夜空を見上げると、ひときわ明るく、王者の貫禄を放って輝く星があります。 太陽系最大の惑星、木星です。
その大きさは地球の約11倍、質量はなんと318倍。 ローマ神話の主神「ジュピター(ゼウス)」の名を持つこの巨人は、ただ大きいだけではありません。

実は、この木星がいなければ、私たち人類は地球に存在していなかったかもしれない……という説があるのをご存知でしょうか?
今日は、嵐吹き荒れるガスの巨星が、密かに地球を守ってくれている「頼もしい役割」についてお話しします。
300年以上消えない「台風」の目
木星の写真を見ると、表面に巨大な「赤い目玉」のような模様があるのが分かります。 これは「大赤斑(だいせきはん)」と呼ばれるもので、実は巨大な台風の渦です。
この「目玉」の大きさだけで、なんと地球がすっぽり2〜3個も入ってしまうほど。 しかも、観測が始まってから300年以上もの間、消えることなく吹き荒れ続けているのです。
時速数百キロという猛烈な暴風が吹き荒れる、恐怖の世界。 もし近くに行けばひとたまりもありませんが、実はこの「恐ろしいほどの重力と大きさ」こそが、私たちにとっての救いになっているのです。
地球への攻撃を防ぐ「掃除機」
太陽系には、惑星になりきれなかった無数の岩石や氷(小惑星や彗星)が漂っています。 これらが地球に衝突すれば、恐竜が絶滅したときのような大惨事になりかねません。
しかし、太陽系には木星がいます。 木星はその桁外れに強い重力を使って、地球の方へ飛んできそうな小惑星や彗星を、自分のほうへグイッと引き寄せてしまうのです。
まるで巨大な掃除機のように、危険な天体を吸い込んだり、あるいは太陽系の外へ弾き飛ばしたりしてくれています。 これを「木星の盾(シールド)」説と呼びます。
1994年の衝撃

この「盾」の役割を、人類が目の当たりにした出来事がありました。 1994年、「シューメーカー・レヴィ第9彗星」という彗星が木星に衝突したのです。
彗星は木星の重力でバラバラに引き裂かれ、次々と木星の表面に突っ込みました。 そのときにできた衝突の痕(キズ)ひとつでさえ、地球サイズに匹敵する大きさでした。もしあれが地球に落ちていたらと思うと、ゾッとしますね。
木星は自らの身を挺して、危険な天体を受け止めてくれているのです。
まとめ
- 木星にある「大赤斑」は、地球がまるごと入るサイズの巨大な台風。
- 木星の強大な重力は、地球に向かう小惑星や彗星を引き寄せる「掃除機」の役割を果たしている。
- 「木星の盾」のおかげで、地球への天体衝突が減り、生命が育つ環境が守られた可能性がある。
夜空に輝く木星を見つけたら、その「大きさ」だけでなく、「優しさ」にも思いを馳せてみてください。 無口なボディガードが、今夜も遠くで私たちを見守ってくれているのかもしれません。
Image Credit: NASA

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