なぜ逆立ちして回る?金星が隠し持つ「あまのじゃく」な秘密

日が落ちたあとの西の空に、一番星がキラキラと輝いているのを見たことはありますか? 「宵(よい)の明星」として親しまれている、金星です。

地球のお隣さんであり、大きさも重さもそっくり。「地球の双子」なんて呼ばれることもありますが、実はこの双子の妹(あるいは姉)、とんでもなく「あまのじゃく」な性格をしているのをご存知でしょうか?

他の惑星たちが同じ向きに行進しているのに、たったひとりだけ逆向きに、しかも信じられないほどゆっくりと歩いているのです。

今日は、美しく輝くあの星の、ちょっぴり頑固で不思議な「回転」のお話をしましょう。 これを読めば、明日からの夕焼け空が、少しだけミステリアスに見えてくるかもしれません。

目次

太陽系イチの「変わり者」?

金星での日の出イメージ図
Image Credit: NASA/Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab

もしも私たちが金星に降り立って、朝が来るのを待っていたとしたら、とんでもないことが起きます。 なんと、太陽が西から昇って、東に沈むのです

※金星では自転と公転が特殊なため、太陽は非常にゆっくりと西から昇ります。

地球を含め、太陽系のほとんどの惑星は、上から見て「反時計回り」に回っています。 でも、金星だけは「時計回り」。完全に逆回転しているんですね。

学校の運動会で、みんながトラックを左回りに走っているのに、ひとりだけ逆走しているようなもの。 先生に怒られてしまいそうですが、金星はもう何十億年もこのスタイルを貫いています。

1年よりも長い「1日」

しかも、ただ逆向きなだけではありません。 その回るスピードが、異常なほど「ゆっくり」なのです。

地球が1回くるっと回るのにかかる時間は、ご存知の通り24時間ですよね。 では、金星はどれくらいだと思いますか?

答えは、なんと地球の時間で約243日(恒星日)。 金星が太陽の周りを一周する(1年が終わる)のが約225日ですから、なんと1年よりも1日の方が長いということになります。

「誕生日が来る前に、今日が終わらない」 そんな不思議な時空が広がっているのが、金星という惑星なのです。

なぜ逆向きに? 宇宙のビリヤード事件

どうして金星は、こんなにへそ曲がりな回り方をしているのでしょうか? 実は、天文学者たちの間でもまだ完全な決着はついていないのですが、有力な「容疑者」がいくつか挙げられています。

その一つが、「巨大衝突説」です。

昔々、太陽系がまだ生まれたばかりのころ。 宇宙は今よりもずっと交通量が多く、あちこちで岩石の塊が衝突事故を起こしていました。 ある時、地球くらいの大きさの天体が、ものすごいスピードで金星にドカン!とぶつかったのではないか、という説です。

みなさんは、ビリヤードをしたことがありますか? 勢いよく回っているボールに別のボールをぶつけると、回転が止まったり、逆回転し始めたりしますよね。 あれと同じことが、宇宙規模で起こったのかもしれません。

地球もかつて大きな衝突を経験して「月」が生まれたと言われていますが、金星の場合は、その衝撃で頭をガツンと叩かれて、目が回ってしまった……そんなイメージでしょうか。

犯人は「分厚い空気」かも?

もう一つ、最近注目されている面白い説があります。 それは、誰かにぶつかられたのではなく、自分の着ている「服」が重すぎて、うまく回れなくなったという説です。

金星は、地球とは比べものにならないほど分厚い二酸化炭素の大気をまとっています。 この大気が、太陽の熱で温められると、ものすごい勢いで膨張して移動します(スーパーローテーションという暴風が吹いています)。

ブレーキとアクセルの綱引き

ここで、ちょっと想像してみてください。

  1. 太陽の重力(潮汐力): 金星の地面を引っ張って、「おい、こっちを向け」と回転を止めようとします(ブレーキ)。
  2. 大気の流れ(大気トルク): 温められた分厚い大気が動き回り、「もっと回れ!」と金星をひねる力を加えます(アクセル)。

普通の惑星なら、重力のブレーキの方が強いのですが、金星は「服(大気)」が分厚すぎて、大気の力が無視できません。 この「止めようとする力」と「回そうとする力」が絶妙なバランスで喧嘩し続けた結果、 「じゃあ、もう逆向きでゆっくり回るわ……」 と、今の不思議な回転に落ち着いたのではないか、と考えられているのです。

まとめ:みんな違って、みんな面白い

誰かにぶつかって目が回ったのか、自分のコートが重すぎて動きづらくなったのか。 本当の理由は、金星の分厚い雲の下に隠されたままです。

でも、そうやって理由を想像しながら夜空を見上げると、ただの明るい点だった金星が、なんだか愛おしい存在に思えてきませんか?

「みんなと同じじゃなくていいんだよ」

夕焼けの中にポツンと輝く一番星は、そんなふうに私たちに語りかけてくれているのかもしれません。 今夜、もし西の空が晴れていたら、ぜひこの「あまのじゃく」な隣人に挨拶をしてみてください。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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