GW170817とは?|金やプラチナを生んだ中性子星衝突の瞬間

夜空を見上げているとき、自分が身につけている指輪やネックレスの「金」が、どこで生まれたものか考えたことはあるでしょうか。

地球の中で作られたわけではありません。実は、はるか昔、宇宙のどこかで起きた星の衝突によって生まれ、長い時間をかけて地球にたどり着いたものだと考えられています。

その現場を、人類が初めて目撃した日があります。2017年8月17日、うみへび座の方向で起きた「GW170817」という出来事です。

Image Credits: Illustration: CXC/M. Weiss; X-ray: NASA/CXC/Trinity University/D. Pooley et al.

目次

なぜ星の衝突から「金」が生まれるのか?

主役は「中性子星」です。中性子星とは、太陽ほどの重さを東京都心くらいの大きさに押し込めた、超高密度の星の死骸のこと。スプーン1杯で10億トンともいわれる、宇宙でもっとも「濃い」天体です。

この中性子星が2つ、ペアになって互いの周りを回り続けることがあります。回るたびに少しずつ距離を縮め、最後には光速に近い速度で正面衝突します。

衝突の瞬間、ちぎれた中性子の破片が宇宙空間に飛び散ります。そこでは、地球の実験室では再現できないほど猛烈な核反応が一瞬だけ起こり、鉄よりも重い元素が大量に作られます。金やプラチナも、その中に含まれていました。中性子星の衝突は、いわば宇宙にぽつんと現れる「金のるつぼ」なのです。


「重力波」が教えてくれた衝突の瞬間

この衝突は、もうひとつの形でも宇宙に伝わりました。「重力波」です。重力波とは、巨大な天体が激しく動いたときに生まれる、空間そのものの揺れのことです。

アメリカとヨーロッパにある重力波望遠鏡が、1.3億年前にうみへび座の方向で起きたこの揺れを、ほぼ同時に検出しました。揺れが届いたわずか数時間後には、世界中の望遠鏡がその方向を観測し、衝突によって輝く小さな光の点を見つけ出しています。この光は「キロノバ」と呼ばれています。中性子星の衝突で宇宙空間に放出された重元素が崩壊するときに輝く現象で、金やプラチナの生成を裏付ける重要な証拠となりました。

重力波という「揺れ」と、光という「輝き」の両方で、同じひとつの現象を確かめられた、史上初めての出来事でした。この成果は、重力波と光を組み合わせて宇宙を調べる「マルチメッセンジャー天文学」の始まりとしても知られています。


今夜の夜空と、あなたの指先をつなぐもの

うみへび座は、決して目立つ星座ではありません。今夜空を見上げても、そこに何か特別なものが見えるわけではないでしょう。

それでも、その方向で起きた小さな衝突が、宇宙に金やプラチナをまき散らし、長い年月をかけて地球にたどり着いたのだとしたら。私たちが何気なく身につけているジュエリーは、夜空のどこかで起きた星の最期の輝きが、形を変えて手元に残ったものなのかもしれません。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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