夜空をじっと見上げていると、オリオン座や北斗七星といった「星座」を作る星々は、いつも同じ並び方をしています。しかし、その整然とした星空の中を、我が物顔でウロウロと移動する星がいくつかあることにお気づきでしょうか。
それが「惑星」です。

なぜ惑星だけが、あっちへ行ったりこっちへ来たりするのか。それは、私たちが「地球」という動く乗り物に乗って、別の動く乗り物(惑星)を眺めているからです。
ニュースなどで「木星が『衝(しょう)』を迎えました」や「金星が『最大離角(さいだいりかく)』です」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。漢字が並ぶとなんだか難しそうですが、実はこれ、宇宙空間の中で「今、地球とあの星はどの位置にいるか」を表す、とてもシンプルな目印なのです。
内側と外側で違う、惑星たちのルール

地球は、太陽の周りを回る3番目の惑星です。 そのため、地球から他の惑星を見ると、「地球より内側を走っている星(水星・金星)」と、「地球より外側を走っている星(火星・木星・土星など)」の2つのグループに分かれます。
この「内側のコース」か「外側のコース」かによって、地球からの見え方にまったく違うルールが生まれます。ここで登場するのが、先ほどの3つの言葉です。
「衝(しょう)」とは?|外惑星がもっとも明るく見える瞬間

まずは「衝(しょう)」です。これは、外側のコースを走る惑星にだけ使われる言葉です。 衝とは、「太陽・地球・外惑星が一直線に並ぶこと」です。
運動会のトラック競技を想像してみてください。内側のコースを走るあなた(地球)が、外側のコースを走る人(木星など)に一番近づいて、ちょうど真横に並んで追い抜く瞬間。それが「衝」です。
この時、地球から見ると、惑星は太陽のちょうど真反対にあります。太陽の光を真正面から浴び、さらに距離も一番近いため、一年で最も明るく、大きく見える最高の観測チャンスとなります。
「合(ごう)」とは?|惑星が太陽の方向に重なる状態

一方で、まったく観測に向かないのが「合(ごう)」です。 合とは、「地球から見て、惑星が太陽と同じ方向にあること」を指します。
トラックの向こう側にいる人を想像してください。真ん中には巨大で眩しいキャンプファイヤー(太陽)が燃えていて、その向こう側に相手がいる状態です。
どれだけ大きな木星であっても、強烈な太陽の光にかき消されてしまうため、地球からはまったく見えなくなってしまいます。
「最大離角」とは?|金星や水星が見つけやすくなる位置

最後に「最大離角」です。これは、地球より内側のコースを走る水星や金星にだけ使われます。
内側のコースを走っている星は、地球から見ると常に「太陽の周りをウロウロしている」ように見えます。決して太陽の真反対(衝)に来ることはありません。
最大離角とは、「内惑星が太陽から最も離れて見える瞬間のこと」です。
太陽より西側に離れて見える「西方最大離角」の頃には明け方の空で、東側に離れて見える「東方最大離角」の頃には夕方の空で見つけやすくなります。
夜空と足元の地球が繋がる瞬間
「衝」「合」「最大離角」。 漢字で書かれると専門的で難しい現象に思えますが、その正体は「地球と太陽と惑星が、広大な宇宙のトラックでどう並んでいるか」という、ただの位置関係の説明でした。
今夜、もし深夜の空のてっぺんに、ひときわ明るく輝く星を見つけたら。 それはきっと、外側を走る惑星が「衝」の近くにいる証拠です。「今、自分の背中側に太陽があって、正面にあの星があるんだな」と、宇宙空間の一直線を想像できるはずです。
少し難しかったかもしれませんが、仕組みを知ったあとの夜空は、昨日までとは少し違って見えませんか。私たちが暮らす地球もまた、太陽の周りを回る「動く宇宙船」なのだと、実感できる夜になるはずです。

参考文献
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