夜空を見上げると、条件が良い場所では「天の川」という淡い光の帯が見えます。古くから川や川のしずくに例えられてきたこの光の正体は、無数の星々の集まりです。

特に夏の夜空、南の低い空にある「いて座」の方向を見つめると、天の川はひときわ明るく、幅広く見えます。実は、私たちがその方向を見ているとき、私たちは単なる星空ではなく、天の川銀河の「中心」を見つめているのです。

天の川銀河の中心には何があるのか?
天の川銀河とは、私たちの住む太陽系を含め、数千億個もの星が集まった巨大な円盤状の集団です。 では、その星々が最も密集している中心には、一体何があるのでしょうか。とてつもなく大きくて明るい星があるのでしょうか。
実は長年、中心に何があるのかは謎に包まれていました。中心付近には星だけでなく、宇宙のチリやガスが分厚い雲のように密集しており、地球からの視界を完全に遮ってしまっているからです。私たちが人間の目で直接、銀河のど真ん中を見ることはできません。

銀河の中心に潜む「超大質量ブラックホール」
視界を遮るチリを通り抜ける「電波」や「赤外線」を使った特殊な望遠鏡で観測することで、ようやくその答えがわかりました。結論から言うと、天の川銀河のど真ん中には、極めて重力の強い天体が潜んでいます。

天の川銀河の中心には、いて座A(Sagittarius A)と呼ばれる超大質量ブラックホールがあります。
暗闇に潜むブラックホールそのものを見ることはできません。しかし、望遠鏡で中心の様子を何年にもわたって観察すると、見えない「何か」のすぐ近くにある星々が、猛スピードで振り回されていることがわかりました。その異常な動きこそが、そこに太陽の約400万倍もの重さが一点に集中しているという確たる証拠なのです。

太陽系は銀河の中心を回っている
この仕組みを身近なものに例えるなら、巨大な「メリーゴーランド」を想像してみてください。
天の川銀河全体が、ゆっくりと回る巨大な円盤です。太陽系も、その円盤の中心から少し外れた場所に乗って、一緒に回っています。 そして、その回転を支える中心の太くて頑丈な「軸」の根元にあるのが、超大質量ブラックホールです。ただし、銀河全体の回転を支えている重力の大部分は、数千億の星や暗黒物質によるものです。
太陽系がブラックホールの重力”だけ”で回っているわけではありませんが、中心にある巨大な重力が「銀河の底」として働き、数千億の星々が一つのまとまりとして回転し続けるための構造を作り出しています。
今夜、いて座の方向を見上げてみる
私たちは普段、地球の自転や、太陽の周りを回る公転を肌で感じることはありません。 しかし、私たちの太陽系そのものも、秒速約200キロメートルという猛スピードで、天の川銀河の中心を軸にして宇宙空間を回り続けています。一周するのにかかる時間は、なんと約2億年という途方もないスケールです。
次に星空を見上げる夜、もし南の空に天の川やいて座を見つけたら、ただの淡い光の帯ではなく、そのずっと奥底にある巨大な重力の存在を想像してみてください。 あの光の向こう側では、数千億の星々を従える巨大なブラックホールが、今この瞬間も静かに回っているのです。
参考文献
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