ブラックホールとは?|光も逃げられない重力の正体をやさしく解説

夜空を見上げると、光を放つ星たちが無数に輝いています。

では、光を放たないどころか、光そのものを閉じ込めてしまう天体があるとしたら、どうでしょうか。見えないにもかかわらず、周囲の星やガスを強力に引き寄せ、光すら逃がさない——それが「ブラックホール」という天体の正体です。

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ブラックホールとは?|「穴」ではなく、極限まで圧縮された天体

ブラックホールという名前から「宇宙に空いた穴」をイメージしてしまいがちですが、その正体は天体、つまり「星のなごり」です。

重力は、物質が小さな空間に密集するほど強くなります。地球を直径1.5センチほどのビー玉サイズにまで圧縮したとすると、その重力はすさまじく強くなります。ある密度を超えると、宇宙で最も速い光でさえ、その重力から逃げ出せなくなります。

光が外へ逃げられないということは、私たちの目にその天体の姿が届かないということです。これが、ブラックホールが「黒く」見える理由です。

ブラックホール
Image Credit: Credit: EHT Collaboration

なぜブラックホールは生まれるのか?

ブラックホールが生まれるのは、太陽よりはるかに重い「大質量星」が寿命を迎えるときです。

星は、中心で起きる核融合(水素原子が融合してエネルギーを生む反応)によって内側から押し返す力を得ています。この圧力と、星自身の重さによる重力が釣り合うことで、星は丸い形を保って輝き続けます。

しかし、長い時間をかけて燃料となる水素を使い果たすと、内側から押し返す力が失われます。重力が優勢になった瞬間、星の外層部は大爆発(超新星爆発)を起こして吹き飛び、中心部だけが残ります。

このとき、おおむね太陽の20〜30倍以上の重い星では、残された中心核は自らの重力を支えきれず、極限まで圧縮され続け——ブラックホールが誕生します。

事象の地平面|「ここから先は戻れない」境界線

ブラックホールには、特別な境界があります。「事象の地平面」と呼ばれるものです。

事象の地平面とは、光が外へ脱出できなくなる境界のことです。この境界よりも内側では、光を含むあらゆるものが外の宇宙へ戻ることができません。

境界の外から近づいていく場合、境界の外側にいる限りは脱出できます。しかし境界を越えてしまうと、宇宙で最も速い光でさえも脱出できず、ブラックホールの中心へ引き込まれていくだけです。

「光も逃げられない」という表現が使われるのは、この境界線のことを指しています。

見えないのに、どうやって見つける?

光を発しないブラックホールを、天文学者たちはどのように観測しているのでしょうか。

答えは「周囲への影響」を観測することです。宇宙には二つの星が互いに回り合う「連星系」と呼ばれる天体があります。片方がブラックホールの場合、もう一方の星からガスが引きはがされ、ブラックホールの周囲に渦を巻きながら流れ込みます。

このガスは加速しながら激しく圧縮されて高温になり、X線という高エネルギーの光を放ちます。X線望遠鏡でこの光を観測することで、「見えない天体」の存在と位置を特定できるのです。

また2019年には、「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」という地球規模の電波望遠鏡ネットワークが、ブラックホールの「影」を初めて画像として撮影することに成功しました。撮影されたのは、銀河M87の中心にある超大質量ブラックホールです。

ブラックホールに落ちるとどうなる?

ブラックホールの近くでは、場所によって重力の強さが大きく変わります。

そのため、もし人が近づくと、足元の方が頭よりも強く引っ張られ、体が細長く伸ばされてしまうと考えられています。これは「スパゲッティ化」と呼ばれる現象です。ただし、事象の地平面の内側で実際に何が起きるのかは、まだよく分かっていません。

光さえ外へ出られないため、その先の様子を直接観測することはできないのです。

夏の夜空に潜むブラックホール

実は、夜空に肉眼で見える場所にも、ブラックホールは存在しています。

はくちょう座
Image Credit: NASA, ESA, STScI; Acknowledgment: NSF’s NOIRLab, DSS, Akira Fujii, Jeff Hester, Davide De Martin, Travis Rector, Ravi Sankrit (STScI)

夏の夜空に大きな十字型を描く「はくちょう座」。その中心付近に「はくちょう座X-1」と呼ばれる連星系があります。片方はブラックホール、もう片方は青白く輝く大質量星です。このブラックホールは太陽の約20倍の質量を持つと推定されており、1970年代から観測が続けられてきた、最もよく研究されたブラックホールのひとつです。

もちろん、肉眼でブラックホールの姿を見ることはできません。しかし夜空のあの方向に——かつて巨大な星が輝き、やがて自らの重さで潰れていった天体が、今も静かに周囲を支配しているということを知った上で夜空を見ると、何もない暗闇に見えた空が少しだけ違って見えるかもしれません。

ブラックホールは、宇宙を「光で見る」ことの限界と、その限界を超えて構造を理解しようとする天文学の到達点を示す天体です。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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