不動の星の「嘘」
『北極星は動かない』。これは天体観測の常識です。でも、もし『北極星も動いている』と言ったら、驚かれるでしょうか?
私たちの一生という短い時間では止まって見えますが、数千年、数万年という宇宙の規模で見ると、北極星の座は『持ち回り(交代制)』なのです。
地球は首を振るコマ
なぜ北極星が変わるのでしょうか。それは地球が『止まりかけのコマ』のように首を振って回っているからです。
勢いのなくなったコマは、軸がふらふらと円を描きますよね。地球も同じように、約2万6000年かけてゆっくりと首を振っています。 そのため、地軸の北側(北極点)が指す方向も、少しずつズレていくのです。
先代の王:りゅう座「トゥバン」
今から約5000年前。エジプトでピラミッドが作られていた頃、ポラリスは北極星ではありませんでした。
その時、北の空の頂点にいたのは、りゅう座の『トゥバン』という星です。 古代エジプトの人々は、このトゥバンを『不動の星』として崇め、ピラミッドの通気孔をこの星に向けて設計したと言われています。
次期女王:こと座「ベガ」
では、未来はどうなるでしょうか。 今のポラリスはどんどん真北に近づいています。西暦2100年頃にもっとも近づくことになります。しかし、そこから少しずつ離れていきます。いまがキャリアのピークなのですね。約70年後、ポラリスのキャリアピークを私たちは見ることができるのでしょうか。わたしは老眼で見えないかもしれません。
そして約1万2000年後。新しい北極星として君臨するのは、あの七夕の織姫星、こと座の『ベガ』です。
ベガは、今のポラリス(2等星)よりもずっと明るい0等星。もし私たちがその時代に生きていたら、夜空は今よりもっと煌びやかで、迷子になることも少なかったかもしれませんね。うらやましいです。
ポラリスの秘密
ちなみに、今の北極星(ポラリス)にも面白い秘密があります。 肉眼では一つの星に見えますが、望遠鏡で詳しく調べると、実は3つの星が連なっている『三重連星』なのです。 一人でじっと北の空を支えているように見えて、実は仲良く手を取り合っているんですね。
まとめ
『変わらないものなんてない』。 夜空の道しるべでさえ、長い旅の途中なのです。そう思うと、今夜見上げるポラリスが、限られた『任期』を全うしようと輝く、愛おしい存在に見えてきませんか?
そんな北極星の見つけ方は、この記事で紹介しています。

Image Credit: NASA

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