夜空を見上げると、金星や木星など、地球と同じように太陽の周りを回る惑星たちが力強く輝いています。望遠鏡を使えば、土星の環などを見ることもできるでしょう。

では、その惑星たちのずっと向こう、太陽系の果てと呼ばれる場所はどうなっているのでしょうか? 地球から遠く離れた海王星を通り過ぎた先には、ただ暗くて何もない宇宙空間が無限に広がっているだけだと思いますか?
実は、私たちの太陽系の境界付近には、無数の天体がドーナツ状に集まった巨大な地帯が存在しています。見えないけれど確かにそこにある、太陽系を包み込む「氷のリング」。それが「カイパーベルト」です。
カイパーベルトはどこにある?|太陽から30〜50天文単位の外縁領域

カイパーベルトとは、海王星軌道(約30天文単位)の外側から、およそ50天文単位付近まで広がる氷天体の密集領域です。
そこは、地球から果てしなく遠い場所です。太陽の光は地球に届くまでに約8分かかりますが、カイパーベルトまでは光の速さでも4時間以上かかります。そのため、太陽の熱はほとんど届かず、温度はマイナス200度を下回る極寒の世界です。
そこにあるのは、地球のような岩の塊ではなく、水・メタン・アンモニアなどの氷と岩石が混ざった数十キロから数百キロサイズの「氷の塊」です。そんな氷の天体が、無数に漂っているのです。
かつて惑星の仲間だった「冥王星」も、実はこのカイパーベルトに属する天体のひとつです。軌道周囲の小天体を重力で排除していないため「準惑星」に分類される星が、この薄暗い領域で見つかっています。

冥王星もカイパーベルト天体|準惑星が見つかる理由
カイパーベルトの存在を、身近なスケールに置き換えて想像してみましょう。
太陽を、真っ暗な森の中で燃える「キャンプファイヤー」だとします。 地球や火星は、火のすぐそばで暖をとっている特等席です。光も十分に届き、水も液体のまま存在できます。
一方、カイパーベルトは、火の温もりが全く届かない「真っ暗な森の入り口」です。そこには、火の粉から逃れた冷たい小石(氷の塊)が、キャンプファイヤーを遠くから囲むように、ぐるりと円を描いて散らばっているのです。
彼らは、太陽系が生まれた46億年前の「残りかす」だと言われています。太陽に焼かれることなく、太陽系ができたばかりの初期の姿をそのまま凍らせたタイムカプセルのような存在なのです。

彗星のふるさと|カイパーベルトから太陽系内へ
このカイパーベルトの氷の天体たちは、ずっと遠くの暗闇に留まっているだけではありません。
時折、天体同士の重力の引っ張り合いなどの影響で軌道が変わり、太陽に向かって落ちてくることがあります。極寒の地から太陽に近づくにつれて、表面の氷が溶けてガスやチリとなり、宇宙空間に長い尾を引くようになります。これが「彗星(ほうき星)」です。
私たちが夜空で時折目撃する美しい彗星の一部は、この遠く離れた暗くて冷たい氷のリングから、長い長い旅をしてやってきた使者なのです。
カイパーベルトが教えてくれる太陽系の誕生
カイパーベルトはあまりにも遠く、そして暗いため、私たちの肉眼でその姿を見ることはできません。
しかし、次に夜空の惑星を眺めるとき、あるいは彗星のニュースを耳にしたとき、目に見える星々のずっと奥にある景色に思いを馳せてみてください。
そこには、何もない虚無が広がる前に、私たちの太陽系を優しく包み込む無数の「氷のリング」が確かに存在しています。見えない構造の存在を知ることで、あなたが今夜見上げる夜空の奥行きは、ぐっと深くなるはずです。
参考文献
- NASA|The Kuiper Belt
- NASA|Kuiper Belt: In Depth
- NASA|10 Things to Know About the Kuiper Belt
- ESA|Kuiper Belt and Oort Cloud in Context
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