超新星爆発とは?|核融合が止まる瞬間に起きること

冬の夜空で、オリオン座の左肩に赤く輝く星があります。「ベテルギウス」という名前の、太陽の約700倍の大きさを持つ赤色超巨星です。

天文学者たちは、この星がいつか「超新星爆発」を起こすと考えています。「いつか」といっても、明日かもしれないし、10万年後かもしれない。天文学の時間尺度では、その差はほとんどありません。

では、超新星爆発とはどんな現象なのか。なぜ起きるのか。そして、爆発した星は宇宙に何を残すのか。今回はベテルギウスを入口に、星の最期に起きる爆発の仕組みを順番に見ていきます。

supernova
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/RIKEN & GSFC/T. Sato et al; Optical: DSS

目次

超新星爆発とは?|名前の由来から

まず、言葉の整理をしておきましょう。

「超新星爆発」は英語で「Supernova」と言います。「nova」はラテン語で「新しい」を意味する言葉です。昔の人々が夜空を見上げると、それまで何もなかった場所に突然明るい星が現れることがありました。「新しい星が生まれた」と思ったのは無理のないことで、その名残が今もこの名前に残っています。

実際は逆です。超新星爆発は星が「生まれる瞬間」ではなく、「死ぬ瞬間」に起きる現象です。

本記事で扱う超新星爆発とは、大質量星が一生の最後に起こす、星全体が吹き飛ぶほどの大規模な爆発のこと。


なぜ超新星爆発は起きるのか|鉄が溜まると何が起きる?

超新星爆発を起こすのは、太陽の8〜10倍以上の質量を持つ大質量星です。太陽くらいの重さの星には起こらない現象です。

なぜ重い星だけが爆発するのか。それを理解するために、まず「星がなぜ輝いていられるのか」から押さえておく必要があります。

星は重力と圧力の綱引きで成り立っている

星は、自分自身の重力によって常に「つぶれようとする力」を受けています。これに対抗しているのが、中心部で起きる核融合反応によって生じる「外に向かう圧力」です。この二つの力が釣り合うことで、星は形を保ち続けています(この状態を天文学では「静水圧平衡」と呼びます)。

核融合は水素から始まる連鎖反応

核融合とは、軽い原子核が融合して重い原子核になる反応のことです。このとき、質量の一部がエネルギーに変わります(アインシュタインの有名な式 E=mc² の話ですが、数式の話はここでは置いておきます)。

星の中心部では、まず水素が融合してヘリウムになります。水素が尽きると、こんどはヘリウムが燃料になって炭素になります。炭素が燃えてネオンになり、ネオンが燃えてシリコンになり……というように、より重い元素を次々と作りながらエネルギーを取り出していきます。

鉄が「終点」になる理由

この連鎖の終わりに待っているのが「鉄」です。

鉄付近の元素は、原子核として最も安定しているグループです。これは言い換えると、「鉄を核融合させてもエネルギーが出ない」ということを意味します。鉄を融合させるには、むしろエネルギーを「投入」しなければなりません。

つまり、星の中心部に鉄が溜まり始めた瞬間、エネルギーを生み出すための燃料が尽きたも同然です。星が自分の重力に対抗する手段がなくなっていきます。


超新星爆発の仕組み|崩壊・跳ね返り・衝撃波

鉄の核が蓄積するにつれて、星は自分の重さを支えきれなくなります。ここから先は非常に速い話です。

0.1秒で起きる重力崩壊

鉄の核の質量が限界(太陽質量の約1.4倍)を超えると、それまで均衡を保っていた「外に向かう圧力」が急速に失われ、星全体が一瞬で中心に向かって崩れ落ちます。このプロセスを「重力崩壊」と呼びます。

中心へ落ちる速さは光速の約4分の1にも達します。巨大な星が、0.1秒ほどで中心に向かって一気に潰れ込むのです。

中心で生まれる「壁」

中心に落ちてきた物質は、超高密度の「核」を形成します。この核では、中性子同士が「これ以上は詰め込めない」と押し返す力(中性子縮退圧)が生じます。この「壁」に向かって猛スピードで落下してきた外層の物質が激しくぶつかり、今度は跳ね返されます。

衝撃波が星を吹き飛ばす

跳ね返った衝撃波は、星の外層を内側から押し広げていきます。このとき、崩壊中の中心部から大量のニュートリノ(非常に小さな質量しか持たない素粒子)が一気に放出され、この衝撃波に追い風を与えます。衝撃波はさらに加速し、星全体を外向きに吹き飛ばします。

