LIGOとVIRGOが連携プレーで突き止めた「宇宙の錬金術工場」GW170817

2017年8月17日。世界の天文学者がひっくり返るような大事件が起きました。 観測史上初めて、「ブラックホールではないもの」同士の衝突が観測されたのです。

それは「中性子星」。 太陽くらいの重さなのに、大きさは山手線くらいしかない、超高密度の星の死骸です。

この衝突は、ただ重力波が出ただけではありませんでした。 キラキラと輝く「光」を撒き散らし、そして宇宙に大量の「金(ゴールド)」をばら撒いたのです。 今日は、LIGOとVIRGOが見事な連携プレーで「宝の山」を見つけ出した、伝説の1日の話をしましょう。

Image Credits: Illustration: CXC/M. Weiss; X-ray: NASA/CXC/Trinity University/D. Pooley et al.

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VIRGOの「沈黙」が道を拓く

あの日、アメリカのLIGO(2台)は、大きな重力波をハッキリと捉えました。 しかし、ヨーロッパのVIRGO(1台)のデータは、ごく微弱で、ほとんどノイズに埋もれていました

「VIRGOは役に立たなかったのか?」 いいえ、逆です。これが最大のヒントになりました。

重力波望遠鏡には「死角」があります。 「LIGOには大音量で聞こえたのに、VIRGOにはほとんど聞こえなかった」 これはつまり、「VIRGOの死角の方角から波が来た」という強力な証拠になります。

この「消去法」のおかげで、発生源のエリアは、LIGOだけの場合(濃い緑の帯)に比べて、数百分の一(薄い緑の豆粒のような範囲)にまで絞り込まれました。 「聞こえない」という情報が、場所を特定する鍵になったのです。


全地球・捜索キャンペーン

場所が絞り込まれた瞬間、世界中に緊急アラートが飛びました。 「うみへび座の方角に 全員、望遠鏡を向けろ!」

NASAの宇宙望遠鏡フェルミ、X線望遠鏡チャンドラ、そしてハワイのすばる望遠鏡。 地上と宇宙にある70以上の望遠鏡が一斉にその一点を見つめました。

そして、重力波の到着から約11時間後。 チリにある望遠鏡が、普段は暗い銀河(NGC 4993)の端っこに、ポツンと新しく輝く「点」を発見しました。 「見つけた!」 それは、人類が初めて「重力波の発生源」を「光(目)」で捉えた瞬間でした。


宇宙の錬金術

その輝く点は、ただの爆発ではありませんでした。 「キロノバ」と呼ばれる現象です。

中性子星の中身は、その名の通り「中性子の塊」です。 それらが光速に近い速度で衝突し、破片が飛び散ると、猛烈な勢いで核反応(Rプロセス)が起きます。 鉄よりも重い元素が、一瞬にして大量生産されるのです。

その光の成分(スペクトル)を分析した結果、そこには「金(Au)」や「プラチナ(Pt)」、そしてレアアースの特徴がはっきりと刻まれていました。 その量は、地球上の金の総量をはるかに上回る規模でした。。

私たちが持っているジュエリーや、スマートフォンの基板に使われている金。 それらは地球で生まれたものではなく、遥か昔、こうした中性子星の衝突によって作られ、宇宙を漂って地球のもとになったのです。 この日、人類はついに「宇宙の金鉱脈」を見つけました。


アインシュタイン、最後のテスト

このイベントには、もう一つのおまけがありました。 重力波が届いた「1.7秒後」に、ガンマ線(光)が届いたのです。

1.3億光年(=1.3億年)も旅をしてきて、到着のズレがたったの1.7秒。 これは、「重力波の速さは、光の速さとピッタリ同じである」という証明になりました。 (※ズレた理由は、重力波が星の芯から即座に出たのに対し、光は爆発のガスを抜けるのに少し時間がかかったからだと考えられています)

100年前にアインシュタインが書いた式の通りでした。 天才の予言は、最後の最後まで正しかったのです。


4台目が必要な理由

GW170817は、たまたま「VIRGOの死角」だったから上手くいきました。 しかし、もし「全員の死角」から来ていたら? もしVIRGOがメンテナンス中だったら? この大発見は逃していたかもしれません。

だからこそ、4台目のKAGRAが必要なのです。 日本にKAGRAがいれば、死角は消えます。 次に宇宙で「錬金術」が起きたとき、私たちはもっと早く、もっと正確にその場所を見つけ出し、金の生成プロセスをリアルタイムで見ることができるでしょう。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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