原始星とは?|ガスの雲が星になるまでの「誕生のしくみ」

夜空に輝く星は、最初から「星」だったわけではありません。

もともとは宇宙空間を漂う、冷たいガスの雲でした。それがある日、重力によって縮み始め、長い時間をかけてゆっくりと星へと変わっていきます。

「原始星」とは、その途中にある天体のことです。まだ一人前の星ではないけれど、すでに星へと向かって変わり始めている。そんな「誕生の途中」にある天体が、原始星です。

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Image Credit: NASA, ESA, and Z. Levay (STScI/AURA)

目次

ガスの雲が崩れるとき

星が生まれる場所は、宇宙空間に広がる「星間分子雲」と呼ばれる冷たいガスの雲の中です。

この雲は、マイナス260℃前後という極低温で、ほとんど動かずに漂っています。ところが、ガスが特に密集した部分が生まれると、その部分は自分自身の重さ(重力)に引かれて内側へ向かって収縮を始めます。

ガスが集まるにつれて、中心部はどんどん圧縮されていきます。圧縮されると温度が上がります。最初は−260℃前後だったガス雲も、収縮が進むにつれて中心部の温度が上昇していきます。やがて数千度、数万度へと達し、さらに収縮が続くことで核融合が始まる準備が整います。

こうして生まれた「まだ核融合は起きていないが、重力収縮によって熱を帯びているガスの塊」が原始星です。


原始星の特徴|光るけれど、見えない

原始星は熱を持っているため、光を放ちます。しかし、望遠鏡で「見える」かというと、話は別です。

原始星の周りには、材料となったガスや塵が分厚く取り囲んでいます。この「ガスと塵のベール」が、可視光(私たちが目で見られる光)をほとんど吸収してしまうため、普通の光学望遠鏡では原始星の姿をとらえることができません。

見えるようになるのは、赤外線や電波での観測です。ガスや塵の壁を透過するこれらの波長を使うと、奥に潜む原始星の熱を検出することができます。ハービック・ハロー天体の写真で見えている周辺のガスも、こうした原始星の存在を間接的に示しています。


何がエネルギー源なのか

一人前の恒星主系列星)は、中心部で水素をヘリウムに変える「核融合反応」を起こしてエネルギーを得ています。

では原始星は何で光っているのでしょうか。

原始星の段階では、中心温度はまだ核融合が点火するほどには達していません(核融合には約1000万℃が必要です)。原始星のエネルギー源は「重力収縮」そのものです。外から降り積もってくるガスが重力に引かれて落下し、そのときに生じる運動エネルギーと摩擦が熱となって放出されます。エネルギー源は「燃やす」のではなく「落ちることで生まれる」という点が、恒星とは根本的に違います。


降着円盤と双極ジェット

原始星の周りには、ガスがランダムに降り積もるわけではありません。もともと分子雲はごくわずかに自転しているため、収縮するにつれて回転が速くなります。その結果、ガスは原始星の周りに回転する「降着円盤」と呼ばれる平らな円盤を形成します。

この降着円盤から原始星へとガスが降り注ぐのと同時に、原始星は上下方向(円盤の面に対して垂直な方向)にガスを高速で噴き出します。これを「双極ジェット」と呼びます。

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Image Credit: NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)/Hubble-Europe (ESA) Collaboration, D. Padgett (GSFC), T. Megeath (University of Toledo), and B. Reipurth (University of Hawaii)

双極ジェットが生まれる詳しい仕組みはまだ研究の途中ですが、降着円盤と磁場が組み合わさることで、磁場によって加速されたガスが、回転軸方向へ高速で噴き出していると考えられています。この噴き出したガスが周囲の雲に衝突して光る現象が、ハービック・ハロー天体です。


原始星の次の段階|Tタウリ型星と主系列星

原始星から恒星への道は、段階を踏んで進みます。

原始星が成長を続け、周囲のガスを取り込む一方で双極ジェットによってガスを吹き飛ばしていくと、次第に周りを覆っていたベールが薄くなっていきます。ベールが薄くなった段階の星を「Tタウリ型星」と呼びます。まだ太陽のような水素核融合は本格的に始まっておらず、表面活動が非常に活発な時期です。

そこからさらに収縮が続き、中心温度がおよそ1000万℃に達したとき、ついに水素の核融合が始まります。この瞬間が、一人前の恒星=主系列星の誕生です。重力による収縮が止まり、重力と核融合の圧力がつり合う「静水圧平衡」の状態に落ち着きます。

原始星から主系列星になるまでの時間は、星の質量によっても変わりますが、太陽程度の質量の星では数千万年ほどかかると考えられています。


今夜の夜空と原始星

冬の南の空に見えるオリオン座の三ツ星の下あたりに、ぼんやりとした光の染みがあります。これがオリオン大星雲(M42)です。

肉眼でも見えるこの星雲の中では、今も数百個の原始星が生まれている最中と考えられています。可視光では見えませんが、赤外線で観測すると、ガスの雲の奥に熱を帯びた原始星の存在が浮かび上がります。

私たちの太陽も、46億年前には同じ原始星の段階を通ってきました。今夜、あの淡い星雲のあたりに目を向けるとき、そこでは今まさに、次の恒星が誕生しつつあります。


参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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