太陽系で最も内側を回り、太陽に一番近い惑星、水星。 地球から見ると、いつも太陽のすぐそばにいるため、まぶしくてなかなか姿を見せてくれない恥ずかしがりな星です。
そんな水星について、ふとこんな心配をしたことはありませんか? 「あんなに太陽に近くて、重力に吸い込まれてしまわないの?」と。
実は水星は、太陽に飲み込まれないために、とんでもないスピードで宇宙を駆け抜けている「太陽系のスピードスター」なのです。 今夜は、太陽との危険な鬼ごっこを続ける小さな惑星のお話です。
落ちない理由は「速さ」にある
水星が太陽に衝突せずに済んでいる理由、それはシンプルに「猛烈に速く走っているから」です。
もし水星が立ち止まったら、一瞬で太陽の重力に負けて落下し、飲み込まれてしまうでしょう。 そうならないために、水星は時速約17万キロという猛スピードで公転しています。これは地球の公転スピードの約1.6倍。新幹線なら1秒で東京から大阪の先まで行ける速さです。
遠心力で外に飛び出そうとする力と、太陽が引き寄せる重力が、この猛スピードのおかげでギリギリ釣り合っているのです。 水星は、落ちないために必死で走り続けているランナーのような存在なんですね。カイジのような世界観でもあります。
近いのに、金星より涼しい?
「太陽に一番近いなら、一番熱いんでしょ?」と思われがちですが、実はこれも違います。 前回の記事でご紹介した金星(約460℃)のほうが、水星よりも熱いのです。
水星には大気がほとんどないため、太陽の熱を保温しておく布団(温室効果)がありません。 そのため、太陽が当たる昼間は約430℃と灼熱ですが、夜になると熱がすべて宇宙へ逃げてしまい、マイナス170℃まで冷え込みます。
昼は鉛が溶けるほど熱く、夜はあらゆるものが凍りつく。 この寒暖差の激しさは、太陽系でもトップクラスです。
まさに今、日本の探査機が到着!

そして今、この水星が熱い注目を集めています。 日本(JAXA)とヨーロッパが共同で送り出した水星探査機「ベピ・コロンボ(みお)」のことです。
2018年に地球を出発したこの探査機は、7年もの長い旅を経て、2025年の12月(まさに今月!)、ついに水星の周回軌道に到着するクライマックスを迎えています。
水星はこれまで、太陽に近すぎて観測が難しく、「謎の多い惑星」でした。 日本の「みお」が、この過酷な環境でどんな新しい発見をしてくれるのか。水星の本当の素顔が見られるのは、これからが本番です。
まとめ
- 水星は太陽に落ちないよう、時速17万キロの猛スピードで公転している。
- 大気がないため、昼は430℃、夜はマイナス170℃と温度差が激しい。
- 2025年12月、日本の探査機「みお」が水星観測の舞台にいよいよ到着する。
太陽という巨大なボスのすぐそばで、焼かれ、凍えながらも、必死に走り続けている小さな水星。 そう思うと、なんだか応援したくなってきませんか?
Image Credit: NASA

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