水星から海王星まで、太陽系には個性豊かな8つの惑星があります。 氷の惑星や、ガスの巨人、そして生命あふれる地球。それぞれの解説記事は下記リンクにあります。










しかし、これらの惑星をすべて合わせても、太陽系全体の「重さ」のわずか0.14%にしかならないことをご存知でしょうか?
残りの99.86%。 その圧倒的な質量のすべてを占めているのが、中心に座る絶対的な王者、太陽です。
私たちを照らし続ける、あまりに巨大で、そしていつかは燃え尽きる運命にある「母なる星」について、じっくりとお話ししましょう。
太陽は「燃えて」いない?
私たちはよく「太陽が燃えている」と言いますが、実はあれは、焚き火のように酸素を使って燃えているのではありません。もし酸素で燃えているなら、太陽ほどの大きさでも数千年で燃え尽きてしまう計算になります。
では、なぜ46億年も輝き続けているのか? そのエネルギー源は「核融合(かくゆうごう)」です。
太陽の中心部は約1500万℃、2500億気圧という凄まじい環境になっています。 ここでは、水素と水素が無理やり合体させられてヘリウムに変わる反応が、毎秒6億トン分も起きています。その時に生まれる莫大なエネルギーが、光や熱となって宇宙へ放出されているのです。
つまり太陽は、巨大な燃える火の玉ではなく、「天然の核融合炉」なんですね。
地球から見える「8分19秒前」の過去
太陽と地球の距離は、約1億5000万キロメートル。 光の速さ(秒速30万キロ)でも、到達するのに約8分19秒かかります。
今、あなたが窓の外に見ている太陽の光は、実は8分以上前に太陽を出発した光です。 もし仮に、今この瞬間に太陽がフッと消滅したとしても、私たちは8分間、それに気づかずに「暖かいなぁ」と日向ぼっこを続けられることになります。
宇宙において「見る」ということは、常に「過去を見る」ということ。 一番身近な太陽でさえ、私たちは「現在」の姿を見ることはできないのです。
黒点の「正体」と、美しきプロミネンス

太陽の表面(光球)の温度は約6000℃。 そこにポツポツと見える黒いシミのような「黒点」。黒いので冷たいと思われがちですが、それでも約4000℃あります。周りが眩しすぎるので、相対的に暗く見えているだけなのです。
そして、太陽の縁から炎のように立ち上る「プロミネンス(紅炎)」。 地球がすっぽり入ってしまうほどの巨大なガスのアーチは、まるで生き物のようです。太陽は静かに輝いているわけではなく、磁力線が複雑に絡み合い、常に爆発を繰り返しているダイナミックな星なのです。
太陽の寿命。最期はどうなる?

太陽が誕生したのは約46億年前。 そして、その寿命は約100億年だと言われています。つまり、今の太陽は人間で言うと40代半ばの働き盛り。脂の乗った安定期です。
では、あと50億年経って燃料を使い果たしたらどうなるのでしょうか?
太陽はバランスを崩して膨張を始め、巨大な「赤色巨星」へと姿を変えます。 その大きさは現在の数百倍にもなり、水星や金星を飲み込み、おそらく地球の軌道付近まで膨れ上がると考えられています(地球が飲み込まれるか、ギリギリ助かるかは議論が分かれています)。
そして最後は、ガスを宇宙空間に放出して美しい「惑星状星雲」となり、中心には燃えカスの「白色矮星」だけが残ります。 地球くらいの大きさの、白く静かに光る小さな星。それが太陽の最期の姿です。
宇宙から見れば「平凡な星」
私たちにとって、太陽はなくてはならない特別な存在です。 しかし、広い宇宙の視点で見れば、太陽は「イエロー・ドワーフ(黄色い矮星)」に分類される、ごくごくありふれた平凡な星の一つに過ぎません。
天の川銀河だけでも、太陽のような星は2000億個以上あると言われています。 大きすぎず、小さすぎず、暴れすぎず、静かすぎない。 そんな「奇跡的なほどの平凡さ」を持っていたからこそ、そのそばで私たちのような生命がゆっくりと進化する時間があったのかもしれません。
まとめ
- 太陽系の全質量の99.86%を占める絶対的な支配者。
- 中心部で「核融合」を起こし、毎秒6億トンの水素をエネルギーに変えている。
- 現在は46億歳。あと50億年輝き続けた後、膨張して地球を飲み込むかもしれない。
- 宇宙規模で見れば「ありふれた星」だが、その平凡さが生命を育んだ。
いつもの朝、カーテンを開けて陽の光を浴びたとき。 それが「8分かけて届いた核融合エネルギー」であり、「あと50億年限定の恵み」であることを思い出してみてください。 きっと、その暖かさが少しだけ特別に感じられるはずです。
Image Credit: NASA

コメント