星空を見上げると、心が落ち着くような穏やかな景色が広がっているかもしれません。 私たちは普段、この「静かで平和な宇宙」を見て癒やされていますよね。
でも、もし私たちの目が「X線」を見ることができたら。 今見上げているその夜空は、まったく別の恐ろしい姿に変わってしまうかもしれません。
そこにあるのは、超高温のガスが渦を巻いていたりする、とてつもなく「騒がしい」世界です。
今日は、そんな宇宙の裏の顔を暴き出す探偵、NASAの「チャンドラX線観測衛星」のお話をしましょう。 静かな夜空の向こう側で起きている、激しいドラマの世界へご案内します。
「見えない光」が見せる、宇宙のレントゲン写真
みなさんは健康診断でレントゲンを撮ったことはありますか? 普通のカメラで撮ると「肌」が写りますが、レントゲン(X線)で撮ると、その奥にある「骨」や、時には病気の巣が写りますよね。
宇宙もこれとまったく同じなんです。
私たちが普段、肉眼や普通の望遠鏡で見ている「可視光(目に見える光)」は、星の表面の、比較的穏やかな光です。温度でいうと、数千度から数万度くらいの「優しい」光。
しかし、宇宙にはもっと桁違いに熱い場所があります。 数百万度、数千万度というとんでもない超高温の世界や、星が爆発した瞬間の衝撃波。そういった場所からは、可視光ではなく、強烈なエネルギーを持った「X線」が出ています。
つまり、X線で宇宙を見るということは、「宇宙の激しい部分だけを透かして見る」ということなのです。
チャンドラX線観測衛星とは?

そんな「宇宙のレントゲン写真」を撮るために、1999年にNASAが打ち上げたのが「チャンドラX線観測衛星」です。
なぜ宇宙に行く必要があるの?
「地上から撮ればいいじゃない」と思うかもしれません。 でも、実は地球の大気は、宇宙から来るX線をブロックしてくれています。これは私たち生命にとっては「守られている」ということで非常にありがたいのですが、天文学者にとっては「邪魔なカーテン」なんです。
だから、X線を見る望遠鏡は、大気の外側、つまり宇宙に行く必要があります。
宇宙一、視力がいい「目」
チャンドラは、これまでのX線望遠鏡の中で、もっとも「目が良い(解像度が高い)」ことで知られています。 その視力は、なんと「3キロメートル先にある新聞の文字が読める」ほど。
この驚異的な視力のおかげで、遠く離れた銀河の中心で何が起きているのか、まるでその場にいるかのように詳しく見ることができるようになったのです。
穏やかな夜空の裏側にある「暴力」
では、チャンドラの「超視力」は、どんな世界を写し出したのでしょうか? そこには、私たちの想像を超える「暴力的な宇宙」が広がっていました。
ブラックホール:宇宙の「悲鳴」を聞く
ブラックホール自体は光を出さないので、真っ黒で見えません。 でも、ブラックホールに吸い込まれそうになっているガスは、猛スピードで回転しながら擦れ合い、摩擦熱で数千万度になり、強烈なX線を出します。
チャンドラが見ているのは、ブラックホールという「怪物」そのものではなく、怪物に飲み込まれる直前のガスが上げている「断末魔の叫び」のような光なのかもしれません。

超新星残骸:星の「交通事故」のあと
チャンドラが撮影した「カシオペヤ座A」という超新星残骸の写真を見たことがありますか? そこには、赤や青、緑に彩られた、美しくも複雑な雲のような模様が広がっています。

これは、約340年前に星が爆発したときの「残骸」です。 爆発の衝撃波が周囲のガスを加熱し続け、今この瞬間も数百万度という高温で輝いています。可視光では淡くしか見えないこの場所も、X線の目で見れば、まるで昨夜起きた事件現場のように生々しく、エネルギーに満ちあふれているのです。
星が壊れるという「暴力的な」出来事が、これほどまでに美しい光景を作り出す。宇宙の不思議を感じずにはいられません。
まとめ:静寂と激動のコントラストを楽しもう
いかがでしたか?
今夜、ベランダに出て星を見上げるとき、思い出してみてください。 あなたの目には、静かで優しい星空が映っているはずです。
でも、その静寂の裏側では、目に見えないX線の世界で、星々が叫び、爆発し、激しくぶつかり合っています。 そんな「動」と「静」が同時に存在していることこそが、宇宙の奥深さなのかもしれません。
参考文献

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