以前、暗黒の雲の中で産声をあげたばかりの「原始星(星の赤ちゃん)」について紹介しました。激しくガスを取り込み、輝き出そうとするあの荒々しい姿、覚えていらっしゃいますか?

実は、あの時生まれた赤ちゃんたちが、すべて太陽のような大きな星になれるわけではありません。 多くの星は、十分なガスを集めきれず、「小柄な体」のまま一生を過ごす道を選びます。
今日ご紹介するのは、そんな「小さく生まれたけれど、宇宙で一番長生きな星」、赤色矮星のお話です。
宇宙のサイレント・マジョリティ「赤色矮星」

まず驚くべき事実をお伝えします。 私たちが住むこの天の川銀河において、星々の約75%はこの「赤色矮星」だと言われています。
太陽のような明るい星は、実は少数派。宇宙の人口の大多数は、太陽の半分以下の大きさしかない、この小さな赤い星たちなのです。彼らは非常に暗いため、地球から一番近い恒星である「プロキシマ・ケンタウリ」でさえ、肉眼で見ることはできません。
数兆年生きる理由|赤色矮星の秘密エンジン
なぜ彼らはそんなに小さいのに、特別なのでしょうか? それは「燃費の良さ」と「循環システム」にあります。
太陽のような星は、中心核だけで燃料(水素)を燃やしますが、赤色矮星の多くは、星全体がかき混ぜられる「完全対流」(星の内部がスープのように常にかき混ぜられている状態)という構造を持っています。これにより、星にある燃料を余すことなく使い切ることができるのです。
その寿命は、なんと数兆年。 宇宙の現在の年齢(約138億年)なんて、彼らにとってはほんの「瞬き」のようなもの。太陽が燃え尽き、他のすべての星が消え去った遥か未来の宇宙で、最後にポツンと灯っているのは、間違いなくこの赤色矮星たちでしょう。
小さな体に秘めた「激しい癇癪(かんしゃく)」
「長生きで大人しい星」と思いきや、実は若い頃の赤色矮星はとても気性が荒いことでも知られています。
彼らは強力な磁場を持っており、頻繁に「スーパーフレア」と呼ばれる爆発を起こします。 私たちの隣人「プロキシマ・ケンタウリ」も、時折、太陽のフレアを遥かに超える強力なX線を放出し、周囲の惑星の大気に深刻な影響を与える可能性があります。
小さくても決して侮れない、情熱的な一面を持っているのですね。
永遠の昼と夜の世界
もし、赤色矮星の周りを回る惑星に住んだら、どんな景色が見えるでしょうか?
赤色矮星は温度が低いため、暖かさを得るには星のすぐそばを回らなければなりません。あまりに近すぎるため、惑星は「潮汐ロック(ちょうせきロック)」という現象により、常に同じ面を星に向けることになります。
- オモテ面: 永遠に沈まない赤い太陽が照りつける、灼熱の世界。
- ウラ面: 永遠に太陽が昇らない、極寒の氷の世界。
生命が住めるとすれば、その境界線である「夕暮れエリア」かもしれません。そこでは、永遠に続く夕焼けの中で、赤い風が吹いていることでしょう。深夜の星空喫茶は、裏面で営業をさせていただきます。24時間営業になってしまいますね。
Image Credit:NASA
参考文献

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