みなさんは夜空に赤く輝く星、火星を見つけたことはありますか?
望遠鏡で見ると、ただの小さな赤い点にしか見えないこの惑星。 実はその表面には、地球の常識では考えられないほどの「とんでもないもの」がそびえ立っているんです。
それは、太陽系で一番高い山、オリンポス山。
その高さは、なんとエベレストの3倍。 なぜ、地球よりも小さな火星に、これほど巨大な山が生まれてしまったのでしょうか?
今日は、そんな火星の「ニキビ」……いえ、壮大な「古傷」のお話をしましょう。

Scientific Visualization Studio
まずは、その規格外の大きさから見ていきましょう。
想像してみてください。日本列島がまるごと「山」になる姿を。
まずは、その規格外の大きさについてお話しします。
地球の最高峰エベレストの標高は、約8,848メートル。 これでも十分、息が詰まる高さですが、火星のオリンポス山は約21km(21000メートル)以上もあります。飛行機が飛ぶ高さ(約10km)の、さらに倍です。
しかし、もっと驚くべきはその「広さ」です。 この山の裾野は、直径約600キロメートル。
これは、東京から大阪までの距離とほぼ同じ。 あるいは、フランスという国がまるごと一つ入ってしまう広さです。
あまりに巨大すぎて、もし私たちがオリンポス山のふもとに立っても、それが山だとは気づかないでしょう。 地平線の向こうまで続く、終わりのない緩やかな坂道にしか見えないのです。
地球は「回転寿司」、火星はレーンの止まった回転寿司
「地球より小さい火星に、なぜそんな巨大な山が?」 不思議ですよね。
実はこの理由は、私たちが大好きな「食べ物」の並び方に例えると、とても分かりやすくなります。
地球の火山は、「回転寿司」です。 そして火星の火山は、お皿をだれも取らない、レーンも流れていない状態なのです。
地面が動く地球、動かない火星
地球の表面は、いくつかのプレート(岩盤)に分かれていて、ベルトコンベアのように絶えず動いています(プレートテクトニクス)。
地下深くにあるマグマの供給源(ホットスポット)が「寿司職人」だとして、地面は「回るレーン」です。 職人さんが同じ場所でマグマを握り続けても、レーンが動いてしまうので、お皿は次へと流れていきます。
その結果、ハワイ諸島のように、「ほどほどの大きさの島(火山)」が、列になって並ぶことになります。
一方で、火星にはこの「プレートの移動」がありません。 地面という「お皿」が、マグマの出口の上でピタリと止まったままなのです。
何千万年、何億年もの間、同じお皿の上にお寿司が残り続けていたら、どんどん「山積み」になっていきますよね。
火星の地面が動かなかったこと。 それが、このモンスター級の山を生み出した一つ目の理由です。
重力という「足かせ」が軽いから
もう一つの理由は、火星が地球よりも少し「身軽」だということです。
山というのは、高くなればなるほど、自分自身の重さで地面に沈み込んだり、崩れたりしようとします。 地球の重力は強いので、ある程度の高さになると「もうこれ以上は支えきれないよ!」と、山自身の重さがブレーキをかけてしまいます。
しかし、火星の重力は地球の約3分の1(38%)。 いわば、重りという「足かせ」が軽い状態です。
マグマがどんどん積み上がっても、地面が「まだまだ大丈夫!」と支えてくれるため、あそこまで高く成長することができたのです。
それは、星が「冷えてしまった」証拠
けれど、少し切ない見方もできます。
プレートが動かないということは、火星の内部が冷えて固まり、地球のようにダイナミックに循環するエネルギーを失ってしまったことを意味します。
オリンポス山は、まだ火星が若く、情熱的だった頃の記憶。 かつては活発に鼓動していたこの赤い星が、ゆっくりと冷えて静まり返っていく過程で残された、巨大な「残り火」の塔なのです。

まとめ:動く大地への感謝を込めて
エベレストの3倍もの高さを持つ、オリンポス山。 その正体は、「動かない大地」と「弱い重力」が生み出した、奇跡の塔でした。
- 地球のように地面が動かないから、一箇所にマグマが降り積もった。
- 重力が弱いから、高く積み上げても崩れなかった。
そう考えると、私たちの足元で時々起きる地震や、噴火する火山たちが、少し違って見えてきませんか? それらは、地球がまだ温かく、生きていて、地面を動かし続けている証拠なのです。
「動かないからこそ巨大になれた山」がある火星。 「動くからこそ、生命あふれる海と大気を保てた」地球。
今夜、もし晴れていたら、南から西の空にかけて輝く赤い星を探してみてください。 そして、その小さな赤い点の向こうに、とてつもなく巨大な山が静かに眠っている姿を想像してみましょう。
参考文献
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