赤色巨星とは?|夜空に赤く輝く、大きく膨らんだ星の正体

春から初夏へと移り変わる季節、夜空を見上げると、頭の真上近くにオレンジ色にあたたかく輝く大きな星が見つかります。うしかい座の「アークトゥルス」という星です。

夜空に輝く星たちの多くは、白や青白くパチパチと瞬いています。しかし、このアークトゥルスや、冬の夜空に見えるおうし座の「アルデバラン」のように、まるで街灯のように優しい赤みを帯びた光を放つ星がいくつか存在します。

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なぜ、あの星だけが赤いのか?

同じ夜空に浮かぶ星なのに、なぜこれほど色が違うのでしょうか。「星の個性の違い」と言ってしまえば簡単ですが、実はこの色の違いには、その星が今まさに迎えている「人生のステージ」が深く関係しています。

あの赤い星は、決して最初から赤かったわけではありません。かつては他の星と同じように白く輝く、若く健康的な星でした。それが時間の経過とともに変化し、今や信じられないほど巨大に膨れ上がった姿になっているのです。天文学では、このような星を「赤色巨星」と呼んでいます。

赤色巨星とは?|年老いて膨らんだ星の姿

赤色巨星
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith (KBRwyle)

ここで、この記事で大切になる言葉の定義をすっきりと整理しておきましょう。

赤色巨星(せきしょくきょせい)とは、年老いて大きく膨らみ、表面温度が下がって赤く輝く星のことです。

星にも人間と同じように寿命があり、生まれてから死ぬまでのストーリーを持っています。夜空に輝く星たちの多くは、自分の体の中にある燃料を使って、光と熱を生み出し続けています。この、星が最も長く過ごす安定した時期を終えると、星は「老後」のステージへと突入します。その最初の姿が、赤色巨星なのです。

燃料が少なくなった星の選択

星が輝き続けることができるのは、その中心部で核融合という現象が起きているからです。

核融合(かくゆうごう)とは、星の中心部で軽い原子がくっついて重い原子に変わる反応です。

星は、この反応によって膨大なエネルギーを外側に向かって放出し、その勢いで自分の体重(重力)を支えています。

しかし、どんな燃料にもいつかは終わりが来ます。星が何十億年と輝き続けると、星の心臓部である中心核の燃料が徐々に底をつき始めます。

中心核(ちゅうしんかく)とは、星の最も奥深くにあり、エネルギーを生み出す心臓部です。

心臓部の燃料がなくなると、星はこれまでの安定したバランスを保てなくなり、自らの構造を大きく変える決断を迫られることになるのです。

星はなぜ赤色巨星になるのか?

燃料がなくなると、星は中心部でエネルギーを生み出せなくなります。すると、外側へ押し出す力が弱まり、星は自分の重さに耐えかねて、中心部がギュッと縮み始めます。

「縮むのであれば、星は小さくなるはずでは?」と思うかもしれません。ここからが、宇宙の構造の不思議で面白いところです。

中心が縮むと、外側が膨らむ

星の中心核がギュッと激しく縮むと、そこには凄まじい圧力が生まれ、中心部の温度は以前よりもさらに高くなります。

この新しく生まれた強烈な熱が、今度は中心核のすぐ外側にあるガスを、ものすごい勢いで外側へと押し広げ始めるのです。

ここで、身近な例をひとつ挙げてみましょう。ストーブの上に置いたお餅を想像してみてください。最初は小さくて固いお餅ですが、中が熱されて空気が膨張すると、外側の皮がぷくーっと大きく膨らんでいきますよね。

星の表面でも、これとそっくりなことが起きています。中心が縮んだ代わりに、外側のガスが何倍、何百倍もの大きさにまで、風船のように膨らんでいってしまうのです。

なぜ膨らむと赤く見えるのか?

星が巨大に膨らむと、今度はその色に変化が現れます。

ガスが広く引き延ばされると、星の表面の温度は逆に下がってしまいます。キャンプファイアの火を遠くまで広げると、熱が分散してぬるくなるのと同じです。

星は、温度が高いときは青白く輝き、温度が下がるにつれて黄色、あるいは赤色へと光の種類を変えていきます。ベテルギウスが赤く見えるのは、星が限界まで大きく膨らんだ結果、表面の温度がすっかり冷え込んでしまったからなのです。

つまり、夜空に見える赤い星は、「中心近くが極端な高温になり、その周囲で激しい核融合が起き、外側が冷たく膨らみきった、年老いた星の姿」そのものだと言えます。

アークトゥルスはどれくらい大きい?

もしアークトゥルスを今の太陽の位置に置いたとしたら、その大きさは太陽の25倍以上、冬に見えるアルデバランであれば約44倍にも達します。それほどまでに、赤色巨星という構造は圧倒的なスケールを持っています。

太陽もいつか赤色巨星になる

そしてこのお話は、遠い宇宙の特別な星だけの出来事ではありません。私たちが毎日見上げている太陽も、今から約50億年後には燃料を使い果たし、同じように赤色巨星へと姿を変えることが分かっています。太陽は今の数百倍にまで膨らみ、地球の軌道の近くにまで迫る、巨大な赤い星になるのです。

もちろん、それは途方もなく遠い未来の話ですから、私たちが心配する必要はありません。しかし、宇宙のルールは、遠くのベテルギウスにも、私たちの太陽にも、全く同じように適用されているという事実は、どこか不思議なつながりを感じさせます。

今夜、もし晴れていたら、少しだけベランダに出て夜空を見上げてみてください。たくさんの白い星たちの中に、ひとつだけぽつんと、あたたかい赤色を見つけられるかもしれません。

その星を見つけたとき、ただ「綺麗だな」と思うだけでなく、「あの星の奥深くは今、ギュッと縮んでいて、その熱で外側が一生懸命膨らんでいるんだな」という構造を、頭の中で想像してみてください。きっと、いつも見慣れていた夜空の景色が、少しだけ立体的に、そして一段深い意味を持ってあなたに迫ってくるはずです。

参考文献


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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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