KAGRAやLIGOといった「巨大な実験施設」は、よくニュースでも話題になります。 彼らは「重力波望遠鏡」と呼ばれています。
でも、そもそも「重力波(じゅうりょくは)」って何でしょうか? 光なの? 電波なの? それとも音?
正解は、「空間そのものの揺れ」です。 今日は、100年前にアインシュタインが予言し、最近やっと人類が見つけた、宇宙の新しい「感じ方」についてお話しします。
宇宙は「トランポリン」
重力波を理解するには、まず「重力」の正体を知る必要があります。 アインシュタインが出てくるので難しそうですが、イメージは「トランポリン」です。
- ピンと張ったトランポリン(宇宙空間)があります。
- そこに、重たいボウリングの玉(太陽やブラックホール)を置きます。
- すると、ゴムのシートが沈み込んで「凹み」ができますね。
この「空間の凹み」こそが、重力の正体です。
※実際には「時間」も含めた時空が曲がっていますが、ここではイメージしやすく空間で説明しています。
近くを通ったビー玉(地球)が、その凹みに沿ってクルクル回る。これが「重力で引っ張られている」状態です。
さざ波が広がる

では、このボウリングの玉が、激しく動き回ったらどうなるでしょう? 例えば、2つのブラックホールがお互いの周りをグルグル回ったり、ドカンと衝突したりするとき。
トランポリンのゴムシートは、激しく波打ちますよね。 その「波」が、光の速さで宇宙の彼方まで広がっていく。 これが「重力波」です。
池に石を投げると波紋が広がるように、宇宙で重たいものが動くと、空間そのものが「さざ波」のように揺れて、地球まで届くのです。
宇宙はめちゃくちゃ「硬い」
「空間が揺れるなら、私たちの体も伸び縮みしているの?」 その通りです。重力波が地球を通過する瞬間、あなたの身長はほんの少し伸びたり縮んだりしています。
空間が歪む」というと、多くの人は柔らかいゴムやゼリーのようなものを想像します。 しかし、物理学的に計算すると、時空(宇宙空間)はこの世のあらゆる物質よりも圧倒的にカチカチに硬いのです。物理量として単純に比べられるわけではありませんが、「とてつもなく変形しにくい」という意味では「硬い」です。
時空を物質に例えるなら、プヨプヨのゼリーではありません。 ダイヤモンドよりも、鋼鉄よりも、遥かに「剛性(ヤング率)」が高い物質です。 ブラックホール同士が衝突するという、宇宙最大級のエネルギー衝撃が起きても、地球に届く頃には、空間は「原子1個分」も歪みません。
だからアインシュタインは言いました。 「時空は硬すぎるから、人間がその揺れを観測するのは無理だよ」 この「硬すぎる時空」の微かな揺れを意地でも測ろうとしたのが、3kmや4kmの巨大な腕を持つKAGRAやLIGOなのです。
なぜ「音」に例えられるのか?
重力波のニュースでは、よく「宇宙の音を聞く」という表現が使われます。 これは比喩ですが、とても的確です。
- 光(目): 星の表面しか見えない。途中に雲やガスがあると遮られる。
- 重力波(耳): 何でも通り抜ける。星の「重さ」や「動き」そのものが伝わってくる。
特に、ブラックホールが合体する直前、お互いの回転スピードがどんどん速くなっていきます。 すると、重力波の周波数もギュンギュン上がっていきます。 これをデータ化してスピーカーで再生すると、「ヒュンッ!(チャープ信号)」という鳥のさえずりのような音がします。
私たちは、この「ヒュンッ」という音の高さや長さから、「あ、太陽の30倍の重さのブラックホールだな」と、相手の正体を詳しく知ることができるのです。
ガリレオ以来の革命
400年前、ガリレオ・ガリレイは望遠鏡で夜空を見て、「光の天文学」を始めました。 そして今、私たちは重力波望遠鏡を手に入れ、「重力の天文学」を始めました。
それは、人類が初めて「視覚」以外の感覚で宇宙を感じ取れるようになった、歴史的な瞬間です。 目には見えないけれど、確かにそこにある「時空の震え」。 KAGRAやLIGOの記事を読むときは、ぜひこの「硬い空間が震えている様子」を想像してみてください。
世界で初めて測定に成功したのが米国のLIGOです。

場所の特定に大きく寄与したのが欧州のVIRGOです。

重力波を日本で測るのがKAGRAです。

参考文献
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