かに座の神話とは?|カルキノス伝説とプレセペ星団(M44)の見つけ方

黄道十二星座の中で最も暗い星座のひとつとされる「かに座」。明るい星を一つも持たないこの星座は、夜空ではほとんど目立ちません。しかし、その内側には英雄に踏まれた化け蟹の物語と、肉眼ではぼんやりとしか見えない不思議な天体が隠されています。今夜は、かに座にまつわる神話と、その先にある天文学の話をしていきます。

かに座

目次

かに座の神話|ヘラクレスに踏まれた化け蟹カルキノス

かに座のモデルは、ギリシャ神話に登場する化け蟹「カルキノス」です。

英雄ヘラクレスが、9つの首を持つ怪物ヒドラと戦っていたとき、ヒドラを助けるため、巨大な蟹カルキノスは沼地から這い出し、ヘラクレスの足に挟みつきました。しかし歴戦の英雄にとって、カニのハサミなど取るに足らないものです。ヘラクレスは戦いの最中に足を踏み下ろし、カルキノスは一瞬で姿を消してしまいました。

あっけない最期でしたが、女神ヘラはこれを「自分より遥かに強い相手に立ち向かった勇気」として称え、カルキノスを星座に変えました。手柄の大きさではなく、仲間のために体を張った姿勢が、星座になる理由として選ばれたのです。


かに座はどこにある?|ふたご座としし座の間の暗い星座

冬から春にかけての夜空で、かに座を目印にして見つけるのは簡単ではありません。最も明るい星でも4等星程度しかなく、街明かりの中ではまず確認できないからです。

探し方のコツは、かに座そのものではなく「周りの星座」を使うことです。右側にはふたご座の明るい2つの星、左側にはしし座の1等星レグルスがあります。この2つの目立つ星座の間に、ぽっかりと星のない暗い領域が広がっており、そこがかに座の居場所です。「何もない場所」を見つけることが、かに座を見つける第一歩になります。


プレセペ星団(M44)とは?|蜂の巣と呼ばれる散開星団

かに座の暗い領域の中心あたりを、街灯のない場所で見つめると、ぼんやりと白い「雲のようなもの」が見えてきます。これが、かに座最大の見どころである散開星団「プレセペ星団(M44)」です。

プレセペ星団は、数百個の恒星が重力で緩やかに集まった散開星団で、地球からの距離は約580光年です。望遠鏡を向けると、無数の星が群れをなしている様子がわかり、その姿から英語では「ビーハイブ(Beehive=蜂の巣)」と呼ばれています。

一方、中国では「積尸気(せきしき)」と呼ばれ、死者の魂が集まる場所と考えられていました。積み重なった死体から立ち上る気、つまり死者の魂が天に昇っていく場所だと考えられていたのです。同じ天体が、文化によって「蜂の巣」にも「死者の魂の門」にも見えていたことになります。

さらにプレセペ星団は、古代ギリシャでは「天気予報」としても利用されていました。星団の光は淡く広がっているため、上空に薄い雲が出ると、明るい星より先にいち早く見えなくなります。船乗りたちは「プレセペが見えない」ことを嵐の前触れと判断し、出航の目印にしていたといわれています。

プレセペ星団は肉眼でもぼんやり確認できますが、双眼鏡を向けると一気に数十個以上の星が現れます。古代の人々が「雲」だと思っていた光の正体が、実は無数の恒星の集まりであることを実感できるでしょう。


まとめ

かに座は、一等星を持たない最も暗い星座です。しかし、ふたご座としし座という2つの目立つ星座の間に空いた「空白地帯」をたどれば、その位置はすぐに見つかります。

そして、その暗い領域の中心には、蜂の巣とも死者の魂とも呼ばれてきたプレセペ星団が静かに輝いています。今夜は、夜空の「何もない場所」に目を向けてみてください。そこには、小さな化け蟹と、数百の星が集まる星団が眠っているのですから。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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