これが超新星爆発の正体です。


超新星爆発の明るさ|銀河全体に匹敵するエネルギー

超新星爆発のエネルギーがどれほどのものか、いくつかの数字で見てみましょう。

爆発のピーク時には、たった1個の星が、数千億個の星を持つ「銀河全体」と同じ程度の明るさで輝くことがあります。太陽が100億年かけて放射するエネルギーに匹敵する量が、数日から数週間のうちに一気に解放されます。

歴史的な記録も残っています。1054年に夜空に現れた超新星爆発の光は、「昼間でも星が見えた」と日本や中国の文献に記録されています。この爆発の残骸が、現在もおうし座の方向に広がる「かに星雲」として観測されています。

もしベテルギウスが爆発したとすれば、距離は約640〜700光年。爆発の明るさは満月に近い程度になると推測されており、昼間でも見えることがあるかもしれません。夜空に「月のような輝き」が数週間から数ヶ月にわたって出現する計算になります。


超新星爆発が残すもの|元素と中性子星・ブラックホール

超新星爆発が重要なのは、爆発そのものだけではありません。爆発の後に何を残すかという点も、宇宙の仕組みを理解するうえで欠かせません。

重元素を宇宙に撒く

星の内部で長い時間をかけて作られた炭素・酸素・鉄といった元素は、爆発によって宇宙空間に散布されます。さらに、金や白金などの非常に重い元素は、超新星爆発や中性子星同士の衝突で作られた可能性があると考えられています。

私たちの体を構成するカルシウム・鉄・炭素・酸素といった元素も、はるか昔の超新星爆発によって宇宙空間に放出されたものが、やがて集まって太陽系をつくり、地球となり、生命を構成する材料になったと考えられています。

感傷的に言えばロマンのある話ですが、構造として理解するとこういうことです。「大質量星が核融合で元素を合成し、超新星爆発でそれを宇宙に撒く」——この工程がなければ、現在の宇宙に水素とヘリウム以外の元素はほとんど存在しなかったでしょう。

中心に残るもの

爆発で外層が吹き飛んだ後、中心部だった「核」は残ります。この残骸がどうなるかは、親星の質量によって異なります。

中性子星は直径約20kmという小さな天体に、太陽とほぼ同等の質量が詰め込まれた、極めて高密度な残骸です。


超新星爆発の「跡」を観測する

超新星爆発の後に残るガスの雲を「超新星残骸」と呼びます。爆発で吹き飛んだ物質が周囲の宇宙空間に広がり、数万年かけて薄まっていきます。

現在も観測できる代表的な超新星残骸が、先ほど触れたかに星雲です。X線・電波・可視光などさまざまな波長で輝いており、その中心には今も高速で自転しているパルサーが存在しています。


ベテルギウスはいつ爆発するのか

冒頭で触れたベテルギウスの話に戻ります。

ベテルギウスはすでに赤色超巨星の段階にあり、中心部での核融合反応が終盤に差し掛かっていると考えられています。2019年〜2020年にかけては「大減光」と呼ばれる急激な減光現象が観測され、世界中の天文学者が注目しました(後の研究で、表面から吐き出されたガスや塵が光を遮ったためと考えられています)。

ベテルギウスが超新星爆発を起こすタイミングは、現時点では「数千年から10万年以内の可能性がある」という程度の精度でしか予測できていません。宇宙のスケールではすぐの話ですが、人間の時間感覚では「いつになるかわからない」というのが正直なところです。

見慣れたオリオン座の形が、いつか変わってしまうのかもしれません。


まとめ|「重力崩壊」が超新星爆発を引き起こす

この記事で見てきた内容を整理します。

超新星爆発は、太陽の8〜10倍以上の大質量星が起こす現象です。星の中心部で核融合の連鎖が進み、エネルギーを生み出せない「鉄の核」が形成されると、重力に対抗する力が失われます。その瞬間、星全体が0.1秒ほどで中心に向かって崩壊し、跳ね返った衝撃波が星ごと吹き飛ばします。

爆発のエネルギーはピーク時に銀河全体に匹敵し、内部で合成された元素を宇宙空間に撒きます。残骸として中性子星やブラックホールが生まれ、その痕跡は超新星残骸として長期間にわたって観測できます。

超新星爆発を「大きな爆発」と把握するのではなく、「重力崩壊が引き金になった、一連の構造的なプロセス」として理解すると、夜空にあるベテルギウスの赤い光が、少し違って見えてくるはずです。


参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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