かんむり座T星の爆発とは?|80年に一度だけ現れる「新しい星」の正体

春から夏の夜空を見上げると、星々が小さな半円を描く「かんむり座」という美しい星座があります。その飾りのひとつに「かんむり座T星」という星が隠れています。

普段はとても暗く、肉眼では絶対に見つけることができない星です。しかし、この星は約80年に一度だけ、北極星と同じくらいの明るさ(2等級前後)で突如として夜空に輝き出します。まるで、真っ暗な空間に新しい星がポンと生まれたように見えるのです。

昔の人々は、何もない場所に突然現れる星を見て「新星」と呼びました。しかし、本当に星が新しく生まれたのでしょうか。

かんむり座の図解
Image Credit: NASA
目次

なぜ星は突然明るくなるのか?

宇宙の時間は、地球の感覚からすると途方もなくゆっくり流れています。星が誕生するには何百万年という時間がかかりますし、一晩でいきなり大人の星ができあがることはありません。

それなのに、昨日まで見えなかった星が突然ピカッと光り出す。これは、とても奇妙な出来事です。

実は、かんむり座T星で起きているのは「星の誕生」ではなく、ある激しい「爆発」なのです。では、暗く静かなはずの星が、なぜ突然大爆発を起こすのでしょうか。その理由は、この星が抱える少し特殊な環境にありました。

ふたつの星の危険なダンス

かんむり座T星を望遠鏡でさらに拡大してみると、ひとつの星ではなく、ふたつの星がペアになってお互いの周りをぐるぐると回っていることがわかります。

ひとつは「赤色巨星」。これは、年老いて大きく膨らんだ、ガスを放出しやすい星のことです。 もうひとつは「白色矮星」。こちらは、星が寿命を終え、小さく高密度に縮んだ姿のことです。

このふたつの星は、距離がとても近いまま回り続けています。すると、重力の強い小さな白色矮星が、大きな赤色巨星からガスを重力で吸い取ってしまうのです。赤い星からはがれ落ちたガスは、白い星の周りに渦を巻きながら降り積もっていきます。

限界を超えたガスの大爆発

白色矮星の表面にガスが積もり続けると、どうなるでしょうか。

どんどんガスが押し付けられることで、表面の温度と圧力が異常なほど高くなっていきます。これは、火にかけた圧力鍋の中に、どんどん蒸気が溜まり続けているような状態です。

そして、ついに耐えきれなくなった瞬間。表面に積もったガスに火がつき、一気に激しく燃え上がります。これが「新星爆発」です。星の表面に積もったガスが限界を迎え、一気に燃え上がる現象を指します。

注意したいのは、星そのものが粉々に吹き飛ぶわけではないということです。爆発するのはあくまで「表面に積もったガス」だけ。だから、爆発が終わると再び静けさを取り戻し、また隣の星からガスを吸い取り始めます。

圧力鍋のフタがポンと飛んで圧力が抜けたら、また少しずつ水蒸気を溜め直すのと同じです。かんむり座T星は、このガスの蓄積と爆発を、約80年というサイクルで何度も繰り返しているのです。

かんむり座T星の見つけ方

かんむり座は北天の小さな星座で、北半球の春〜夏に見える半円形、Cの形の星の並びが特徴的です。この星座はこと座のベガやうしかい座アークトゥルスを目印にすると見つけやすいです。

一番明るい星はアルフェッカというもので、これを星座の中の目印にするのがよいです。アルフェッカから南東へ6度離れた位置にあります。ただし、T星本体は普段とても暗いので、双眼鏡や星図アプリがあると探しやすいです。

今夜、かんむり座を探してみよう

80年かけてガスをじっくり溜め込み、ある日突然、一瞬の輝きを夜空に放つ。それが、かんむり座T星が持つ「80年に一度の爆発」の仕組みです。

前回の爆発は1946年のことでした。つまり、次に圧力鍋のフタが飛ぶのは「今、この瞬間」かもしれないのです。現在、世界中の天文学者が「その時」を見逃すまいと、毎晩のようにかんむり座を観測しています。

もし今夜晴れていたら、少しだけ空を見上げてみてください。あの静かな暗闇の奥深くでは、小さな星が次なる大爆発に向けて、ギリギリまでガスを集め続けているのです。いつか輝くその日のために。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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