数千個以上の系外惑星が見つかった現在、天文学者たちはそれらの「大きさ(半径)」をグラフに並べてみました。すると、奇妙な事実が浮かび上がりました。
地球の約1.3倍ほどの半径をもつ「スーパーアース」は多く見つかっています。一方で、地球の2〜3倍ほどの半径をもつ「ミニネプチューン」も珍しくありません。
ところが、その中間サイズだけが不自然なほど少ないのです。
この統計的な空白地帯を、発見者の名前をとって「フルトン・ギャップ(Fulton gap)」、あるいは単に「惑星半径のギャップ」と呼びます。これは観測ミスではなく、宇宙にはこのサイズになりにくい「物理的な壁」が存在することを示唆しています。

なぜ中間サイズの惑星は少ないのか
なぜ「中間のサイズ」は存在できないのでしょうか。その答えは、重力(つなぎとめる力)と熱エネルギー(逃げ出す力)の綱引きにあります。
惑星が形成された直後、多くの岩石惑星は水素やヘリウムのガスをまとっています。しかし、主星(太陽のような星)から降り注ぐ強力なX線や紫外線(XUV)が、大気を加熱します。
ここで物理法則が働きます。
- 加熱: 大気がエネルギーを受け取り、分子の平均速度が上昇する
- 脱出: 分子の速度が、惑星の「脱出速度」を超えると宇宙空間へ飛び出す。
地球の1.5倍〜2.0倍というサイズは、この綱引きにおいて非常に「中途半端」なのです。
- これより小さい場合(スーパーアースへ): 重力が弱いため、加熱された大気を繋ぎ止められず、ガスがすべて剥ぎ取られて「裸の岩石」になります。
- これより大きい場合(ミニネプチューンへ): 重力が十分に強いため、加熱されても大気の大部分を保持し続け、「ガスをまとった惑星」として安定します。
つまり、中間のサイズで生まれたとしても、大気を失って小さくなるか、最初から大きくて維持するかのどちらかに分かれるため、結果として「中間のサイズ」には留まれないのです。これを光蒸発(Photoevaporation)モデルと呼びます。
数値スケール:運命を分ける境界線
この現象を理解するために、具体的なスケール感を見てみましょう。
- 境界線(ギャップの底): 地球半径の約1.75倍
- 必要な条件: 公転周期が100日以下の、主星に近い惑星で顕著
主星に近いほど、受ける熱エネルギーは桁違いに大きくなります。まるで濡れた服をドライヤーの目の前に置くようなものです。 この過酷な環境下では、わずかな質量の差が決定的な違いを生みます。地球質量の数倍程度のコア(核)を持つ惑星にとって、ガスをまとっていられるかどうかの「臨界点」が、まさにこのギャップの位置にあるのです。
結論:惑星は「変化する天体」である
フルトン・ギャップの発見は、惑星が決して静的な存在ではないことを教えてくれました。惑星は生まれた時の姿のままではなく、数億年、数十億年という時間をかけて、恒星からのエネルギーによってその姿を削り取られ、形を変えていく動的なシステムなのです。
夜空の星を見上げるとき、その周りには「大気を守りきった惑星」と「守りきれずに裸になった惑星」の2種類が回っていることを想像してみてください。 その間に横たわる「空白のサイズ」は、宇宙における物理法則の厳しさを物語る、見えない境界線なのです。

参考文献
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