夜空を見上げると、無数の星が輝いています。近年、あの光の点の周りには、「系外惑星」が数多く発見されており、地球と同じように惑星が回っていることがわかってきました。

では、その中に地球のような「海」を持つ星はあるのでしょうか。
地球外に生命が存在するかもしれないと考えるとき、天文学者たちが最も重要視する条件があります。それは、宇宙空間で「水が液体で存在できること」です。この条件を満たす特別な領域のことを、天文学では「ハビタブルゾーン」と呼んでいます。
ハビタブルゾーンとは?|熱すぎず、冷たすぎない領域

ハビタブルゾーン(Habitable Zone)とは、自ら光り輝く星(恒星)の周りで、「水が液体の状態で存在できる範囲」のことです。別名「生命居住可能領域」とも呼ばれます。地球外生命を探すうえで重要な指標となっています。

宇宙の温度環境は非常に過酷です。中心にある星に近すぎると、熱すぎて水はすべて水蒸気になって宇宙空間へ逃げてしまいます。逆に遠すぎると、冷たすぎて水はすべてカチカチの氷になってしまいます。
つまり、水が気体でも固体でもなく「液体」のままでいられるのは、星からある一定の距離の範囲だけなのです。ただし実際には、大気や温室効果などの条件も大きく影響します
冬の日のストーブと同じ仕組み
これは、寒い冬の日にストーブにあたるのと同じ仕組みです。
ストーブ(恒星)のすぐ目の前にいると、熱すぎて火傷してしまいますよね。逆に部屋の一番遠い隅っこにいると、寒くて凍えてしまいます。 熱すぎず、寒すぎず、ちょうどぽかぽかと暖かく過ごせる場所。それが、宇宙におけるハビタブルゾーンという領域です。
実は「距離」だけでは海はできない
「なるほど、じゃあハビタブルゾーンにあれば海ができるんだね」と思うかもしれません。しかし、実はもうひとつ重要な条件があります。
夜空に浮かぶ「月」を思い浮かべてみてください。月は地球のすぐそばを回っているので、太陽からの距離は地球とほぼ同じです。つまり、月もハビタブルゾーンの中にあります。それなのに、月には一滴の海もありません。
なぜ地球には海があり、月にはないのか。その決定的な違いは「大気」です。そしてその大気を維持できるかどうかは、惑星の重力(大きさ)にも左右されます。
ストーブ(太陽)からちょうどいい距離にいても、何も守るものがなければ熱がすぐに逃げてしまったり、直接当たる熱で肌が焦げてしまったりします。暖かさを一定に保つには、「ちょうどいい服や毛布」が必要です。 地球にとっての大気は、太陽の熱を逃がさず、かつ熱すぎる日差しから守ってくれる「毛布」の役割を果たしています。月にはこの毛布がないため、昼は100度を超え、夜はマイナス150度以下という極端な温度になり、水が液体のままとどまることができないのです。

太陽系のハビタブルゾーンを見てみよう
私たちの太陽系を例に見てみましょう。 太陽系には、地球のすぐ内側に「金星」が、すぐ外側に「火星」が回っています。
太陽に近すぎる金星は、表面の温度が400度を超え、水はほとんど失われたと考えられています。 一方、太陽から遠い火星は、平均気温がマイナス60度にもなり、水は地下で凍りついていると考えられています。かつては川や湖があった痕跡も見つかっています。


そして、私たちの地球。地球は太陽から約1億5000万kmという「奇跡的なくらいちょうどいい距離」にあります。まさにハビタブルゾーンの中でも条件の整った位置にあるため、海は液体のまま保たれ、私たちが生きることができているのです。

星空を見る視点|あの光の向こうにあるかもしれない海
宇宙には、太陽より熱く大きな星もあれば、暗くて小さな星もあります。ストーブの大きさが変われば暖まれる距離が変わるように、小さな星ならハビタブルゾーンは星のすぐ近くに、大きな星ならずっと遠くに広がります。
今夜、夜空の星を見上げるときは、ただの無機質な光の点として見るのではなく、こう想像してみてください。 「あの星の周りの『ちょうどいい距離』には、地球のような青い海を持つ星が隠れているかもしれない」と。
星の周りにある目に見えない「ちょうどいい領域」の仕組みを知るだけで、冷たい宇宙が少しだけ温かく、生命の可能性に満ちた場所に感じられるはずです。
参考文献
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