【星の図鑑】暗闇の中の産声。分厚い繭(まゆ)に包まれた「原始星」の孤独と熱狂

protostar
目次

静寂が破られるとき

前回、星のふるさとである『星間分子雲』の話をしました。マイナス260度の、凍てつくような静かな世界です。

しかし、その静寂はある日突然破られます。ガスの濃い場所が、自分自身の重さに耐えきれずに崩れ落ちるのです(重力崩壊)。 そこから始まるのは、想像を絶する『回転』と『熱』のドラマです。

原始星(Protostar)の誕生

ガスが渦を巻いて中心に集まり始めると、そこは急激に熱くなります。こうしてできた熱いガスの塊が『原始星』です。

熱いといっても、まだ自ら輝くエネルギー(核融合反応)は生み出していません。 落ちてくるガスの勢いと摩擦熱だけで光っている、いわば『着火する前の種火』のような状態です。

姿は見えない「繭(まゆ)」の中

この段階の星を望遠鏡で見ようとしても、光の姿は見えません。なぜなら、材料となった濃いガスや塵が『繭(まゆ)』のように周りを分厚く覆ってしまっているからです。

この繭の中で、赤ちゃん星は必死に周りのガスを吸い込み(降着)、どんどん太っていきます。人間でいうと、お母さんのお腹の中で栄養をもらっている状態に近いかもしれません。

宇宙への産声「双極ジェット」

herbig-haro jet

静かに育っているわけではありません。原始星は、回転しながら猛烈な勢いでガスを吸い込むため、飲み込みきれなかったガスを上下(北極と南極の方向)に勢いよく噴き出します。

これを『双極ジェット』と呼びます。そのスピードは秒速数百キロ。 このジェットが周りの星雲に衝突して輝く様子(ハービッグ・ハロー天体)は、まるで星が『ここにいるぞ!』と産声を上げているかのようです。

(※ここでハービッグ・ハロー天体や、原始星からジェットが出ている想像図の画像を貼ると、とても分かりやすくなります)

そして「一人前」へ

やがて、激しいジェットと星からの風で、周りの繭(ガス)が吹き飛ばされます。 すると、隠されていた星の姿が初めて宇宙に現れます。これを『Tタウリ型星』と呼びます。人間で言えば、やんちゃな反抗期(思春期)の始まりです。

私たちの太陽もこうだった

太陽

46億年前、私たちの太陽もこうして暗闇の中でジェットを噴き出しながら生まれました。 今夜、穏やかに輝く星を見上げるとき、明日太陽を見上げるとき、その輝きの裏にはこんな激しい誕生のドラマがあったことを思い出してみてください。

繭を破って姿を現した星たちは、その体の大きさ(体重)によって全く違う人生を歩み始めます。 次回は、宇宙で一番多い庶民派の星、【星の図鑑・第3章:赤色矮星】のお話です。

Image Credit: NASA, ESA

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とコーヒーが好き。飯もちゃんと好き。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次