夜空を見上げると、たくさんの星が輝いています。プラネタリウムや図鑑などで、「あの星までは何光年離れている」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「光年」という言葉の響きから、長い「時間」のことだと想像する人も多いでしょう。しかし、実は光年は「時間」ではなく「距離」を表す言葉なのです。
この記事では、宇宙の広さを測るための特別な物差しである「1光年」の仕組みについて、やさしく紐解いていきます。

1光年ってどれくらいの距離?
私たちが普段使っている「メートル」や「キロメートル」では、宇宙はあまりにも広すぎて、星までの距離を書くとゼロが果てしなく並んでしまいます。そこで、宇宙の距離を測るために、宇宙で一番速い「光」を基準にしました。
1光年とは、光が1年間かかって進む距離のことです。
光の速さ(光速)は、1秒間に約30万kmです。その光が、休むことなく1年間走り続けた距離が1光年です。キロメートルに直すと、約9.46兆キロメートルという想像を絶する長さになります。
なぜ宇宙では「光年」を使うの?新幹線との比較
9兆5000億キロメートルと言われても、大きすぎてあまりピンときませんよね。私たちの身近な乗り物で想像してみましょう。
たとえば、時速300キロメートルで走る新幹線に乗って、1光年先の星を目指したとします。仮に新幹線が宇宙空間を休まず直進できたとしても、月まで約1日半かかります。
答えは、なんと「約360万年」です。光ならたった1年でたどり着く距離でも、人類の乗り物では気が遠くなるほどの時間がかかってしまうのです。それだけ宇宙は広く、光は圧倒的に速いということがわかります。
天文単位との違い
宇宙には「光年」以外にも、もうひとつ有名な距離の物差しがあります。それが「天文単位」です。
1天文単位は、地球から太陽までの距離(約1億5000万キロメートル)のこと。私たちが住む太陽系の中の距離を測るときは、この天文単位を使うととても便利です。たとえば「木星までは約5天文単位だ」と言えば、「地球と太陽の距離の5倍くらい遠いんだな」とすぐに想像できます。
しかし、太陽系を一歩外に出ると、この天文単位でもまったく歯が立ちません。たとえば、太陽の次に地球に近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」でも、約27万天文単位も離れています。
つまり、太陽系という「ご近所」を測るのが天文単位、その外に広がる「星々の世界」を測るのが光年という使い分けがされているのです。光年という単位が必要なほど、星と星の間は絶望的なまでに離れているということがわかります。

どうやって星までの距離を測るの?
あんなに遠い星までの距離を、天文学者たちはどうやって測っているのでしょうか。もちろん、宇宙空間に巻尺を伸ばすわけにはいきません。
実は、私たちが普段から無意識に使っている「ある仕組み」を応用しています。目の前に人差し指を立てて、右目と左目で交互に見てみてください。指の位置が背景に対して左右にズレて見えますよね。指が目に近いほどズレは大きく、遠いほどズレは小さくなります。これを「視差」と呼びます。
天文学者は、この両目の代わりに「地球」を使います。地球は1年かけて太陽の周りを回っているため、半年たつと太陽を挟んで正反対の場所に移動します。この「半年前と今の地球」を右目と左目のように使い、星が見える位置のズレを測るのです。この星のズレのことを「年周視差」と呼びます。
このズレの角度がわかれば、星までの距離を計算することができるという仕組みです。
ただし、遠すぎる星ではズレが極端に小さくなるため、さらに遠方の天体には別の測定方法が使われます。
光年を見る=過去を見る
距離の単位である「光年」ですが、この言葉の仕組みを知ると、もうひとつ面白いことがわかります。
光が遠くの星から地球に届くまでには、時間がかかります。つまり、私たちが今見ている星の光は、何年も前にその星を出発した「過去の光」なのです。
たとえば、冬の夜空でひときわ明るく輝く「シリウス」という星は、地球から約8.6光年離れています。今夜あなたが見ているシリウスの光は、今から約8年半前に星を出発した光です。もし、1000光年離れた星を見ているなら、それは1000年前の平安時代の頃に放たれた光を見ていることになります。
まとめ
「1光年」は、ただ距離が遠いことを示すだけの言葉ではありません。それは、宇宙の途方もない広大さと、私たちが星の「過去の姿」を見ているという事実を教えてくれる言葉です。
今夜、窓を開けて星を眺めてみてください。あの星の光は、あなたが生まれた頃に出発した光かもしれませんし、はるか昔の歴史上の人物と同じ光かもしれません。宇宙の距離の仕組みを知るだけで、いつもの夜空が少しだけ不思議なタイムマシンのように見えてきませんか。


参考文献
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