系外惑星を見つけるトランジット法とは?|星の前を横切る「影」から読み解く、遠い世界の物語

夜空を見上げてふと考えたことはありませんか? 「あの輝く星の隣にも、私たちのような誰かが住んでいる惑星があるのかな」と。

実は今、天文学の世界では、太陽系以外の惑星——「系外惑星(けいがいわくせい)」の発見ラッシュが続いています。その数はなんと5,000個以上。 でも、不思議だと思いませんか? 何百光年も離れた星の隣にある、小さくて暗い惑星を、どうやって見つけているのでしょうか。

今日は、そんな系外惑星を見つけるための魔法のような方法、「トランジット法」についてお話しします。 それは、星からの「光」ではなく、星を隠す「影」を読む、とても繊細な方法なんです。

系外惑星が恒星の前を横切るイメージ図
Image Credit: ESA/Hubble, NASA, M. Kornmesser
目次

宇宙で行われている「影の観測」

「何百光年も先の惑星を見つける」なんて聞くと、とてつもなく高性能な望遠鏡で、その惑星の姿をズームアップして撮影している……と想像するかもしれません。 もちろん、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡のようなすごい技術もありますが、実は多くの惑星は「直接見る」のではなく「間接的に気付く」ことで発見されています。

その代表的な方法が、今回ご紹介する「トランジット法」です。

仕組みはとてもシンプル。遠くにある明るい電灯(恒星)の前を、小さな虫(惑星)が横切ったとします。すると、ほんの一瞬だけ、電灯の光が遮られて暗くなりますよね。

宇宙でもこれと同じことが起きています。 遠くの恒星の手前を、その周りを回る惑星が横切る(トランジットする)とき、恒星の明るさがごくわずかにダウンします。 この「明るさの変化」を捉えることで、「あ!今、何かが前を通ったぞ!」と惑星の存在を見つけるのです。

トランジット法の光量変化図解
Image Credit: NASA, ESA, CSA, Dani Player (STScI), Andi James (STScI), Gregory Bacon (STScI)

ただ、これは口で言うほど簡単なことではありません。 恒星は巨大でギラギラと輝いていますが、惑星はとても小さくて真っ暗です。 そんな神業のような観測を、天文学者たちはやってのけているのです。

わずかな「暗くなり方」でわかること

「影」を見るだけで、一体何がわかるのでしょうか? 実は、この影は情報の宝庫。ただ「そこにいる」だけでなく、その惑星がどんな姿をしているのかまで教えてくれるのです。

惑星の大きさがわかる

まずわかるのは、その惑星の「大きさ」です。 仕組みは単純です。 もし、電灯の前を横切ったのが「ハエ」なら光は少ししか隠れませんが、「バスケットボール」なら光は大きく隠れますよね。

  • 光がほんの少し暗くなった = 小さな惑星(地球サイズかも?)
  • 光がガクンと暗くなった = 巨大な惑星(木星サイズかも?)

このように、光がどれくらい減ったか(減光率)を調べることで、その惑星の直径を推測できるのです。

1年の長さがわかる

次にわかるのが、その惑星の「1年の長さ(公転周期)」です。 惑星は恒星の周りをぐるぐると回っています。つまり、一度影が見えたら、しばらくしてまた同じ影がやってくるはずです。

  • 頻繁に影ができる = 星のすぐ近くを猛スピードで回っている(1年が数日しかない灼熱の世界)
  • 忘れた頃に影ができる = 星から離れたところをゆっくり回っている(冷たい世界、あるいは地球のように穏やかな世界?)

この周期を測ることで、その惑星が恒星からどれくらい離れているか、そして「暑そうか、寒そうか」といった環境まで想像できるようになります。

空気の成分までわかる?

そして、ここからが最新技術のすごいところ。 トランジット法を使えば、なんと「その惑星にどんな大気があるか」まで調べることができるのです。

惑星が恒星の前を横切るとき、恒星の光の一部は、惑星の「大気の層」を通り抜けて地球に届きます。 このとき、大気に含まれる成分(水蒸気や二酸化炭素など)によって、光の特定の色が吸収されます。 例えるなら、「白いライトの光を、色のついたガラス越しに見る」ようなもの。通ってきた光の色を見れば、ガラスの素材が推測できますよね。

これを「透過分光(とうかぶんこう)」と呼びます。 「この惑星の影には、水蒸気のサインが混ざっている!ということは、海があるかもしれない!」 そんな風に、影に含まれた光の成分を分析することで、私たちは数千光年先の空気を予想しているのです。

宇宙からのサインを見逃さないために

このトランジット法で多くの惑星を見つけてきたのが、NASAの「ケプラー宇宙望遠鏡」や、現在活躍中の「TESS(テス)」といった探査機たちです。 彼らは宇宙空間で、何十万もの星をじーっと見つめ続け、「明るさがチラッと変わる瞬間」を待ち構えています。

しかし、この方法には一つだけ弱点があります。 それは、「惑星がちょうど恒星の前を横切る角度じゃないと見つけられない」ということ。 もし惑星が、地球から見て「上下」や「斜め」に回っていたら、影はできず、見つけることはできません。

私たちが発見できているのは、たまたま地球の方を向いて回ってくれている、「運命的に目が合った」惑星たちだけなのです。 そう思うと、見つかった一つ一つの惑星が、より愛おしく感じられませんか?

まとめ:星の瞬きに想像力を乗せて

いかがでしたか? 「トランジット法」という少し硬い言葉も、「遠くの星が送ってくれた影の便り」だと思うと、親しみが湧いてきませんか。

今夜、もし晴れていたら、窓を開けて一番明るい星を見つけてみてください。 その星は、もしかしたら今この瞬間も、誰にも気づかれないほどのわずかな「ウインク」をしているかもしれません。 その輝きのすぐ隣で、まだ見ぬ惑星が、静かに回っている……。 そんな想像をするだけで、いつもの夜空が壮大な物語の舞台に変わります。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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