トランジット法とは?|減光率から系外惑星の大きさと距離を求める方法

夜空に輝く無数の星々。その多くは、太陽と同じように自ら光を放つ恒星です。では、その恒星の周りを回る「太陽系以外の惑星(系外惑星)」は、どのようにして見つけるのでしょうか。

惑星は自ら光を放ちません。そのため、何千光年も離れた恒星のまぶしさの横にある小さな惑星を、直接見ることはほとんど不可能です。それは例えるなら、数キロメートル先の強力なサーチライトの横を飛ぶ、一匹の蛍を見つけようとするようなものです。

そこで天文学者たちは、惑星を直接「見る」のではなく、恒星から届く光の「物理的な変化」に着目しました。現在、5000個以上発見されている系外惑星の大部分を見つけ出した手法、それが「トランジット法」です。

目次

トランジット法を支える物理:光の遮蔽と軌道運動

トランジット法の光量変化図解
Image Credit: NASA, ESA, CSA, Dani Player (STScI), Andi James (STScI), Gregory Bacon (STScI)

トランジット法の核心は、非常にシンプルな物理現象にあります。それは「物体が光源の前を横切ると、光が遮られて暗くなる」という事実です。

星の光を遮る「食(トランジット)」

ある恒星の周囲を惑星が公転しているとします。地球から見て、その惑星の公転軌道がちょうど「真横」を向いていた場合、惑星は定期的に恒星の前を横切ることになります。この現象を「トランジット(食)」と呼びます。

惑星が恒星の手前を通過している間、恒星の光の一部が惑星の断面積の分だけ遮られます。この時、地球に届く恒星の明るさの時間変化をグラフ(光度曲線=ライトカーブ)にすると、惑星が通過している時間だけ、わずかに凹んだ形になります。この「定期的な減光」を捉えることが、トランジット法の基本的な仕組みです。

周期から距離を導く「ケプラーの第三法則」

トランジット法が優れているのは、単に「惑星がある」ことだけでなく、その惑星の「素性」まで物理法則を用いて計算できる点にあります。

減光が起きる間隔(周期)を観測すれば、その惑星が恒星の周りを一周する時間(公転周期)がわかります。ここで、17世紀に発見された物理法則であるケプラーの第三法則(公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する)が適用されます。

恒星の質量と惑星の公転周期がわかれば、この法則によって「恒星から惑星までの距離」を正確に導き出すことができるのです。

わずかな暗さを測る数値スケール

では、惑星が恒星の前を横切るとき、星は一体どれくらい暗くなるのでしょうか。ここで、実際の宇宙のスケール感を確認してみましょう。

1%と0.01%の違いが意味するもの

減光の割合(どれくらい暗くなるか)は、恒星の断面積に対する、惑星の断面積の比率で決まります。

太陽と同じ大きさの恒星の周りを、木星と同じサイズの巨大ガス惑星が横切ったとします。木星の半径は太陽の約10分の1です。断面積はその2乗となるため、恒星の光は約1%減少します。1%の変化であれば、地上の高性能な望遠鏡でも十分に捉えることができます。

しかし、地球と同じサイズの岩石惑星だった場合はどうでしょう。地球の半径は太陽の約100分の1です。断面積で計算すると、光の減少はわずか約0.01%(1万分の1)にしかなりません。

この極めて微小な変化を捉えるため、大気の揺らぎの影響を受けない宇宙空間に「ケプラー宇宙望遠鏡」などの専用の観測機器が打ち上げられ、数多くの地球型惑星が発見されてきました。

だから、系外惑星の存在は「光のグラフ」で説明できる

系外惑星が恒星の前を横切るイメージ図
Image Credit: ESA/Hubble, NASA, M. Kornmesser

トランジット法とは、決して魔法のような透視技術ではありません。 「光が物体に遮られる」という幾何学的な事実と、「軌道運動の周期」という古典的な物理法則を組み合わせ、途方もない精度で星の明るさを測り続けるという、極めて理詰めの観測手法です。

光がどれだけ暗くなったかで惑星の「大きさ(半径)」がわかり、どれくらいの間隔で暗くなったかで惑星までの「距離」がわかる。

だから、何千光年も離れた見えない惑星の姿と構造は、「恒星の微小な減光の周期と深さ」という明確な物理データで説明できるのです。

今夜、夜空の星を見上げたとき、その変わらないように見える輝きが、実は「見えない惑星」の存在を静かに伝えてくれているかもしれないと想像してみてください。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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