
今回ご紹介する星は、エスプレッソのような存在。 巨大な星が一生を終え、その全てを小さな小さな粒に凝縮してしまった星、「中性子星(Neutron Star)」のお話です。
中性子星とは、太陽の8倍以上の質量を持つ大質量星が超新星爆発を起こしたあとに残る、極限まで圧縮された星です。
巨大な怪物の「遺骨」
以前、まもなく爆発しそうな巨大な星「赤色超巨星」のお話をしましたね。 あの巨大な星が大爆発(超新星爆発)を起こして吹き飛んだ後、中心に「燃えカス」のような芯が残ります。
以前ご紹介した「白色矮星」も星の燃えカスでしたが、中性子星はレベルが違います。 爆発のすさまじい圧力で、原子さえもグシャグシャに潰れてしまい、「中性子」という粒子だけがギュウギュウに詰まった状態になったもの。 それがこの星の正体です。
山手線に収まる「太陽」
この星の最大の特徴は、その「非常識な密度」です。
まず、大きさは直径わずか20kmほど。 これは東京の山手線の中や、小さな市がすっぽり入るくらいのサイズです。 ついこの間まで、木星の軌道を飲み込むほど巨大だった星(赤色超巨星)が、都市サイズにまで縮んでしまったのです。
しかし、驚くべきはその重さです。 これほど小さいのに、太陽と同じか、それ以上の重さがあります。
もし、中性子星のかけらを「ティースプーン1杯」だけすくって地球に持ってきたとしたら。 その重さは、なんと約数億〜10億トンになります。 これは、エベレスト山と同じくらいの重さです。スプーンの上にエベレストが乗っている……想像できますか?
宇宙の灯台「パルサー」
中性子星は、ただ重いだけではありません。とてつもない速さで「回転」しています。 フィギュアスケートの選手が、腕を縮めると回転が速くなるのと同じ原理で、巨大な星が急激に小さくなったため、猛スピードで回っているのです。
その速さは、1秒間に数回〜数百回。 星の磁場からビームのような電波を出しながら回転しているため、地球から見ると、まるで灯台の光が点滅しているように見えます。 この特徴から、別名「パルサー(Pulsar)」とも呼ばれています。
すべての中性子星がパルサーになるわけではありませんが、観測されている中性子星の多くはこの性質を持っています。
あなたの指輪のルーツかも?
最後に、少しロマンチックなお話を。 中性子星同士は、長い時間をかけて互いに近づき、最後に衝突することがあります(キロノバと言います)。 この凄まじい衝突の瞬間に、大量の「金(ゴールド)」や「プラチナ」が作られ、宇宙に撒き散らされることが分かってきました。
もしかすると、あなたが今身につけている指輪の金やプラチナは、遥か昔、どこかの銀河で中性子星同士がぶつかって生まれたものかもしれません。 そう思うと、この極限の星が少し愛おしく感じられませんか?
太陽よりも重い質量を、街ひとつの大きさに押し込める。 宇宙には、人間の常識では計り知れない世界があることを、中性子星は教えてくれます。
星はガスから生まれ、輝き、老いて、最後にまた宇宙へ還る。 私たちの命も星も、形を変えながら巡り続けているのですね。
参考文献
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