてください。 おやすみなさい。
Image Credit: NASA

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