夜空にはたくさんの星があり、それらを結んで想像する星座も多くの種類があります。そのなかでも一般に広く知られているのは、星占いの12星座ではないでしょうか。そんな12星座のうち、ふたご座について解説していきます。

神話:命を分け合った双子
ふたご座のモデルは、ギリシャ神話に登場する双子の兄弟、カストルとポルックスです。 二人は同じ母から生まれましたが、父親は違いました。 弟のポルックスは大神ゼウスの子で「不死」、兄のカストルは人間の子で「定命」だったのです。
二人はいつも一緒に行動し、戦場でも肩を並べる仲でしたが、ある戦いで兄のカストルが命を落とします。 不死の身であるポルックスは、兄のいない世界で一人だけ生き続けることに耐えられず、ゼウスに「自分の不死を半分、兄に分けてほしい」と願いました。
その願いは認められ、二人は1年の半分を天上で、もう半分を冥界で過ごす存在になったといいます。 夜空に二つの星が並んで輝いているのは、死してもなお離れなかった兄弟の姿だと伝えられています。
星空との対応:カストルとポルックス、色の違う双子星
ふたご座の目印は、ほぼ同じ明るさで並ぶ二つの星、カストルとポルックスです。
- ポルックス(弟):オレンジ色・1等星
- カストル(兄):白色・2等星
実際の明るさで言うと、わずかにポルックスの方が明るいのですが、星に名前を付ける際、天文学者はカストルを「α星」としました。 神話の中で兄を立てた弟ポルックスの姿が、星の並び方にもどこか重なって見えます。星座のα星は必ずしも最も明るい星とは限らず、歴史的な事情で決められている場合もあります。
この色の違いは、星の表面温度の違いを表しています。 オレンジ色のポルックスは温度が低めの巨星、白色のカストルはより高温で燃える星です。 星の色を見るだけで、その星のおおよその温度がわかるのです。
星の科学:カストルは「6人家族」
兄カストルには、神話以上に驚くべき秘密が隠されています。
肉眼では一つの白い星にしか見えませんが、望遠鏡で見ると二つの星に分かれます。 重力で結びつき、互いの周りを回り合う「連星」です。
さらに分光観測で詳しく調べると、この二つの星は、それぞれがさらに二つの星のペアであることがわかりました。 加えて、少し離れた場所をもう一組の連星が周回しています。
つまりカストルは、3組の連星から構成された「六重星系」なのです。肉眼では一つの星に見えるカストルですが、実は6つの恒星だったということになります。
現代との接続:双子からの「贈り物」
ふたご座は、神話の世界だけでなく、現在も観測できる天文現象とも結びついています。 それが、毎年12月中旬に見られる「ふたご座流星群」です。

流星群は、流れ星が飛んでくる起点(放射点)がある星座の名前で呼ばれます。 ふたご座流星群の放射点は、ちょうどカストルの近くにあります。 地球が、小惑星フェートンが残した塵の帯を通過するとき、その塵が大気中で発光することで流星として観測されるのです。
条件が良ければ1時間に100個前後の流星が見られることもあり、毎年安定して観測できる流星群として知られています。 冬にふたご座を見つけたら、その近くから星が流れてくる夜があることを思い出してみてください。
ふたご座を見つけるには、オリオン座の左上あたりを見上げてください。 明るさの似た二つの星が並んでいるのが、カストルとポルックスです。
神話では「2人」の兄弟。 星の科学で見れば「6つ以上」の星の集まり。 そして12月には、流星群の放射点。 一つの星座を、いくつもの視点で見ることができます。

参考文献