今日ご紹介する星は、ワインのような色をした、宇宙の怪物。 「赤色超巨星(Red Supergiant)」のお話です。
冬の夜空、オリオン座の左肩で赤く輝く「ベテルギウス」。 彼こそが、この赤色超巨星の代表格であり、今まさに「死の淵」に立っている星なのです。

桁外れの「デカさ」
以前、太陽が老いると「赤色巨星」になるとお話ししましたね。 今日ご紹介する「赤色超巨星」は、名前は似ていますが、そのスケールは全く別物です。
赤色超巨星の若かりし頃の姿は、あの太く短く生きる「青色巨星」です。 ただでさえ巨大だった青い星が、燃え尽きる寸前にさらに膨れ上がった姿。それが赤色超巨星です。
初期の段階(青色主系列星)は高温・高光度ですが、赤色超巨星になると表面は冷えて赤く見えます。
その大きさは、もし太陽の位置に置いたとしたら、地球はおろか、木星の軌道まで飲み込んでしまうほど巨大です。 太陽を「ピンポン玉」だとしたら、赤色超巨星は「東京ドーム」くらいの大きさがあると思ってください。想像を絶するサイズですよね。


オリオン座の異変「ベテルギウス」
私たちのすぐ近く(約640光年先)に、最も有名な赤色超巨星がいます。オリオン座のベテルギウスです。 実はこの星、ここ数年、天文学者たちをざわつかせています。
2019年から2020年にかけて、ベテルギウスの明るさが急激に落ちる「大減光」という現象が起きました。 「いよいよ爆発するのか?」「もう死んでいるのか?」と世界中でニュースになりました。(結果的には、星が吐き出した塵が邪魔をして暗く見えただけだと判明しましたが、彼が不安定な状態であることに変わりはありません)
鉄(アイアン)の呪い
なぜ、彼らはそこまで不安定なのでしょうか? それは、体の中で「作ってはいけないもの」を作ろうとしているからです。
星は、水素を燃やしてヘリウムにし、炭素にし……と、どんどん重い元素を作ってエネルギーを生み出します。 しかし、最後に「鉄(てつ)」を作ってしまった瞬間、その星の運命は決まります。
鉄は燃やしてもエネルギーになりません。 中心に鉄が溜まると、星は自らの超巨大な体重を支えるエネルギーを出せなくなり、一気に崩壊を始めます。 それが、次回お話しする「超新星爆発」の引き金となるのです。
嵐の前の静けさ
ベテルギウスは、いつ爆発してもおかしくないと言われています。 「明日かもしれないし、10万年後かもしれない」。 天文学の「すぐ」は人間の時間感覚とは違いますが、宇宙の歴史から見れば、導火線に火がついたダイナマイトのような状態です。
もし彼が爆発したら、地球からは満月と同じくらいの明るさで昼間でも見えるようになり、数ヶ月間は夜空に「2つの月」が輝くことになるでしょう。
自らの重さに耐えきれず、不安定に脈動しながら、最後の時を待つ赤色超巨星。 その姿は、恐ろしくもあり、また痛々しくもあります。
今年の冬、オリオン座を見上げたら、その赤い輝きを目に焼き付けておいてください。 それは、私たちが生きている間には二度と見られない、「嵐の前の最後の灯火」かもしれないのですから。
参考文献
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