夜空で静かに輝く星は、ずっとそのままの姿を保ち続けているように見えます。
でも、星にも「一生」があります。生まれ、輝き、そしていつか終わりを迎える。では、太陽くらいの大きさの星は、その最期にどんな姿を見せるのでしょうか。
「惑星状星雲」は、その問いへの答えの一つです。

「惑星」とは無関係な星雲
まず、名前の誤解を解いておきます。
「惑星状星雲」という名前を聞くと、惑星に関係する何かのように聞こえます。しかし、惑星状星雲は惑星とは一切関係がありません。
18世紀後半、天文学者がぼんやりとした丸い天体を望遠鏡で観察したとき、その見た目が天王星などの惑星に似て見えたことから、このような名前がついたと言われています。名前の由来は「形の似ている何か」であって、その正体ではないのです。
では、惑星状星雲の正体は何でしょうか。一言で言えば、老いた星が宇宙空間に放出した、ガスの殻です。

惑星状星雲ができるまでの流れ
惑星状星雲を理解するには、まず「どんな星が、どのような過程でこれを作るか」を知る必要があります。
太陽のような軽い星から、中程度の重さの星(およそ8倍程度まで)は、長い主系列星の時期を終えると、外側のガスが大きく膨らんで赤色巨星になります。このとき、星の表面はゆっくりと宇宙空間に広がり始めます。
さらに時間が経つと、膨らんだ外層のガスが、星本体から大量に放出されます。放出されたガスは中心から離れながら広がり、やがて星を取り囲む殻のような構造をつくります。
ガスが放出されたあと、中心には星の核だけが残ります。この中心星は非常に高温で、強力な紫外線を放射しています。その紫外線がガスの殻に当たることで、ガスが光り輝く——これが惑星状星雲です。
やがて白色矮星へと進化する高温の中心星が、光のスイッチになっているわけです。

輝いていられる時間はごく短い
惑星状星雲が光り続けていられる時間は、宇宙のスケールで見ると驚くほど短いとされています。
星の寿命は数億年から数百億年にわたりますが、惑星状星雲として輝いていられる期間は、おおよそ1万年から数万年程度と考えられています。宇宙の時間軸からすると、ほんの一瞬のできごとです。
中心の白色矮星が冷えていくにつれて紫外線が弱まり、ガスの殻も宇宙空間に広がりながら薄れていきます。やがてガスは見えなくなり、惑星状星雲としての輝きは消えていきます。
なぜ形が違うのか
惑星状星雲といえば、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したカラフルな画像を思い浮かべる方もいるかもしれません。その形は、天体によって大きく異なります。
環状星雲(M57)はリング状、亜鈴状星雲(M27)はふたつの球が並んだような形、キャッツアイ星雲はさらに複雑で複数の層が入り組んだ構造をしています。
なぜ形が異なるのかは、現在も研究が続いています。星が回転していること、近くに連星(ペアの星)がいること、過去に複数回のガス放出があったことなど、いくつかの要因が形の多様性に関係していると考えられています。ただし、完全には解明されていません。
- 環状星雲(M57): まるでドーナツや指輪のような形。

- キャッツアイ星雲: 猫の目のように複雑で神秘的な模様。

- 亜鈴状星雲: 鉄アレイのような形。

なぜ色とりどりに輝くのか
惑星状星雲が青や赤、緑などさまざまな色で写るのは、ガスを構成する元素が異なるためです。
例えば、水素は赤色、酸素は青緑色の光を出します。そのため、どの元素が多く含まれているかによって、星雲ごとに見える色合いも変わります。
中心星から放たれる紫外線によってガスが電離し、それぞれの元素が特有の波長の光を放つことで、美しい色彩が生まれています。
ハッブル宇宙望遠鏡などが公開する画像の中には、人間の目では見えない波長を強調した疑似カラーも含まれますが、色の違いは実際に存在する元素分布を反映しています。
太陽も、いつか惑星状星雲になる
太陽の現在の年齢は約46億歳で、あと約50億年は主系列星として安定して輝き続けると考えられています。その後、太陽は赤色巨星へと姿を変え、外層のガスを宇宙に放出しながら惑星状星雲を作ると考えられています。
私たちが今吸っている酸素や、体をつくっている炭素の一部も、かつてどこかの星が惑星状星雲として宇宙に広げたガスに由来しているとされています。星が終わりを迎えるときに放ったものが、次の星や惑星の材料になる——宇宙ではこのような循環が繰り返されてきたとされています。

今夜、夜空を見上げてみてください。あの静かに輝く星たちのいくつかは、今まさに主系列星の安定した時期を送っています。そしてその果てに、光り輝くガスの殻を宇宙に残していく。
惑星状星雲とは、星の一生の「最終章に起きる現象の構造」です。その構造を知った後で見る夜空は、少しだけ違った奥行きを持つはずです。

参考文献