夜空に輝く恒星の周りにも、地球や木星のような惑星が回っているのでしょうか。この疑問に対する答えは、現在では明確に「イエス」です。太陽系以外の恒星を周回する惑星を「系外惑星(太陽系外惑星)」と呼びます。
しかし、夜空を見上げても系外惑星そのものは見えません。たとえ巨大な望遠鏡を使っても、惑星を直接撮影できるケースは極めて稀です。なぜなら、恒星が放つ光に対して、惑星が反射する光は圧倒的に暗いからです。その明るさの差は、10億倍以上に達することもあります。これは、数キロメートル先にある強力なサーチライトのすぐ横を飛ぶ、ホタルを見つけようとするようなものです。

では、見えないものを天文学者たちはどのようにして「発見」し、その質量や大きさを割り出しているのでしょうか。そこには、光の性質と重力の法則を利用した、物理的な観測手法が存在します。
系外惑星を見つける2つの方法|トランジット法と視線速度法
直接見えなくても、惑星が存在することで「中心の恒星」には微小な変化が起きます。私たちが観測しているのは惑星そのものではなく、惑星によって引き起こされる恒星の物理的な変化なのです。代表的な2つの手法を見ていきます。
トランジット法:光量のわずかな低下を測る

1つ目は「トランジット法」と呼ばれる手法です。惑星が恒星の前を横切る(トランジットする)際、恒星の光が惑星の面積分だけ遮られ、わずかに暗くなる現象を利用します。
ここで重要なのは、その「減光のスケール」です。例えば、太陽と同じ大きさの恒星の前を、木星と同じ大きさの巨大ガス惑星が横切った場合、恒星の明るさは約1%低下します。もし地球と同じ大きさの岩石惑星だった場合、その減光はわずか約0.01%(1万分の1)にすぎません。
この極めて微小な光の低下を長期間にわたって精密に測定し、周期的な減光が確認されれば、そこに惑星が存在する強力な証拠となります。減光の割合からは惑星の「大きさ(半径)」が、減光の周期からは惑星の「公転周期(恒星からの距離)」が導き出されるのです。

視線速度法:ドップラー偏移による恒星の「揺れ」を測る

2つ目は「視線速度法(ドップラーシフト法)」です。惑星は恒星の重力に引かれて公転していますが、同時に恒星も惑星の重力に引かれています。そのため、厳密には「恒星が静止していて惑星が回っている」のではなく、「共通の重心の周りを、恒星と惑星の双方が回っている」状態になるのです。
これにより、恒星は周期的にわずかに揺れ動く。この揺れを捉えるのが「ドップラー効果」という物理法則です。救急車のサイレンが近づくときは音が高く(波長が短く)なり、遠ざかるときは音が低く(波長が長く)なるのと同じ現象が、光でも起きます。
恒星が地球に向かって動くとき、その光の波長はわずかに短く(青っぽく)なり、これを青方偏移と呼びます。逆に地球から遠ざかるように動くときは波長が長く(赤っぽく)なり、赤方偏移と呼びます。
この「ドップラー偏移」による波長の変化から、恒星の視線方向の速度変化を計算します。例えば、木星の重力によって太陽が揺れる速度は、秒速約12メートル程度です。これは人間が自転車で走るのと同程度の速度であり、天文学者は星の光からそのスケールの微細な速度変化を読み取っています。この速度変化の幅から、惑星の「最小質量(軌道傾斜角に依存)」が計算できます。トランジット観測と組み合わせることで、真の質量が決定されます。

私たちが観測しているものの正体
トランジット法では惑星の「大きさ」がわかり、視線速度法では惑星の「質量」がわかります。この2つのデータを組み合わせることで、惑星の「密度」が導き出されます。密度がわかれば、それが地球のような岩石の塊なのか、木星のようなガスの塊なのか、あるいは氷で覆われた惑星なのかといった、おおよその内部構造を推定できるのです。
私たちが系外惑星について語るとき、それは決して直接見て形を確認したわけではない。光の減光率(0.01%の世界)や、光の波長のズレ(秒速数mの揺れ)という数値データから、物理法則を逆算してその姿を立ち上がらせています。
構造のまとめ
系外惑星の発見とは、暗い星を高性能なカメラで直接写し出すことではありません。 圧倒的な光を放つ恒星に生じる、周期的な「減光(トランジット)」と「波長のズレ(ドップラー偏移)」という物理現象を観測し、重力と光の法則を用いて見えない天体の質量と大きさを計算するプロセスなのです
だから、系外惑星の探査は、「恒星の微小な変化を物理法則で解読するという構造」で説明できるのです。夜空に瞬く星の光には、目に見えない惑星たちの重力の痕跡が確かに刻まれています。今夜、明るく輝く恒星を見つけたとき、その光が届くまでに経験したわずかな揺れや減衰に思考を巡らせてみてください。
参考文献
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